四ツ谷ミツル さんの感想・評価
3.8
物語 : 5.0
作画 : 3.0
声優 : 5.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
奥ゆかしき"考察型"妖奇譚
映画が素晴らしかったのでこちらも視聴させて頂いた。
これは秋の夜長に一人で見たくなる作品だ。面白かった。
先にサクッとまとめるとコスパやらタイパやらを重視するタイプには絶対に合わない。
2〜3話で一つの章が終わるので見やすいがテンポが良いわけでも無い。
アニメーションとしては日本昔ばなし的な感じで口がぱくぱく動いて時折髪が靡く程度のエコ作画である。
上記で合わないと思った方にはおすすめしない。
が、この作品は紛れもない秀作である。その理由を今から語らせて頂く。
まず、なんと言ってもストーリーがどれも秀逸だ。モノノ怪という怪異を扱いつつも人と人との確執や蟠りを全面に出してくる。各章素直なハッピーエンドとは言い難いが、リアルな人間関係にも完全なハッピーエンドは無いと思うので、生々しさ込みで良かったと言える。
動きの少ない作画も、むしろ自分は考察しながらのめり込むように視聴していたのでこのくらいが丁度いい。あまり動き過ぎると作画に目が入って話がすり抜けかねないので、良い判断では無かろうか。
声優陣もなかなか豪華で、主演の櫻井さんの渋い声は薬売りの怪しさによくマッチしていた。
自分は映画から入ったのだが、ゆかなさんも常連だったのだな。小生意気な可愛さがあってよかった。
話はやや難解だが集中すれば考察しながらの視聴が可能だし、最終話で大筋や物語の背景はそれなりに把握できる。
個人的に唯一首を捻ったのは"のっぺらぼう"だったな。初見じゃちょっとムズかった。
だが、結局お蝶さんは逃げ出して自由になったのだと解釈した。
何度も繰り返される宴会、終わらない蔑み、心にこびりつく母の叱責。
付き従って笑顔の仮面で乗り切っていたが、無下にされて出た言葉が「私、馬鹿みたい」
多分あれで全て投げ打って(おそらく仮面の男も捨てて)逃げ出す決意を固めたのだろうな。
…うん、唐突に考察を垂れ流してすまない。一番好きな話は"化猫"です。(笑)
作画の雰囲気や話の難解さ故ハマる人は多くは無いだろうが、キラキラアニメ蔓延る中たまには触れたい大人向けアニメだと評しておく。