101匹足利尊氏 さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 3.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
人間になりたい燈の足跡がより強調された総集編
【物語 4.0点】
TVアニメ8話~12話の内容などを再編集した総集編が100分程度。
本編後、残りの20分程度でミニフィルムライブという構成。
前編鑑賞時、私は、前のバンド・CRYCHIC解散の経緯などが語られなかったのは、初見振るい落とし?と捉えましたが、
TVアニメ3話にて、燈(ともり)一人称視点で展開された、CRYCHICの始まりと終わりのエピソードは、
今回の後編序盤に回されました。
幼少期より、世間とのズレから“人間になれない”との苦悩を抱えた燈。
かつてバンドを壊したのは、自分が人間になれなかったからでは?との罪悪感。
葛藤の心理描写が、TVアニメ序盤から、終盤の現行バンドの大破と再生のストーリーの至近距離に再配置されることで、
ドン底の絶望感及び、そこから這い上がるカタルシスが倍化される構成となっています。
{netabare} TVアニメ版10話にて、再び独りになった燈が、朗読ライブを始める件{/netabare} からスタートする本総集編。
燈が人間になっていく過程をより鮮明に捉えられる構成で、再び浴びる10話のあのライブ。
分かっていても涙腺に来るものがありました。
【作画 4.5点】
アニメーションはサンジゲンによるCGがメイン。
今回、劇場の大きなスクリーンで再見して感じたのは、
観衆の描写のこだわり。
むき出しの燈の言葉が、観客の脳天に突き刺さって、グラリと心が動かされる。
それが、微かに揺らぐ観客の身体の動き何かに細かく表現されていて。
燈の詩が、回を重ねる度にライブ会場に波紋となって広がる様が、
感極まる観客などの追加カットも交えて、こちらにも押し寄せて来る映像構成に、
私も目頭が熱くなりました。
【キャラ 4.0点】
前編レビューにて「“野良猫”はなんで春日影やったのか?」とタイトル掲げながら、
投げっぱなしのレビュタイ詐欺状態wになっているのが心残りなので、
ここではMyGO!!!!!のギター・要楽奈について掘り下げてみたいと思います。
{netabare} 前後編、新規カットも含めて楽奈視点を共有する中で、
場所に囚われない“居場所”としてのバンドとか。
実際には内心で凄く葛藤して歌を吐き出していた燈が、
楽奈には、つまらないしがらみに囚われず、一生とか言っちゃう、“おもしれー女”に映った。
この辺りは想定内。
が、気まぐれに練習来たり来なかったりする楽奈が、
あれでバンドに参加したつもりになって、祖母らにも嬉しそうにメンバーは5人などと話していたのは、
価値観の違いに驚かされましたし。
何より意外だったのは、ライブハウス「RiNG」で幾度も披露したギターソロから、
ハードロック趣味と思われた楽奈が、
アコースティックな穏やかなメロディを嗜好するという件。
「春日影」やったのは楽奈がやっと居場所を見つけた歓喜とか、おもしれーから以前に、
単純にこういう曲が好みだったという部分もあったというのは、個人的に意表を突かれました。
思えば楽奈は、春の陽気に誘われて、気ままに猫と戯れにいくような、穏やかな少女。
「春日影」がむしろ楽奈の素に近かったという事なのかもしれません。{/netabare}
前後編通じて楽奈の生態研究も捗った有意義な総集編でした。
後編でも相変わらず食ってばかりでしたがw
飲食物をリード代わりにして“餌付け”して繋いでおかないと、何処にでも行ってしまう。
まったく世話の焼ける“野良猫”ですw
【声優 3.0点】
後編にも新規カットはあり、
フィルムライブでも高松燈師による{netabare} 雨と匂い{/netabare} に関する有り難い講話もあったりしますが、
前編ほどの新規収録量はないので、基準点に据え置き。
先日、雑誌『声優グランプリ』での高松 燈役の羊宮 妃那さんのインタビューにて、
燈のボーカルを作り上げるために、よりボイスに地声を入れるなど、
一度、自らの声を“捨てて”再構築したというお話を見かけて衝撃を受けました。
正直、燈の声と歌については、個人的にパンチ力は今ひとつとの印象でした。
が、キャストは柔らかい声質でも、バンドサウンドに埋もれないように、
相当、試行錯誤して、あの声を作り上げて来たと知り。
今後は、そういう裏の努力も踏まえた上で、彼女の声と歌を受け止めようと思いました。
【音楽 4.5点】
ミッドランドスクエアシネマのサウンドシステム“鼓動”採用スクリーンにて鑑賞。
{netabare} 愛音(あのん)の挑発を受けて叩きつけられる、{/netabare} そよさんの紅茶カップの音まで良く拾うw繊細さはドラマパートでも重宝しますが。
同サウンドシステムの真骨頂は3チャンネルに強烈な重低音を送り込むことによる、音楽シーンの臨場感の最大化。
朗読劇も含めて、ライブシーンが多い部分の総集編+フィルムライブ。
せっかくなので音響にこだわった映画館での鑑賞をオススメします。
ED主題歌はMyGO!!!!の新曲「歩拾道」
漸次前進していくミドルテンポの良曲。
スローなアコースティックナンバーか、ハイスピードなパンクロックかで二極化される傾向にある同バンドの楽曲群の中で、
中間を取って、淀みのないセットリストの流れを作る曲として、
ライブでも案外、重宝する一曲になるかもしれません。
因みに曲名は{netabare} 「スピード」{/netabare} と呼ぶそうで。
読めるわけがないw
エンドロール後のフィルムライブ。
尺はおまけ程度の“ミニ開催”。曲も{netabare} 3曲{/netabare} だけですし。
が、個人的に満足度は、とても高かったです。
特に初手で{netabare} 「処救生」{/netabare} のイントロが流れた時は、本編含めて一番興奮しました。
ファンが、フィルムライブ目当てで劇場に足を運ぶ価値は十分あると思います。