STONE さんの感想・評価
3.0
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
とりあえず簡単な感想
ゲームはやったことなし。
過去、バンドもののレビューには何度か書いたけど、若い頃にかなり力を入れてバンドを
やっていたこともあって、いわゆるバンドものは大好物。
ただ、バンドリ関係に関して、最近は敬遠気味。
その理由の一つが当初のコンセプトであるキャスティングされた声優が楽器も演奏すると
いったものが、次第に演技より楽器演奏が重視されていったように感じられたこと。
実際に中の人がライブもやるビジネスモデルなら、それが正解だと思うが、アニメ作品を
視聴するだけの身としては中の人が演奏するしないはあまり関係ないことで、全体的な演技力の
低下が気になっていた。
そんなわけでテレビ放映時にはスルーしていたが、「面白い」という評判を聞いて
視聴してみたら、これがかなり良かった。
話は「CRYCHIC」というバンドの解散と、そこから始まる「MyGO!!!!!」としての活動に
至る崩壊と再生の物語だが、この過程がかなり鬱的要素の強いもの。
これまでのバンドリ作品でも鬱的要素はあったが、ここまで深刻かつ前面に押し出した
ものではなかったため、本作はバンドリ作品の中では異色な印象。
主要キャラの生々しい感情も顕になるが、展開が展開だけに負の感情などもかなり
見せてくれたりする。
メディアミックス作品はキャラや中の人が嫌われないようにあまりマイナス要素を出したり
しないものだが、「よくぞここまでやってくれた」という感じ。
こういう主要キャラの人間性剥き出しのぶつかり合いやすれ違いなどがとにかく面白い。
途中「MyGO!!!!!」(命名前だけど)が完全崩壊することで「どうなることか」と思ったが、
ここで動いたのが主人公の高松 燈。
今までは回りに流されていただけだったのが、ここからは主人公の面目躍如といった感じ。
燈が歌詞で自分の思いを伝えようとするが、よくよく考えてみると今までは燈が自身の
気持ちをノートに書いていただけのものを、豊川 祥子や千早 愛音が歌詞だと思い込んで
いただけで、ノートに書き連ねた言葉を自身が歌詞と認識することで、燈の思いが外に
向かうようになる変化の描き方は上手い。
ここから燈の単独ライブが始まるが、それを支えることになるのがギタリストの要 楽奈で、
彼女の演奏が燈の歌詞をよりエモーショナルなものにしている。
この演奏は即興でやっているようで楽奈のギタリストとしての腕前もうまいこと見せている。
ニューヨークパンクの草分け的存在であるパティ・スミスは当初ギタリストの演奏を
バックにした詩の朗読から始まり、次第にメンバーが増えバンドになっていくが、燈の行動はこの
エピソードを思い出させる。
この燈のライブは再び5人でのステージに繋がっていく。
この5人の唐突なライブは、互いにメンバーだけは見ていて観客無視だし、「そもそも
いきなりでこううまく合わせるのは無理だろう」と細かいツッコミは多々あるが、やっと心が
通じ合った感動の前にはどうでもいいかなと。
互いに悪態をつきながらも、ようやく本当のバンドになれたのかなと。
過去のバンドリ作品のキャラやバンドが登場したり、会話に出てきたりするのは、本作も他の
バンドリ作品と同じ世界で繋がっていることが分かるし、ファンサービス的にも嬉しいところ。
ただ、あまり本筋には絡まず、カメオ出演程度に留まっていたが、本作が他のバンドリ作品と
雰囲気が異なることを考えると、「これぐらいの関わり方が良かったのかな」という感じ。
異なると言えば、「MyGO!!!!!」の音楽性もこれまでのバンドリのバンドとは異質な印象。
これまで登場したバンドはハードなものにしろ、ソフトなものにしろ、華やかな印象が
あったのだが、「MyGO!!!!!」はもっと素朴な感じ。
キーボードがいないというのもそう感じさせる理由の一つかも。
冒頭から謎だった祥子の「CRYCHIC」脱退の謎が最後の最後で明らかになり、そのまま
「Ave Mujica」結成のストーリーに繋がっていく。
「Ave Mujica」に関して、現時点では打算的に繋がったバンドの印象だが、これが
メンバーの繋がりができるようになるまでを次作で描くのかな。
それ自体は楽しみではあるが、一人の発起人がメンバーをかき集めてバンド結成に至る形は
「RAISE A SUILEN」を、ゴシック要素のある音楽性は「Roselia」を思わせるなど、既出感が
あるのはちょっと気になるところではあるが。
2024/10/27