芝生まじりの丘 さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観たい
ダークヒーロー的ストーリーを基調とした変奏曲
話は概ね3編にわかれている。
1編目は6話まででこれは人間社会の中で残虐な力を持つ融合体として覚醒した者が翻弄されていく話。日常生活が優勢であるなかに融合体という魔の力が波紋を呼ぶような話の作りで、ローファンタジー、あるいは伝奇的である。イメージとしてはクラシックな吸血鬼譚に似ている。
2編目は7話から12話あたりまででこれははじめは前編同様の伝奇的ストーリーに始まるが途中から変転して組織や日常は崩壊し極限状態からの脱出を基調としたパニック映画的な展開を迎える。
3編目は大雑把に言えば13話から24話で、ここで話の規模が大きく拡大される。これまでの一つの街規模の争いから一段階インフレーションし、国家規模の争いとなる。そして、それまでの登場人物の総力戦の様相を呈する。
特撮はあまり見ていないのだが、特撮からの文脈もあるかもしれない。仮面ライダーが悪の組織に改造された人間である、というのに似た設定を持つ。戦闘の見せ方にしてもなんとなく特撮っぽい感じの印象を与える。全体的にテーマが陳腐めいているのも特撮的な雰囲気を残している気がする。
作品の優れた点としては暗い雰囲気で淡々とロジカルにストーリーを組み上げている点でこの点やはり虚淵作品らしいところである。
アニメ作品ではもっと個人やいちシーンを大切にすることが多い中こういうストーリーテリングは独特である。
救いのないシリアスな雰囲気も昨今のアニメ作品では珍しい感じを与えてくれる。
一方で劣った点としてはストーリーが淡々としていて何かもっと深みを作れるべきところを素通りしている点がある。物語が複数軸になっており、それぞれがあまり盛り上がりにかけるのがやや残念。ヘルマン、ゲルドに関しては人間像に深掘りができていたが、ジョゼフやザーギンについてはあまりそれがなかった。せっかく序盤で丁寧に掘り下げたヘルマンやゲルドについてが後半あまり重視されないのは勿体無い気がした。
合理的に作品造形されているだけに、キャラクターの死などもわかりやすすぎて特に感興もない気がした。親しきものの手で親しきものを殺すことが大きな悲劇的情感をもたらすとアリストテレスは述べたが、ジョゼフ・サーシャ・ザーギンの三者の死も恐ろしく淡々と進み、そのような情感はもたらされなかった。
エピローグがひどいという評があったが確かにあまり意図のわからないとってつけたようなエピローグであった。
とはいえ、「弱者」と「悪人」は紙一重であるつまり弱者を救済したいなら「悪人を救済しなければならない」というテーマは個人的に共感できるものであったし、特に前半、中盤のストーリーはアニメ界隈ではあまり扱われにくいジャンルを攻めている気がしてよかった。
アニメはかなり狭いジャンルしか扱わない気がしており、もっと足を伸ばしていいのになと思う。