take_0(ゼロ) さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
痛みを伴う衝突と葛藤、清算、そして前進す。
久しぶりに心が震えた気がした。
多分、CGで描かれているキャラクタだと思うが、違和感は最小、作画など物理的な面でのクオリティは非常に高い。
なによりも作品自体から高い熱量を感じた。
物語を非常に平たく言ってしまえば、
「事情があって田舎から出てきた女の子が出会いをとおしてバンドに目覚め、仲間をつくり目的をつくり本気でバンド活動をしていく」
という、シンプルなもの。
おそらく、一番シンプルに表現すれば、これで過不足はないのではないだろうか。
けれども、主人公の井芹仁菜をはじめ、バンドメンバーになる面々はそれぞれに、様々な事情、思いを抱えており、それがバンド活動を続ける中で、さらけ出され、時に励ましあい、時に衝突し、方向性が定まっていく。
この個々の思いや事情がさらけ出されて解消していく過程が、まさに「心の叫び」といってもよい熱量で描かれている。
なんだか、文章で書いていてもここら辺の熱量を伝えきれず、大変もどかしいことになっているのだけれども・・・。
ちょっと前に視聴した「夜のクラゲは泳げない」と近い印象を受けたのも確か。
たしか「夜のクラゲ~」の他の方のレビューを拝見していた時に「今作と同時期に・・・」とか「〇〇のほうが・・・」といった記載があったように記憶しています。
なるほど、同じタイミングで放送されていたのですね。
確かに、どちらがどうというのはナンセンスですが、個人的にはどちらも素晴らしい作品だとの印象です。
どちらの作品も、前に進んでいく過程で、いろいろな痛みや悩み、葛藤、苦しみが描かれており視聴している側も心が揺さぶられる場面が多くありました。
やはり「いろいろな思い」を内包している作品は素晴らしいものが多い、との感想です。
ただ「心の叫び」という意味では、今作の方が印象が強いように思いました。
それぞれにカラーが違うことは当然で、それも素晴らしいことだと思います。
個々のバンドメンバーの抱える事情や心のわだかまりについては、ここで言及することは避けますが、シチュエーションの大小を考えなければ、ごく普通に我々が抱く感情と大差はありません。
ただ、そこを回避したり、ごまかしたり、遠慮したり、うやむやにしたりせずに正面からぶつけ合い、さらけ出し、相手と向き合っていこうとする姿勢が有るか無いかが違いでしょう。
ここを正面から向き合う・・・、いやぁ、難しい、怖い、想像するだけで、そんな感情が芽生えてきます。
「私(達)は間違っていない」
これを言い切れるかどうか。
原則的に言えば、自身の生き方、やり方、考え方について、本人が間違っていないと言っているのであれば、思っているのであれば、それはそうなんです。
ですが、実際の社会では、常識や社会通念、あるいは大袈裟に言えば法律や倫理観などなどで、それをとおすことは難しくなります。
大袈裟な部分は、社会を構成する上でちょっとおろそかにはできませんが、自分自身の生き方や考え方は、決めるのは自分です、もちろん責任も自分ですが。
ただこれを大上段に振りかざすと、大抵の人は離れていくんですよねぇ、現実問題として。
「んじゃあ、好きにすればいいじゃん」
「私のやり方とは違うし、合わないね」
「ここでは、その考え、やり方は認められない」
なんて、事が往々にしてあります。
怖いんですよ、寂しい事になるんですよ、めんどくさいんですよ。
ただ、それをさらけ出して、ぶつけ合って、方向性が一致する者が集まったら、どうなるか。
そういった事を見ている者にもイタミと共に可視化させてくれる作品でした。
良作だと思います。
とは言え、続くシリーズがあるとすれば、またバンド内でいろいろとありそうな気はしますね。
頑固なメンバーが多いバンドですからねw。
それにしても「けいおん」あたりから話題になり始めたガールズバンドものですが、進化が止まらないようで何よりです。
今後も魅力的な作品が登場してくればいいと思っています。