鬼戦車 t89 さんの感想・評価
3.5
物語 : 3.0
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
結局、生徒会選挙がメインのラブコメ!Theラノベ展開が惜しい作品
最終話(12話)まで観ました。2024.09.21
ヒロインのアーリャさん、主人公の政近に対して1話から好感度マックス!ロシア語でデレます。カワイイ!
しかし、これだとあっという間にカップル成立で物語が終わってしまうので、恋の障壁プラス学園イベントとして生徒会選挙がグイグイ前に出てきます。
この生徒会選挙がTheラノベな感じです。原作者は、アーリャをプライドの高い、気高い女性に設定した様ですが、そうなると、金持ち進学校のエリート女子属性を付与せざるを得ません。低能で貧乏なのにプライドが高い様な女は単なるメンヘラです。
また、生徒会も大豪院邪鬼が支配している様な底辺校では、必死で生徒会長の座を目指す必然性も無いので、やはりエリート高校の生徒会である必要があります。
そして、実に学園ラノベっぽい世界が展開します。部活だと体育会系、文化系問わずキャラも沢山必要だし、試合シーンや発表会とかも描写しないといけませんが、生徒会を出しておけば、生徒会室という狭い範囲で話が完結する上に、キャラの数も制限出来、選挙をめぐる権謀術策も描かけるため舞台装置として非常に優秀です。
本来だったら、アーリャさんを掘り下げてヒロインの魅力を前面に出したラブコメにしたいところですが、ロシア語でデレる出落ちのハーフ美少女以上のキャラ付けに成功していません。アーリャさん、可愛さ以外の特徴は勉強が出来るだけです。
これは、単純にアーリャさんがロシア人とのハーフだから生じる問題です。ロシア人のエリートお嬢様キャラ設定は、実はとても難しいのです。
なぜかと言うと、ロマノフ王朝が革命で倒れて以降、度重なる社会的混乱や粛清の嵐で、エリート層が入れ代わっているからです。
イギリス人だったら貴族やブルジョワ、アメリカ人なら実業家や法曹関係、日本人なら旧華族、財閥系とか、戦争等で社会が混乱した際に没落したと言っても、支配階級がそれ程動揺していないので、良家(エリート層)のお嬢様を設定しやすいです。
しかし、ロシアは違います。ロシア革命で王朝を支えていた貴族や富農は皆殺し、革命で活躍して勢力を伸長した赤軍の軍人や知識人も、スターリンの粛清で皆殺し、独ソ戦の戦功で確立した共産党貴族のノーメンクラツーラも一党独裁が終了した際に没落、混乱の中、マフィアがブイブイ言わせてましたがプーチン政権下で弾圧されて現在はオリガルヒの天下…。
結局、時の政権に気に入られた連中が常に支配階級なので、日本人が納得出来ると形でロシアお嬢様をキャラとして設定するのは無理があります。
さすがに、アーリャさんの曾祖母が独ソ戦の英雄、ファシスト500人殺しのリュドミラ・パブリシェンコだとか、パパが元カーゲーベー上がりのマフィアとかでは、ちょっとラブコメのキャラでは無いですね。そもそも何でアーリャパパは日本人と結婚してんだって話にもなります。
亡命してきた反革命派白系ロシア人の子孫とかも、背景がヘビー過ぎますね。
ロシア語デレハーフ美少女という設定を守るため、今まで散々他のアニメで繰り返されてきた生徒会選挙戦を前面に出さないといけないのは、本作品が宿痾的に抱える構造的な問題として納得するしか無い様です。
さらに、政近アゲのために、アーリャさんが無能に見えると言う…。何か雑音が多いなぁ…。
キャラは可愛いし、アニメとしての品質も悪くないので、観ていてとても面白かったですが、前述の様に制約も多く、何か乗り切れない感じなのが、とても残念です。なかなか覇権アニメの道は厳しいです。