ようす さんの感想・評価
3.7
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
すべてを奪われた少年が、取り戻そうと進む道の先は。
手塚治虫原作の漫画をアニメ化した作品。
過去にもアニメ化されたことのある作品ですが、
恐らくそれらとは別物です。
(見ていないので確証はありません。)
大まかなストーリーは原作を踏まえているようですが、
アニメオリジナルの部分も多くあるようです。
全24話です。
● ストーリー
醍醐の国は飢餓と流行り病に苦しんでした。
領主・醍醐景光(だいご かげみつ)は、
十二の鬼神に領地の守護を願う。
願いは聞き届けられたが、
その後生まれた息子の姿は、とても生きていられるものではなかった。
息子の手や足、目など体のあらゆる部位が欠損していた。
鬼神に奪われたのだ。
それから16年後。
生まれてすぐに川に流された景光の息子は、
医師に拾われて百鬼丸(ひゃっきまる)と名付けられ、
失った体を求めて旅をしていた。
孤児のどろろと共に、
鬼神を倒しながら自分の体を取り戻す旅を続ける。
最初はストーリーが難しくて、
設定やらキャラクターをつかむのに時間がかかりました。
鬼神たちそれぞれが百鬼丸の体の一部を奪ったので、
鬼神を倒せば体の一部を取り戻せる。
耳が聞こえない、目も見えない、声を出すこともできない。
手も足も背骨も感覚もすべてない百鬼丸。
体の一部を取り戻せるとして、
たとえば耳と聴覚が戻っても純粋に喜べるものではなくて。
今まで百鬼丸の世界にはなかった“音”に慣れるまでは
彼を苦しめる時間でもあった。
さらに百鬼丸の体を鬼神に差し出したのは醍醐の国の安寧のため。
その体を取り戻すと国に災厄が降りかかってしまう。
一人の人間か、一国か。
天秤にかけられるものは、あまりにも重い。
時代は戦国時代。
侍が戦をし、民の生活は侍によって簡単に壊されてしまう時代。
旅をする中でいろいろな場所に立ち寄る百鬼丸とどろろ。
いろんな人たちの生活に触れる。
殺したり殺されたり、
大事な人を失ったり、
結構むごい描写も多いです。
時代が時代なので、
実際の生々しさに比べたらなんてことないのでしょうけど。
百鬼丸の方は“鬼神を倒して体を取り戻す”という目標一筋ですが、
どろろの方は感じるものがあり、
百鬼丸の行動に対してもそれでいいのかと揺れる。
この作品の主人公は百鬼丸かと思っていたので、
タイトルが“どろろ”なことに若干違和感を持っていたのですが、
どろろの心情の変化や選ぶ道の方がドラマや人間らしさがあり、
どろろの名前の方をタイトルに付けたくなるのも納得でした。
百鬼丸と奪われたものは全く違うとはいえ、
どろろもまた、すべてを奪われた者ですし。
● キャラクター
どろろの描かれ方がかわいい。
年齢は不詳だけど、5、6歳ぐらい?
両親を亡くしていて、
事あるごとに母親の温かさを求めているところは、
普段しっかりしているどろろに幼さを感じさせる。
私は百鬼丸の弟・多宝丸(たほうまる)が気に入っていました。
人情もあり、国を思う気持ちは誰よりも強い。
こういう領主なら国と民を正しく導き、
みんなから頼りにされるだろうなーと、
将来が楽しみな少年でした。
● 音楽
【 前半OP「火炎(FIRE)」/ 女王蜂 】
【 後半OP「Dororo」/ ASIAN KUNG-FU GENERATION 】
私は前半OPが好みでした。
雰囲気が“戦国時代もの”“妖もの”である本作にぴったりすぎて。
かっこよくておしゃれでした。
後半OPはダークな雰囲気もありながら、
徐々に明るい雰囲気になっていく疾走感がいいですね。
こちらも好きです。
【 前半ED「さよならごっこ」/ amazarashi 】
【 後半ED「闇夜」/ Eve 】
どちらもおしゃれで静かな雰囲気から始まる曲。
前半EDは力強さも感じられて好きでした。
● まとめ
戦にいい影響はない。
悲しむ人、苦しむ人が生まれるだけだ。
争いたいと思っていない民が苦しむのはなぜか。
それは彼らが暮らしや行く末を侍に頼っているから。
だから侍の行動に怯え、
苦しんでも抗うことができない。
力がなくても彼らに頼らず生きていく方法があるはず。
これってどの時代でも当てはまることなのかもしれないね。
上の人間を頼って生きていくことは楽だ。
だけど与えられる苦しみまでも仕方がないと受け入れてしまう。
自分たちの道を自分たちで切り開くこともできるのだという可能性を忘れず、信じ続けていたい。
そういう道を百鬼丸は示してくれたのかもしれません。