plum さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
アニメだからこそ描けたシーン
本当に好きな作品に出会ったとき、自分の語彙の無さに気付かされます。気持ちに言葉がついてこないんですよね。
最後の最後まで、気持ちのいいアニメでした。
地味そうなアニメだな、というのがアポロンを知ったとき、放送前の印象です。しかし、JAZZという文字に惹かれました。最近めっきり聴いていませんでしたが、昔はCDやLPを買い漁っていた頃があったからです。しかし一方で、音楽が菅野よう子という事が少し不安でした。菅野よう子は、”JAZZを聴かない”とどこかで読んだことがあったから。ちなみに、COWBOY BEBOPは未見です。そんな期待と不安を胸に、見始めたのです・・・が。
その不安は杞憂に終わり、終わってみれば、私にとっては最高のアニメでした。この作品は、”JAZZアニメ”ではないのでしょうね。あくまで描きたいのは、薫や千太郎、律子といった”人”だろうと思います。その彼らを繋ぐ重要な要素として、JAZZがあるのでしょう。
人に関しては、主人公の薫がとても好印象でした。よく失敗をします。思っている事と違うことを言ってしまって、後悔するシーンは何度かあります。しかし、その度に真剣に向き合う姿は、素直に応援したくなるものでした。言うべきときには言う。これだけで、最近のアニメにありがちな主人公とは、ハッキリと一線を画していたと思います。
人を描いたドラマと書きつつも、本作にとってのJAZZはやはり特別です。7話の演奏シーンは、これまでにアニメで経験した事がないほどゾクゾクしました。最終回の演奏も好きです。それは、決して絵だけでも音楽だけでも、そして実写でも描くことのできない、アニメだからこそ描けたシーンだったと思います。
ストーリーは、全12話という限られた時間の中で、これ以上なくうまく纏まっています。最終回は、駆け足過ぎるという声をよく聞きますが、本作において薫と千太郎が一緒にいない時間に尺をとる必要はなく、全体のバランスとしてはこれがベストだったと思っています。(原作は未読)
■追記
原作全9巻とBONUS TRACK読み終わりました。アニメを先に見ていても、十分楽しめます。いや、正確に言うと、アニメが先だと原作で人物の心情を更に楽しむことができるし、演奏シーンでは頭の中でJAZZが鳴り響きます。逆にアニメでは、漫画では表現できない音楽と動き、声優の演技を楽しむことができます。原作とアニメ。凄く高いレベルで相乗効果が生まれているんです。原作を読むと見る気がしなくなるアニメ、逆もまた然りですが、そのようなアニメ化作品が多いなか、坂道のアポロンは、非常に稀有な作品であると思います。
また、BONUS TRACKでは勉、康太、淳一と百合香のサイドストーリーと、本当にこれで最後となる最終話が掲載されています。こういう作品ってつまらなかったり蛇足になりがちなんですが、アポロンはどれもいい話であったし、最後の大円団はアニメが気に入った方は必見です。これOVAでやってくれないかな。
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■ 7話の感想
ストーリーはベタすぎるくらいベタ。
けれども、薫がポツポツとMy Favorite Thingsを弾き始め、千太郎のドラムが入ってきたときはゾクゾクした・・・。こういう感覚は、あまりアニメで感じたことがありませんでした。学生時代、初めて行ったジャズバーで、誰とも知らないおっちゃん達の演奏を聴いたときを思い出しました。ドラムのおっちゃんが、すごく激しく、それでいて楽しそうに演奏してたのが印象的でした。そして、Someday My Prince Will Come に続いて最後のMornin'。薫の転がり跳ねるようなピアノが、最初に演奏したときとのギャップもありとても良かったです。
最近は恋愛や友人関係でギスギスした話でしたが、登場人物達の思いや行動が、とても素直で自然であり、嫌味を感じません。恋の行方も気にはなるけれど、彼らがどんな風に大人になっていくのか見てみたいですね。
■ 3話までの感想
主人公が見ていてすごく気持ちいい奴。
最近のアニメの主人公(男)を見てるとね、「あーーーーなんでそこで言わないんだよ!
気づかないんだよ!気づかない振りしてるんだよ!誤解はすぐ解けって!」とずっとイライライライラ・・・。そして最終回でなんとかケジメをつける。こんなのばかり。ところがこのアニメの主人公は、(おい!誤解されてるぞ!)と心で思ってると、すぐに誤解を解く。自分の気持ちをハッキリ言う。好きな子の心情を敏感に察することもできる。なんて気持ちのいい奴だろう。他のアニメの主人公が、みんなしょうもない奴に見えてくる。
そしてジャズ。
自分もジャズは結構好きで、コルトレーン、マイルス、ビル・エバンス、ペッパー、と言い出したらきりがないくらい聞きました。知ってる曲が演奏されるだけでも嬉しいのに、また演奏しているときの描写がいいんです。ピアノの演奏では鍵盤を叩く指まで描き、ドラムもビバップの早いリズムで叩く姿をキッチリ描いてる。どうも、実際の演奏を10数台のカメラで撮影して、そこから作画しているそうで、すごくリアルです。そして、何より演奏すしているときの雰囲気や表情がすごく楽しそうで、見ていておもわずニヤニヤしてしまう・・・。
モーニンに続き、3話ではビル・エバンスが演奏されましたが、これからどんな曲が演奏されるのか、すごく楽しみです。