青龍 さんの感想・評価
3.7
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
中途半端とみるか、ちょうどいい塩梅とみるか
じゃきによる原作小説は、「小説家になろう」から「オーバーラップ文庫」(オーバーラップ)で書籍化(既刊4巻、未読)。シリーズ累計100万部。
やもりちゃんによるコミカライズは、『コミックガルド』(オーバーラップ)にて連載中(既刊10巻、既読)。
アニメは全12話(2024年秋)。監督は高村雄太。制作は、『老後に備えて異世界で8万枚の金貨を貯めます』、『裏世界ピクニック』などのFelixFilmと、画狂との共同制作(以上、Wikipedia参照)。
(2024.12.17 投稿)
コミカライズを既に読んでいたので、個人的に今季期待していた作品だったのですが、アニメ化によってコミカライズから大きなマイナスもないけれど、大きなプラスもないといった印象。
【あらすじ】
舞台は、「探索者(シーカー)」というダンジョンを探索する冒険者のような存在がいるのだけれど、文明レベルは中世じゃなくて近代くらいの西洋。
主人公のノエル・シュトーレン(CV.山下大輝)は、「不滅の悪鬼(オーバーデス)」と呼ばれる偉大なシーカーの祖父の背中を見て育つも、自身が授かったジョブは最弱とされる「話術士」であった。
しかし、ノエルは、亡くなった祖父のような最強のシーカーを目指すことを諦めきれず、その巧みな話術を使って最強のクランをつくり、自身が最強になれずとも、最強クランのマスターとなることで、のし上がっていこうとするのだった…
【権謀術数を用いて、のし上がる主人公】
主人公は、RPGでいうところのバッファー(※能力補助系魔法使い)なので単体としての強さはないのだけれど、時に汚いとも思える手段を選ばない謀略を用いて、のし上がっていこうというストーリーが他の量産型なろう作品との違い。
伝わる自信はないですが(笑)、『神無き世界のカミサマ活動』の主人公・卜部征人をもっとスタイリッシュにした感じ。
【中途半端とみるか、ちょうどいい塩梅とみるか】
アニメを観て思ったことは、いわゆる「量産型なろう作品」と比べると主人公が権謀術数を用いるなど「ダークファンタジー」寄りなんだけど、明らかなダークファンタジー作品と比べると「温く」感じるという中途半端な立ち位置になってしまっているところ(※言い換えるなら「ダークファンタジー風ファンタジー作品」とみるか、あくまで温いけど「ダークファンタジー作品」とみるか)。
ただ、これを中途半端とみるか、ちょうどいい塩梅とみるかは、人によって変わってきそう(※ダークファンタジー風ファンタジーとしては、いい塩梅で、ダークファンタジーとしては中途半端)。
もっとも、本作は、いずれにせよ「ダークファンタジー色」が他の作品との差別化、セールスポイントだと思うんです。
個人的には、コミカライズと比較して、もちろんアニメには時間的・資金的な制約がありますが、ストーリー展開、演出(見せ方)、作画の説得力、音楽といった面で、ダークファンタジーとしての雰囲気づくりの大切さを感じました。
ダークファンタジーは、人間のリアルでシビアな暗黒面を描いているので、それに対する裏付けがしっかり感じられないと「ダーク」さが薄れてしまう。
逆にいうと、そこが感じられないとただの「ファンタジー」っぽくなる。そういう意味で、天翼騎士団のリーダーでナイトのレオン(CV.坂田将吾)の話は、尺に追われて筋を理解するための最低限という感じがしたので、もう少し尺を使って心理的葛藤を表現した方が良かったんじゃないかと思いました。
前向きに表現するなら、あえてカテゴライズはしないで、ご都合主義の量産型なろう作品には辟易しているけれど、人間の暗黒面をこってりと描いたダークファンタジーを観るほどメンタル的な余裕がないといった人向けでしょうか。
【アルマは可愛い】
左右の眼の色が違うオッドアイで、主人公と同様に伝説の暗殺者を祖父に持つ設定マシマシのスカウトのアルマ(CV.芹澤優)のヴィジュアルがいい。可愛いは正義。
ただ、彼女みたいな生い立ちだと、もっと性格がひん曲がっていてもおかしくはない。ダークさを出すためにとにかくヤバい奴を出しゃいいというつもりもないですが、その辺りも生粋のダークファンタジーに振り切っていない印象。
もっとも、そうした方が一般に受け入れられやすいといえば受け入れられやすいわけで、そういうところをどう評価するかだと思います(※まあ、狂人でも『リゼロ』のペテルギウス・ロマネコンティや、『オーバーロード』のクレマンティーヌにも人気があるので、やっぱり描き方・見せ方なんですかね。)。
その辺のバランスがコミカライズだと「よりダークファンタジー寄り」で、アニメだと「よりファンタジー寄り」という印象です。
という感じで、中途半端とみるか、ちょうどいい塩梅とみるかは、結構、人によるんじゃないかという印象を持ちました。