ナルユキ さんの感想・評価
2.5
物語 : 1.0
作画 : 2.0
声優 : 3.0
音楽 : 4.0
キャラ : 2.5
状態:途中で断念した
梅田修一朗モノローグ劇場
え、梅田修一朗って誰だって?一応本作の主人公の他に『ゾン100』の主人公や『負けヒロインが多すぎる!』の温水和彦のCVなども務めたらしいけど、僕も全然知らないんですよねハハハ…
ただ彼の一騎当千とも言える活躍ぶりは本作を観れば嫌でも印象に残る。タイトルの通り先ずメインキャラクターは主人公しか登場しない上に台詞も彼にしか無く、第1話はほぼ彼の「一人言」で30分が消費されてしまうのだ。転移してスキルをくれる“神様的なヤツ”にすら会話をしているのにCVをつけないとはどれだけつるセコなアニメなのか……(苦笑)
正直1話切どころか10分程度で切ってしまっても良かったのだが、まあ観てしまったのでこの場を借りて、感想を吐き出したい。
【ココがひどい:チートもらいすぎ主人公】
無駄に転移魔方陣から逃れようとしたことで(確かに棒立ち無抵抗で呑み込まれるのもおかしいっちゃおかしいが)他のクラスメイトより遅れて例の「白い空間」に到着した主人公の遥{はるか}は先着順だったスキルや装備の数々を取られてしまい、残り物のスキルや装備をまとめて手に入れて異世界転移することになる。それらは一見、使い物にならなそうなショボいスキル名であり遥は文句たらたらだったのだが、要所要所で使ってみると全て便利なスキル──所謂チート──だったので結果オーライ。正に「残り物には福がある」を地で行ったような始まりだ。
こう聴くと「残り物のスキルや装備をいかに使いこなして主人公が活躍するのか」という見所がある作品にも思えるがその実、有用なスキルを何個も獲得しどんな事態も「後出し」で対処できる万能型な主人公となってしまっており、今後の展開のつまらなさを予期させる。やることは他の【なろう系】と同じく「チートで無双」だ。
しかも最初に貰ったスキルとは別に異世界でとった「些細な」行動によって簡単にスキルが手に入るようになっており、最早最初のスキルの殆どは1話にして有って無いような物へと早々に成り下がってしまう。残り物という「複数」のスキルが言わば複数の「スキルツリー」となって主人公を急速かつ雑に成長させていくのである。
代表的な『転スラ』はスライムに転生した主人公がその特性を広げに広げて1人のチート主人公となったが、元々はスライムの身体というたった1つのスキルから始まっている。対して本作の主人公は「10個」だ(笑) これは狡いとしか言い様がないし、これだけあって『チートスキルは売り切れだった(原題)』と言い張るつもりだったのが可笑しいと言える。
【ココもひどい:主人公のモノローグ】
タイトルにもしたが、とにかく主人公・遥の黙る気配が無い。その場の状況説明から考えていること、セルフツッコミまで全て彼の台詞が劇中の随所に飛び交うような構成になっており、この作品を観るだけで梅田くんという声優がどんな声質の持ち主なのか暗記できてしまう、そんな「しつこさ」が備わっている。
しかもその台詞回しは痛い。第1話の冒頭の台詞を紹介するとこんな感じだ。
《俺はいつものように本を読んでいた。見ての通りぼっち。誰がどう見てもぼっち。そう、俺は現実世界でもぼっちだったのである──ぼっちぼっち言うな!いや合ってるけどさ! なんで俺がぼっちかって? クラスメイトと関わりたくないからだ!》
どうだろうか(苦笑) 遥がぼっちだということを強調したいのはわかるものの、自分でぼっちぼっち言っておきながらそれをツッコみ、誰も訊いていないのにぼっちな理由をモノローグで説明してくれる。やや気恥ずかしさすら感じる台詞回しは、どこか懐かしいラノベな雰囲気を感じるものの、杉田さんではなく梅田くんが故にどこか「うすら寒さ」をも感じてしまう。
そんな遥は得たスキルを使いまくり個々に経験値を得て発展させていくのだが、スキルの名前だけで偏見を持って散々と扱き下ろした後、その認識が間違ってて『ありがとうございます~』などと掌返しをする様を延々と見せられるため、第1話から観るのがキツい。
