Witch さんの感想・評価
3.5
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
『氷菓』や原作を知っているとつい口を挟みたくなるのは申し訳ない
【レビューNo.158】(初回登録:2024/12/15)
小説原作で2024年作品。全10話。
原作についてはアニメ『氷菓』で米澤穂信先生を知って読み漁るようになり、
その際に読了済み。
その当時は漠然と「これもアニメ化されたらいいのになあ」と思っていたら、
このタイミングでまさかのアニメ化ですよ(笑)
(ストーリー)
主人公・小鳩常悟朗は中学時代に問題事を推理したがる性格で苦い経験を持つ。
そして同級生の小佐内ゆきも常吾朗と似た境遇を送っていた。
そんな2人は意気投合、「小市民」を目指すために互恵関係を結ぶことになる。
高校生に進学した2人は平穏を求めながらも、日常の中で発生する事件に巻き
込まれ、結局封印したはずの謎解きに挑むことになる。
(評 価)
上述のように待望のアニメ化だったのですが、率直なところ
「アレ!?思ったほど面白くないなあ」
原作を読んだのも大分前で結構忘れてる部分も多く、思い出補正なんかもあっ
たのかなあと思っていたのですが、最近最終巻(冬期)が図書館から回ってき
たので読んでみると
「おい!やっぱり面白いやんけ!!」
なので、もう一度原作を読み返してみると・・・
・1,2話でやらかしている
1話を視聴して感じたのが
「アレ!?こんな不自然なストーリーだっけ?」
という強い違和感だったんですよね。
原作を確認すると、やはり「ポシェット事件」と「いちごタルト事件」は
本来別エピソードでアニメ化で改変されたようですね。
まあ1話で視聴者を引き付けるために上述構成にした意図は理解できます。
でもここに問題が発生したんですよね。
小佐内さんは本来「スイーツ」については異常ともいえるこだわりや執着
を持っている、個性的なキャラだったんですよね。
それが本作だと
・「春期限定いちごタルト」に強い執着を持ち、絶対ゲットしたい
しかも今日までという期限付き
・そして(2個ゲットするため)小鳩君に同行の約束を取り付けるも
・ここで事件に巻き込まれ小鳩君が友人から呼び出される
→ 小佐内さんおとなしく待機
って、こんなの私の知ってる小佐内さんじゃない!
売り切れるかどうかの瀬戸際で、呑気に待機してる場合じゃねーだろ!!
個人的には彼女の強烈な個性は吹っ飛び「普通のスイーツ好き女子」に成
り下がったなと。
(この辺はその後のエピソード含め(説明セリフ頼りとか)演出が弱かっ
たかなっと)
これだけなら些細なことかもしれませんが、本作は一事が万事こういう感
じなんですよね。
例えば続けて2話ですが、今回は「おいしいココアの入れ方」です。
これはミステリーのオチが斜め上過ぎて酷評の嵐でしたが、原作を読むと
本編のポイントはここではなく、小鳩君と友人堂島健吾の間で交わされる
「お前中学で何かあったのか?雰囲気が違い過ぎる。」
という会話劇なんですよね。
これも
・原作だと知恵働きをやめ「小市民」を目指すようになったきっかけが語
られるのは一番最初のプロローグ(夢の中という設定)
→ それを受けての上述会話劇になるので重さを増す
・本作だとこの辺りが語られるのはラスト付近
→ 上述会話劇が唐突な昔話になり伏線めいた扱いに
制作側としては最後の見せ場にとっておいたようなフシがあるのですが、
そのせいで
・会話劇の重みが薄らぎ「ココアの入れ方」の不出来が悪目立ち
・「小市民」という言葉もどこかひとり歩きしているような状態に
(また後述の2人のキャラの描き方にも影響したような)
と、やはり違和感を覚えたのは正しかったようです。
1,2話で「??」となった視聴者も多かったんじゃないですかね。
(制作側のやろうしていることは分かりますが、序盤からこれだけ違和感
を覚えるとなあ・・・という感じですね。)
・3話以降は原作の出来に助けられたが・・・
3話以降は原作者の調子も上がってきた感じで、ミステリー的なストーリー
は楽しめたように思います。
しかし「魅せ方」については比較するのは適切でないかもしれませんが
・『氷菓』は
