ぴかちゅう さんの感想・評価
3.8
物語 : 3.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 3.0
状態:観終わった
後半の展開には納得いかず
アニメのランキングなどでも上位常連であり、死後の世界の高校生活というセッティングにも惹かれ、ずっと見たいと思っていた作品をようやく視聴しました。OPはアニメーション含め、素晴らしいと思います。1話をはじめ、特に前半部分は、「涼宮ハルヒの憂鬱」の影響がかなり見て取れる作品です。野球とか。しかし1話の食券トルネードを視聴して、こんな感じの作品なのかなーと思ったところに2話がきて、重たかったです。とりあえず2話が一番辛い回だったので、これより辛い話は出てこなくてよかったです。
理不尽な人生を送らざるをえなかった登場人物たちが、そういった人生を与えた神に抗うために、戦っている、という設定は魅力的です。しかし、神がいるのなら、なぜ辛く苦しい人生を送る人がいるのか、というのは古今東西、議論されてきた問題であり、この問題に納得いく回答を示すことは難しいです。だから、こういった設定をした時点で、終わり方は難しかったとは思います。しかし、他方で、こういった大きな問題に正面から取り組んだアニメにおいてどのように作品を終えるのか、はそのアニメの評価にとって非常に大事な部分です。この点において、正直、後半の展開と最終話は違う展開にしたほうがよかったのではないか、というふうに思わざるをえませんでした。具体的には、以下の点に不満が残りました。なお、アニメ視聴13話のみで、特別編、他の関連情報やアニメで明示されなかった背景などについての知識はない状況での記述ですので、ご理解ください。
卒業式シーンが冗長だし蛇足だなぁ、といった不満もありますが、より重要な不満点は以下の二点です。
まず、音無が提示したもう一つの選択肢、というのは、結局、この死後高校生活世界を作り出した存在の意図として想像されていることと、たいして変わりはありません。この世界は、理不尽な人生を送った少年少女が転生する場所であり、いわば、その補償として、ここで楽しい学園生活を満喫してから人生を終えてね、というのが神の意図だと想像されています。その神にたいして、補償ではなく説明責任を求めている、というのが本作の構図のはずで、音無の選択肢は、単に神の意図に従って満喫すればよい、と言っているのとたいして違いはありません。理不尽さとそれに対する説明責任の問題は、一切素通りした選択肢になっていて、私には全く説得力がありませんでした。
それから、一番最後の場面で、音無のような人物とかなでのような人物が、現実世界と思われる場所で交差していますが、これはあまりにも安易なエンディングだと思いました。そもそも、この世界から消えたら死ぬという前提があり、かつ来世はミジンコかもしれない、という話をしていたわけですし、少なくとも、同じような人物に生まれ変わることは想定されていないはずです。悲しいエンディングで終えたくないという視聴者に対する救済策としてはあまりに安易だと思いました。
では、どういったエンディングなら私が納得できたのか、できるだけ本作の基本的設定を残した上で、私が、このエンディングなら、この後半・最終話よりは納得できるかな、と感じる終わり方を3つ考えてみました。
①天使が普通の人間だと分かったため、神との対決は振り出しに戻ってしまった感はあるのですが、だからといって、神との対決を諦める必要はありません。特に、この高校生活の創作者(神)は、短期での他世界への移動を前提にしているのは間違いないでしょうから、神の意図に抗って、この高校生活をいつまでも続けながら、神の手がかりを探し続けるというのは一つの抵抗の仕方だと思います。ここに長く留まること自体が、神の意図への抗いだともいえるわけです。俺たたエンドではありますが、このエンディングだと、本作の基本設定を変更する必要はありません。
②実は、この世界の創作者はかなでであり、かなでは、音無の亡くなった妹だった、というエンディング。最終話で、かなでは音無の心臓を移植先であることが明らかにされており、そこを変更することになりますが、それ以外は変更不要なエンディングです。本作の設定を前提にすると、時系列的に、音無より後に死亡しているはずのかなでがこの世界を創作したとするのは無理があると思うのですが、音無の妹であれば、時系列問題は発生しません。妹が音無に「ありがとう」というために作った世界、ということであれば、結構感動的な終わり方になったかな、と思いました。ゆりっぺなど他の登場人物がなぜこの世界にいるのか、は説明しづらいですが。
③実は登場人物たちは死んでおらず、臨死体験中であり、「消えた」仲間は現実世界に戻っている、というエンディング。かなでが音無の心臓移植先であることによって音無の死が確定しているため、本作についてのこの解釈は不可能ですが、その要素を外せば、このエンディングは十分可能だと思います。このエンディングであれば、最後の現実世界での交差も違和感はありません。現実世界に戻るので、これまで辛い人生を歩んできた皆もまだまだこれから取り返せます。これは一番前向きだし説得力のあるエンディングだと思うのですが。
批判的、かつ長文のレビューになりましたが、しかしこれだけ色々なことを考えさせてくれる作品であり、カップルがいちゃいちゃしているだけの最近の作品群とは目指しているものが違う、ということは言えると思いました。