先に異世界転移したクラスメイトからこれまでの経緯を聞かされる時も、いちいちどうでもいいツッコミや茶々を入れてくるので「お前少しは黙ってろ」とぶん殴りたくなってしまう。
1話から痛々しいモノローグを含めて説明口調が非常に多く、スキルの説明など、別に要らないようなシーンや台詞も多い。
【ココがつまらない:合宿感覚の異世界生活】
まだまだ書きたいことはあるが、一番の問題はこのクラス転移に「意義らしきものが見当たらない」ことだろう。
主人公の遥は結局、転移から逃れられなかったことがわかれば一転、誰にも邪魔されず誰にも指示されない独りだけの異世界攻略──「ぼっちライフ」──を楽しもうとする。その割には先に飛ばされたクラスメイトたちと接触する機会が多いのだが、ずっと主人公だけで話を回すことも出来ないのでそこはとやかく書かないようにしよう。
ただこの作品は、そもそも「なぜ」クラス単位で異世界召喚されたのかという理由付けがされていない。『このすば』や『即死チート~』のように召喚者に何かしらの意図があれば一番最初に説明するのが筋であり、逆に説明しないのであれば『リゼロ』や『灰と幻想のグリムガル』の様にそもそも召喚者が誰なのか解らないようにし、その謎を追いつつのストーリーにしてもいい。本作はそのどちらでもなく“神様的なヤツ”が言わば1クラスを拉致ってスキルを与え「後は異世界で勝手に生きろ」と放り投げるというはた迷惑なことをしているだけだ。
放り投げられた側は異世界で何をしていいのかわからず、さらにスタート地点は森なので遥以外の面々は『委員長(本名不明)』の指揮の下、テントを張ったり自炊をしたりする「合宿」のようなことを始めている。せめてスタート地点は冒険者の町の傍にしたれや……
最終目標があってこそ、そこへ向かうための異世界攻略の筈なのに本作はその決定的な部分を提示しておらず、ふわーっとしている。
【総評】
3話で断念。【なろう系】に求めることでは無いかもしれないが、アニメを人に見せるための「誠実さ」が欠片も感じられない作品だ。
見るからに低予算で画に外連味が一切無く、隙あらば止め絵に流し絵、さらに『神カツ』と同じくドッドのゲーム画面風で省エネを図る酷い作画制作をしている。キャラクターデザインはコミカライズ準拠にしてあるようで特に女子の顔や太ももが中々良いのだが、代償として皆、表情や肉感が固いときている。一方、モンスターデザインは最早、子どもの落書きレベルだ。
そして設定やタイトル、まあ嘘っぱちである。主人公は使えないスキルを多くもらったという設定だが、そのスキルの使えなさを感じることもないうえにむしろ使えるスキルも多く、新しいスキルもぽんぽんとゲットするため不利な状況という感じも一切無い。結局数々のチートスキルで無双を始めるため「頼りにされる」という形で人を惹き付けてしまい、1話以降はぼっちにならず多くの視聴者の期待──独りだけでどのように異世界攻略していくのか──を裏切る形にもなってしまっている。これならまだ『無職転生』の方が孤軍奮闘感が強い。
全体的にコメディやスローライフ色が強いので上記の欠点もその特色を印象付けるための要素なのかも知れないが、3話のラストで{netabare}何者かによるクラスメイトの絞殺{/netabare}というシリアスなシーンが入ったのでその点も中途半端になってしまっており、登場人物らに目標が無いことも含めて結局、視聴者側は何を見せられているのか・何を見届ければいいのかがわからなくなってしまう。
そんな作品を展開する中にぼっち気どりで台詞回しのキツい主人公・遥が随所にサムいギャグやツッコミを入れていくため、視聴継続するにはかなり厳しいものがあり一旦(もしくは永続的に)断念したわけだ。
そんな主人公のCVを務めた梅田修一朗くん──声優の人気度はキャラ人気にも左右される傾向にある中、こういう役を続けてそのまま役柄に収まってしまうと『異世スマ』の主人公役と似たような進路を行くことになりそうで、ちょっと心配である(笑)