7でもない さんの感想・評価
3.0
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
タイトルなし
初見の印象はよくあるエロで釣る志の低い作品なのかなと思って何も期待しなかった。
しかしPVの「恥の多い異世界転生でした」が壺に入ってしまって、3回くらいゲラゲラ笑いながらPVを見返してしまった。なんだよこれ。ぐへへへ。これは見なくてはいけないと思い、結局最後まで見てしまった。
この作品はエロ釣り要素はあるし、少年漫画風なろう展開もあり、文なんたらレベル太宰パロにしか見えない部分もあるが、異世界のテンプレには収まらない。
例えば能登が出てくる、世界樹にたかる腐った欲深い村人回では、バーテンダー能登がいきなり艶美な踊りをして何を見せられてるのか悩んだが、実は作者は川端康成の伊勢の踊り子要素を取り入れたらしい。
そう、そしてその8話あたりがこのアニメのターニングポイントになっていたようだ。ただ勧善懲悪やなろうサクセスストーリーに収らない善悪や幸せを問う話が提供される。
例えば「車椅子だった男が転生して悪をほろぼす圧倒的な力と孤児院からの賞賛を得たエピソード」や、「親にいびられてた不幸な姉妹のエピソード」では異世界で暮らせばいいじゃないと思った視聴者も少なからずいたと思う。
しかし作者は車椅子の男は力や異世界でちやほやされる事がその男にとって救済にはならない、辛い現実に帰って少年に謝罪するのが彼にとって一番大切な事なのだと説く。
後者でお互いを呪いあいバラバラになってしまった不幸な姉妹の話だが、彼女たちは異世界に残る事もできた。それでも彼女たちはDV親が待つ苛酷な現実現実に帰る。なぜなら彼女たちが一番求めているのはお互いへの絆と二人の時間で、それさえあれば他は何もいらないから。
なろうらしからぬ辛口で考えさせられる物語だった。
しかしこの作品で一番面白いと思ったのは作品感想スレでだべってる時にエロトークに混じってアノニマスの太宰治の評価を読んだ時だ。
「正直Osamu Dazaiが特別突出した人物だとは思えない。むしろ彼は西洋文学に出会い、卑屈なペシミストになっているだけだ」という冒涜に近い発言に、高校の時太宰の本でネガティブで陶酔的な読書感想文を書いた自分としては頭に血が昇ってかーーーーっとなったが、しかししばらくゲームして気分を落ち着かせ、30分後に再考してみた時、合ってるか間違っているかはともかく、なるほど、そういう考え方もできるのだな、価値観が固定してしまってる日本では中々でてこない意見だと痛感させられた。
初見
2024/07