・「何故この作品をアニメでみせるのか」を考え抜いた上で
・それに従い全体像も練り上げて、そこからエピソードに落とし込む
という意図が感じられ、アニメは原作越えの面白さがあった
・しかし本作は
・このシーンはどう見映えするか的な”点”で終わってしまってる印象
という感じで連続性のある積み重ねという部分が弱い感じがしましたね。
その辺はキャラにしわ寄せがきてる感じで、例えば小山内さんなんかは
・普段はスイーツ好きで小動物的にかわいく描いておいて
・ここぞの場面で作画のインパクト等で「実はどす黒い女子です」アピール
しときゃいいやろ的な
他のレビューで書きましたが、キャラ造形って
>・作り手が「彼はどういう人間か?」というのを考え抜いた上で、それを
> 作中の言動に地道に落とし込んていく
>・その積み重ねを経て、視聴者側がどう受け取るか
ということだと思うのですが、そういう点では物足りなさを感じたかなっと。
(全体的にキャラの捉え方が平面的というか、他のレビュアーさんのご指摘
通り行間を読み取れていないというか・・・)
それに伴って、小鳩君との「小市民」を目指すための互恵関係という設定も
作品の面白さに繋がっていない感じですし。
・作画もレベルは高いが・・・
作画は綺麗でかなりレベルが高いです。
しかしここでも引っ掛かるところが・・・
ミステリーだと会話劇が冗長的になりやすいので、飽きさせないようイメージ
映像を挟んだりするのですが
・『氷菓』だとメインの会話がよりわかりやすくなるように等会話劇を面白く
引き立てる名サポート役的に描かれている
・本作は目先の変化だけが目的というか、川辺のシーンなんかむしろ本筋より
作画がきれいだったりとこっちを強く主張してどうすんねん!
(会話劇を面白くする方向に機能していない)
こういう感性が合わなかったところも1話から違和感を覚えたひとつですかね。
(作画も全体的にアニメとして面白くみせることより、作画自体の凄さを見せ
つける方向に神経がいっていないかと?)
『氷菓』や原作を知らなければまた評価も違っていたかもですが、なまじ知識
があるとつい口を挟みたくなる点はちょっと申し訳ないですね。
期待値が高かった分辛口気味なレビューになりましたが、標準レベルはクリア
されているとは思います。
(正直なところ1,2話で負のバイアスがかかったのが影響してる感じ)
決して『氷菓』を目指して欲しいわけではありませんが、『氷菓』の真骨頂は
ある意味
「原作へのリスペクトと圧倒的な理解度の高さ」
にあると思っているので、そういう点は見習って2期では
「この原作のどの部分が琴線に触れアニメ化に至ったのか」
が見えるような作品を期待したいですね。
2期分の原作エピソードもより面白いものになっているので。
(追 記1)
>このタイミングでまさかのアニメ化ですよ(笑)
これは2024/4に最終巻が発刊され、完結まで描ける目途がたったのが大きかっ
たのでしょうね。
個人的には、2022/2の米澤先生の「✕」での発表
「KADOKAWAさんから出る新刊は、〈古典部〉シリーズの長篇にしようとご相談
しています。」
以降『氷菓』の続編どうなっとんねん?が気がかりなんですが。
『小市民シリーズ』も無事完走したことですし、こちらの方もよろしくお願い
します m(_ _)m
(『氷菓』のレビューでも書きましたが、これが完成すればギリ1クール分の
ストックは確保できるかなっと。
アニメ化してくれるかは知らんけどw)
(追 記2)
あと堂島健吾のことを彼女が「ケンケン」と呼んでいたが、やっぱアニオリだ
ったんだな。
そこはちょっと面白かった。小鳩君の間とか後でちゃんといじってたしw
(改変が”点”で終わらず、きちんと”線”になっていた。)
ただこの回では堂島が「名前は言えないんだが」といいつつ、次の会話であっ
さり名前を言ってしまう”大雑把さ”に小鳩君が心の中でツッコミを入れると
いう(原作の)流れなんですが、本作ではそこはスルーかよっと。
また最終話の小鳩君が最後のパフェを食べた際の心理描写不足とか・・・
こういうキャラの魅せ方とか細かい感性のズレが原作のよさを活かしきれず、
イマイチ合わないなあっと感じてしまった。