nyaro さんの感想・評価
4.0
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
中途半端なのが良かったかも。トリップするような感覚です。
今更本作が配信されたのに少々驚いています。知る人ぞ知る作品の位置づけだったし、2000年代に本作の話題をアニメ関連の記事で見た記憶はほとんどありません。
ですが、今回再視聴してその雰囲気やアニメの出来が優れていて驚きました。本当に丁寧な作りで、画面だけで作品に引き込まれます。この点が本作の最大の魅力でしょう。セルアニメの持つ色彩の豊かさで表現した暗い画面が非常に美しい作品です。サブキャラのキャラデザはテンプレ感があって魅力的かと言われると微妙ですが、ヒロインのキイはなかなか独自性がある気がします。
1994年から順次発売されたOVAですね。私は多分2000年前後に見たと思います。中途半端なストーリーになっている感じがするのは本来2クール作品だったようです。人気のせいか制作体制のせいかわかりませんが、15話とかなり短いところで終わっています。そのせいで、テーマ性の残滓は見えるのですがテーマは喪失しています。そして、恐らくはアイドルになるプロセスがもっとあったんだろうなと思うのですが、本作ではアイドルとしてのキイの活躍はほぼ描けていません。ただし、ラスト2話が駆け足ではありますが、中途半端なりにちゃんと完結していますし、カタルシスがあります。
友情とか過去の因縁とかは描いているようで描き切れていません。駆け足だし、そもそもキイとサクラの友情…というか、まあ、ネタバレなのでやめておきますが、2人の関係性もまったく描写は不十分です。
ただ、私はこの中途半端感が不思議な効果を出していると思います。ちょうどこの翌年のエヴァンゲリオンがそうだったようにです。訳のわからない世界観という意味での世界系としてはエヴァを先取りしています。ロボットと人間の精神的融合とか心の世界を描いている点もエヴァ的です。またオカルトなのかSFなのか境界線のような感じに「シリアルエクスペリメントレイン」との類似性も感じます。
アニメでアイドルを扱うのはマクロスやクリーミーマミなどがありますが、本作においてアニメ内のアイドルをアイドルキャラとして楽しむような内容ではありません。SFとしてバーチャルアイドルにアイドルの裏の顔としての人間の欲望や業のようなものを描いています。
この辺のバーチャルアイドルをネガティブに扱う感じは「マクロスプラス」との類似性を感じます。数か月差で「マクロスプラス」の発売が早いですが時期的には近接しており模倣というより、時代の流れでバーチャルアイドルがSF的発想としてリアリティがあったのでしょう。
全体としてテーマを読みとるよりも、不思議な暗い雰囲気に埋没するのがいい作品です。違う世界にトリップする感覚ですね。サイバーパンクではないのですが何かそういう独特の世界観が構築できていて、その意味でアニメのレベルは相当高いので一見の価値はあると思います。
評価は…そうですね。作画は4.5かなあ。色彩や線、撮影は本当にいいんですけど、ちょっと動きが乏しい部分があるので。ストーリーは中途半端ですが展開が良いので3.5。キャラはキイはいいんですけど、サブキャラのバックボーンが甘いかなあ…4にします。音楽・声優は調整で4にしておきます。これで全体で4ですが、それよりも満足度は高い作品です。