いこ〜る さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
視聴マインドをリセットする必要性
これはすごいな。
アニメーションである必然をどう担保するのか難しかったのではないか?そして難しかったながらその課題はよく克服されていて、単なるビジュアルノベルにならず静謐な映画的視聴感のある、とても新しい作品になっていたと思う。
ただ私はこれをリアルタイムで見続けられたか?の自信はない。
事前にそう言う作品であるのを知って放送終了後に後追いで一気見したから完走できたように思う。
普通にアニメを見る気分でこれを見たら、テンポが悪いだの暗いだの話が進まないだのキャラが可愛くないだのと、1話切りしててもおかしくないかな。つまり視聴マインドの刷新が必要なわけだ。
そう、この作品は私たちに迫ってくるのだ。
親の再婚で同級生の異性と義理の兄妹に!で何を想像するかを。
恋愛ものを全て『ラブコメ』と括ってしまいがちな態度を。
そして進行速度のインフレを一旦止めることを。
いわゆる深夜アニメ的なお約束を廃し、この設定でリアリティあるドラマを求めたらこうなる!と言う形を真摯に追求した結果がこれだと思う。
果たしてそれが面白かったのかと問われるとなんとも答えようがないのも事実ではあるけど、それでもアニメという表現芸術が進化の袋小路に迷い込まないために、こう言った挑戦はこれからも継続して必要だと思う。
だからこそ、この挑戦をした制作スタッフに敬意を表したい。
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物語:コメディを排した恋愛もの、リアリティという点ではかなり頭抜けた存在。楽しくはないがなぜか引き込まれてしまう。
声優:妹役は鬼頭明里かと思ったら『箒星』だった。と言ってもわからないから〈菜なれ花なれ〉のパルクールの娘でわかるか?
エモーショナルな演技は抑え込まれていて実にアニメっぽくない作品なので大変だったと思う。
キャラ:自分だったらバイト先のお姉さんがいいと思うけど・・・
作画:このトーンとこの演出方針からすればもっとクオリティが欲しいところ。ただ、引きの作画が多くて苦労しただろう。あと、EDの人物イラスト(3DCGのモデリング?)がどことなく文学系の単行本の表紙で見たような感じで面白い試みだった思う(作中のキャラ絵と全然違う)。
音楽:OPは物語の始まりの高揚感が伝わる良曲。fhanaは〈天体のメソッド〉の頃から好き。
EDはどことなく『さよならのこと』を連想させる静かな曲でこれも良かった。