「機動戦士ΖガンダムII A New Translation -恋人たち-(アニメ映画)」

総合得点
60.9
感想・評価
109
棚に入れた
708
ランキング
5675
★★★★☆ 3.5 (109)
物語
3.4
作画
3.3
声優
3.5
音楽
3.5
キャラ
3.6

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nyaro さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5
物語 : 3.5 作画 : 3.5 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

レコアとベルトーチカは男をどう見ている?強化人間の意味は?

 Zガンダムが女を使って男を描いている、ということが「恋人たち」の題名からわかると思います。戦争の展開そのものから言えば、決して出来は良くないZガンダムシリーズですが、なぜか心に残るのはヒューマンドラマの愛憎が濃厚だからでしょう。その愛憎を通じてシャア、カミーユ、シロッコ、カツ、ヘンケン、アムロ、ジェリドなどを描いていました。

 そして、結構1作目に比べて女性たちの新カットが増えていたのもその証拠かと思います。2作目のほうが1作目よりも話がまとまっている分、評価ができます。

 注目のレコア=ロンドですが、ここでシロッコと会うことではっきりシャアへの気持ちがはっきりするようです。食事の時の態度とメタスを貸してくれというシーンで顕著になりました。植物がうっとうしくなって掃除を始めたのがなぜか、ですよね。植物=地球=環境つまりはシャアの思想そのものです。それを捨てるということでしょう。単純に髪型かもしれませんが。キスのときにサングラスを外さないことで決定的に気持ちが離れます。


 今回の注目はサラですね。この子が今後レコアとの対比になりますが現状ではカツとの出会いですね。サラのシロッコへの傾倒は彼女の大人としての部分です。本作では出てきませんが、恐らくシロッコとの肉体関係もあったと思われます。
 しかし、それは欲望でも愛情でもなく、ある種の忠誠であり身をささげたという心理でしょう。一方で、少女としてのサラはカツに気持ちが少しだけ残ります。シロッコと全く違う感情で矛盾ではないです。両立する気持ちが上手く作品に描かれていると思います。

 サラが強化人間か確証があるセリフはないと思いますが、カミーユとNTと強化人間として少しだけ分かり合えているところもあるような気もしますが、それほど強化が進んでいないのでしょう。


 で、強化人間と言えば今回はフォウなんですけどね。この子ってシードディスティニーのステラとほとんど立ち位置が一緒だと思うんですけど、両作とも本当にわからないんですよね。ドラマのための要因にしか見えません。
 強化人間の悲哀はもちろんプルシリーズに繋がってゆくわけですけど、プル達ほど深い設定があるわけでもありません。

 NTが天然だとすると強化人間は人工です。その点で自然発生的に宇宙で必要のために生まれたNTと、地球で人工的に作られた強化人間。人工のコミュニケーション手段だからこそ人間性を失わせる…みたいな含意は感じられます。TV版Zガンダムの時期は、ポケベルが流行り出した時期と一致するようですので、コミュニケーションに対する批判はあったかもしれません。
 強化人間の問題を男女の問題に置き換えた…とくにNTと強化人間ですね。これはララアとの対比に見えなくはないですが、結局はどちらも悲劇なんですよね。

男女雇用機会均等法がやはり85年ですから、女が強くなる感じが「無理やり」だったと富野氏が感じている可能性はあります。戦闘に強くなること=経済・仕事にが強くなることが、強くなることではない、コミュニケーションの問題よりもそちらかもしれません。だから、強化人間って女ばっかり登場するのかな?アナザーガンダムでは違いますが。

 フォウはカミーユの精神の問題に繋がってゆくので、物語としてNTという概念に否定の要素がある気がするので、強化人間が特に悲劇しか迎えないのがZのテーマなのでしょう。なお、フォウはTV版に比べて格段に作画が良かったです。

 ベルトーチカですね。この子はわかりやすいレコアの対比ですね。まあ、私が全部レコアを基準にしてみているせいもあるんですけど。レコアがシャアとの決別を決意した理由がシャアへの依存が終わったとすれば、ベルトーチカは依存ではなく、選択あるいは見極めですよね。
 値踏みした直後に、抱き着いて涙を流せる。とりあえずキスしてみる。したたかな女の印象です。女であることに疑念を抱いているのに依存体質のレコアに対し、女であることを利用しつつ決して依存にならないで男を自らが選ぶ。

 シャアとアムロの違いも浮き彫りになります。2人とも自分大事人間ですけど、シャアは男から集める信頼と女から見る目が全然違います。そしてそれを見抜かれる。思想も環境と宇宙万歳で立派に見えますが人間を見ていません。マザコンでロリコンです。

 アムロは誰から見ても優秀だけど脆い。この脆さがいいんでしょうね。母性をくすぐるんだと思います。そこをベルトーチカには付け込まれた感はあります。ただ、その悩みが本物故に、フラウやセイラからの気持ちは本当になります。女とは気持ち的に孤独なシャアとは対照的でした。

 そう考えるとカミーユのファとフォウですね。ファとは幼い恋の延長でしょう。今はフォウですね。Zを見ていつも思うのがフォウとの恋愛は本当かどうかです。まあ、気持ちがつながるので本物ではあるのでしょうけど、過剰で濃密なコミュニケーションがあまりに狂っています。悲劇につながる、つながらないと、劇場版が作られた意味にもなってきます。なぜ、TVでは壊れたのか。NTを総括するのが目的ならここは考える必要があるでしょう。

 エマとヘンケンは相変わらず笑ってしまいます。


 それとTV版では環境問題についてのメッセージがありそれが逆シャアに繋がるわけですけど、劇場版はその雰囲気がありません。もちろん直接的にはダカールの件ですね。シャアの身分の件もありますし、この変更はかなり重大だと思います。これを3作目で描きたい故の劇場版でしょう。そして、ハマーンの登場です。

投稿 : 2024/10/01
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