香風智乃ニ号 さんの感想・評価
3.7
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 2.5
音楽 : 4.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
圧倒的なアニメーション
何度も描かれる鳥の大群・画面全体を舞う紙・崩壊する世界・キャラクターの所作の全てが素晴らしいとしか言いようのない圧巻の手書きアニメで描かれています。
製作に6年半も掛かったと聞き一体何に費やしたのかと思ってましたが作画ですねこれは。
もののけ姫・千と千尋に次ぐ迫力の描写だと思いました。これらに比べると物語の規模は小さいですけど。
宮崎駿監督最後のジブリ作品として画作りに関しては一切手を抜かず全力を出し切ったことが伝わってきました。
過去作に似たシーンがあるという口コミをよく見ていたんですが、確かに…主にキャラはもののけ姫と千と千尋から移植してきたようなデザインや服装が多かったかなと思います。しかしあくまで雰囲気くらいで、あまり気になりませんでした。
物語については、母親の死を受け入れられないまま新しい母親が出来てしまった少年が、異世界で母親と出会い(昔迷い込んでしまった時の姿で?)しかし夢のような世界で母と過ごすことより苦痛のある現実に戻ることを選ぶ物語…一回観ただけですがこんな印象です。
少年の心情の変化を無視すると少年と義母と婆が神隠しにあったけど全員無事に戻ってきて2年滞在したあと東京に戻っていきました。で一体何の話だったんだ!って感想にもなり得ます。
突然辛い現実が襲ってきた後も君たちはどう生きていくのか。受け入れず逃避するのか、向き合うのか、というお話だったのかなと思いました。
物語は置いておいてもスタジオジブリ圧巻の作画なので観て損はないと思います。
メイキングや主要スタッフのインタビューを見てみると今作は宮崎さんより作画監督の本田雄さんの手がかなり加えられているようです。
マロさんの原画をそのままでよしとする宮崎さん、だが本田さんは納得できず結局直す形で宮崎さんが折れる。
数日、もしくは数週間もずっと最後の1カットの原画を描けず悩んでいた宮崎さん、しかしある時机を片付け始め撮影スタッフが問いかけると山下明彦さんが宮崎さんが何日も描けなかった1カットの原画をすぐにやってしまったと。
これはショックですね。悩んだ末に結局答えを見つけられないまま他人に託して敗北したままで終わってしまう。こんな宮崎駿の姿が今までありましたか?
宮崎駿という天才アニメーターはここで終わりなのかもしれません。悲しいですが老いには勝てなかった。スタッフのインタビューでも描く速度も落ちて集中できる時間も減っていたようです。実際映像でも席を立ってばかりでした。
しかしこの作品でも監督は自ら鉛筆を握り大量の修正や、原画をやっているようなので絵コンテだけというわけではなく宮崎作品なのは間違いありません。
エフェクトがバチバチしているところ等ジブリっぽくないなと思ってたんですが、これはエヴァだったんですね(笑)