「恋は双子で割り切れない(TVアニメ動画)」

総合得点
60.4
感想・評価
97
棚に入れた
238
ランキング
5943
★★★☆☆ 2.9 (97)
物語
2.7
作画
3.0
声優
3.2
音楽
3.1
キャラ
2.8

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ネタバレ

薄雪草 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 3.5 作画 : 4.0 声優 : 4.5 音楽 : 3.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

双子の恋は釣り合わない

何というか、フーテンの寅さんみたいな人っていないもんですね・・。

自分の勝手で恋しちゃう寅さん。手前の物差しで振られもできちゃえる寅さん。
そんな寅さんは、刺しぎわも引きぎわも上手な葛飾は柴又生まれの男前。
洒落っ気、人情味にあふれているから、どんな花でも愛でられるんですね。

「恋に咲く花、散らす花、そんな話は生きていりゃあごまんとございます。人生、結構毛だらけ猫灰だらけってもんじゃぁござんせんか!それじゃあってことでお後がよろしいようで。失敬!」

だから寅さんはかっこいいんです。
大人には似つかわないくらいの爽やかさと純情。
なのに、この上ない大人ぶりがあって、それが粋でいなせなんです。

でも、本作の手前勝手な恋バナにはそういうきっぷの良さが当てられていないんです。
だって今どきの高校生だもの仕方ないよね。
デートで葛飾の水族館に行ってても、寅さんの映画はさすがに観ないでしょうし。

主人公なのに脇役に甘んじる人生なんて、ハイティーンには受け入れ難い世界線ですものね。



恋多き男、白崎純くん。
読書家、学業優秀、ほどよくイケメン。鉄板ですね。
そんな薫るような一面とは裏腹に、二股、多情、優柔不断、食わせ者って燻(くす)ぶるような側面も持っているジキルとハイドも真っ青なキャラ。
生まれながらに双子姉妹に向きあってきたから、きっと女子の扱いには手慣れていて、年季の入った手練れを気取っているんでしょう。

それなのに恋にはからっきしな空念仏、女心がちっとも分からぬ岩男です。
まぁ、短期割りきりってことなら面白いパートナーかもです。
でも長期には手控えたいタイプかな。簡単に浮気しそうだし、言い訳も聞き苦しくてやってられなくなるのが見えています。

こんな痛くて優男に惚れたのが・・・神宮寺琉実さん。
白崎家とはお隣同士、純くんとは幼馴染。
一直な性格が婀娜になったり足かせになったりするこじらせタイプ。
もう一人が神宮寺那織さん。琉実の双子の妹。
話しぶりはオタク揚々、頭脳回天。でも本心は複雑で繊細、かな。

おさなごころに兄弟姉妹同然に育ってきた3人が、10年以上も家族ぐるみのお付き合いの果てに、いよいよ思春期心理を意識するなかであれこれやらかすラブコメ・・いえ、泥沼チックでシリアスモードなシナリオ。
純愛路線?、昼メロモード?
どっちでもイケそうだし、誰目線で観るかによって受け止め方が分かれそうな作風です。



想い続けるだけじゃ嫌と、妹の気持ちを知ったうえで一歩先駆けた琉実。
それは悪いことじゃないし、貫き通してもいいのにって思うけど・・。
でも、純への好意を抑えこんでお付き合いにピリオドを打つ。
それは、那織の気持ちもわかっていたからで・・。
う~ん、琉実は寅さんのようで、寅さんじゃないだよなぁ・・。
だって未練がありあり。すっかり恋敵の脇役ムーブになっちゃってます。

那織も、譲られたら譲られたで穏やかじゃないし、でも、いきなり据え膳を差し出されたみたいで、なんかフクザツ・・。
でも、純を好きな気持ちに嘘はつけず、晴れてお箸でお口直し。
それは、琉実の気持ちを差し置いたわけじゃないけれど・・。
う~ん、好いた相手に意中の人がいれば寅さんムーブ発動にはならないんだ。
こんなの洒落にもなりません。恋は双子で割り切れないってホントですし。

かくも女心は多元方程式でも解けなくて、小数点以下の桁数は底なし。実数、虚数、複素数も、突拍子なしにノートに出てくるってもの。
ましてや、3人は3歳にして机を同じくする距離感だったし、すり合わせも黙諾に済ませたり、曖昧に先送りできたりで、言うなら自由自在に阿吽の呼吸する間柄。

そんなふうだから、もしかして純は、無意識のうちに先読みする癖がついて、オベンキョウにもリーダーシップにも勤しんだってことなのかなぁ。
でも、思春期の指南書も、恋の経験値のあげ方も、机上の空論、頭上の妄想では検証のしようもないから、とりあえず言われるままにやってみなくちゃ分からない。

で、やってみたところがこのクール。
まずは序章ってことで、なんだか次回を乞うご期待って感じで終わりました。
だってそうでも思わなきゃ、ダブルびんたの意味がないし、先だって見えません。
なんなら女同士の取っ組み合いはともかく、好きな男の頬に手を出させる純の振る舞いのほうが、男どころか人間としてどうかと思ってしまいます。



世界には、双子と双子とが結ばれるニュースもありますが、双子と一人っ子はどだい無理がある設定。
はてさて、琉実と那織、どちらかがフーテンになるか、それとも両者とも徒花となるか、リアルな結論を追いかけるならあまり夢がなさそうな気がします。

「親ごころ、子知らず」ならぬ、「子ども心、親知らず」なシチュエーション。デリカシーのかけらもない親ばか丸出しってこのこと・・。
それだけ現代恋愛事情に、硬直性や単一性ではない、多様性と選択肢が増えてきているということでしょうか。
情を足しても理屈を掛けても、どうにも割り切れない時代、これ以上引きようのない状況に陥ってきている。
そんなお話なのかもしれませんね。

投稿 : 2024/11/13
閲覧 : 101
サンキュー:

6

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