「ミューン 月の守護者の伝説(アニメ映画)」

総合得点
計測不能
感想・評価
6
棚に入れた
12
ランキング
7831
★★★★☆ 3.8 (6)
物語
3.7
作画
3.9
声優
4.0
音楽
3.8
キャラ
3.8

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ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 3.5 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

文字通り月を掴み取る奇想天外なフランス映画

【物語 3.5点】
シナリオ自体は良くも悪くも王道。
臆病な森の子・ミューンが旅の中で、
月の守護者としての使命に目覚めて一皮むけていく、
典型的なファンタジー冒険譚。

海外ファンタジー映画でありがちな、
(※核心的ネタバレ){netabare} 死んだと思ったヒロインが生き返る{/netabare} クライマックスは、
私はあまり好きではないので0.5点の減点要因となりましたが。


見どころは圧倒的かつ独創的な世界観。

この惑星では、元々、真っ暗で何もなかったが、
力持ちが太陽を引っ張って来て、光に包まれた昼と生命を育み、
異次元の夢の世界から月が引っ張り込まれ、夜と夢を育む。

太陽と月は聖獣と呼ばれる超巨大生物の“神殿”がくくりつけて管理。
二体の巨大聖獣が、各々、星の対極でノッシノッシと闊歩して、太陽と月を“輸送”して、
昼と夜をバランス良く供給している。

天動説ともまた違う、天体アドバルーン説?が超展開。
太陽も月もバルーンサイズの光体である以上、
掴み取って入手することも可能。

月の守護者ミューンの自己肯定感の無さなど未熟さから月は夢の世界へと喪失し、
太陽が冥界の王に太陽が盗み出されることで物語は動き出します。
奪われた昼夜を取り戻すことが今回の冒険の主目的。

サムネにもある「ツキも自信もありません。」とのキャッチコピーがオヤジギャグな?
ポスターにて、主人公ミューンが青い月を抱きかかえているビジュアルがあって。
これ、よくできたイメージ画像だな~と思っていたら、
実際、本編にこういう構図のカットがあって度肝を抜かれます。


ヘボヤン、フィリポン両監督は、制作の際、
作品ごとに神話を創造する宮崎駿監督や、
主人公視点でキャラをスクリーン中に躍動させる細田守監督から、
大いにインスピレーションを得たとのことですが。

アドバルーンな太陽と月なんて発想は日本人にはまず浮かばないでしょう。
地動説が、天動説の上に立脚した神の教義を脅かすとの警戒と分断の歴史を抱えた、
欧米文化圏じゃないと出てこない神話だと思いました。
(余談ですが、秋アニメの『チ。―地球の運動について―』楽しみです。)

私が物語が案外フツーだなと感じたのは、
右脳がバグりそうになるくらいのイマジネーション溢れる世界観を浴びて、
左脳が物語を咀嚼するだけの余力が残っていなかったからかも?
それくらい受け手の想像力を消耗するアニメーションだったとの余韻が、
劇場鑑賞から2年経った今でも残っています。


【作画 4.5点】
上記の神話、世界観を描写する美術を背景に、
はつらつと動き回るミューンらのキャラクターは基本3DCG制作。
デフォルメや人物の動きは、リアクション、ジョークのツボも含めて如何にも欧米アニメで、
『ミニヨン』とか苦手な人はダメかもしれません。

が、一方で、日本アニメなどセルルックや、往年の手描き制作へのオマージュ精神も旺盛な本作は、
CGにも手描きタッチの主線を加えるなど、
新旧の良さを織り交ぜたアニメーションを追求。

神話を語るシーンや、夢の世界の描写では2Dセルルックの画面も展開され、
主線の荒々しいかすれ線が演出する躍動感には、
前世紀のバトルアニメのような懐かしさも感じます。


ヒロイン・グリムは蝋で出来ていて、昼の日光で溶けて、夜の寒風で固まる設定。
カロリー消費の激しいキャラ描写も丹念で、手間がかかっているな~と感心します。


【キャラ 4.0点】
ワンパクないたずら小僧だが、優しく小心物で、
なかなか勇気を持って使命を果たす冒険に向き合えない主人公の森の子・ミューン。

ヒロイン・グリムは好奇心旺盛で、結構図太いが、
何せ蝋の身体というハンデが重しに。
溶解、凝固のリスクを恐れる親父からは外出を止められて親子喧嘩しちゃいますし。
親父さん{netabare} 肝心な時にずっと凝固してましたねw{/netabare}

琥珀の頑強な肉体を持ち、自信過剰な太陽の守護者候補・ソホーンは、
もう少し柔らかくなることも覚えた方が良いプレイボーイ。


三者三様に欠点を抱えたメインキャラが、
凸凹と絡んで、補いながら使命を果たしていくことで、
多様性も意識させる性格設定は定番のキャラ構成。

が、人間が一人も出てこない生態系は刺激的かつ、
その生物的特徴は、性格を強調する上でも有用でした。


【声優 4.0点】
※日本語吹替版を鑑賞。

主演・ミューン役には『アイカツ』声優でもある大橋 彩香さんの少年ボイス。
太陽の守護者・ソホーン役には小野 友樹さんのナルシストボイス。
とメインを声優陣で固める吹替布陣で異国制作のキャラクターを伝達する上々の吹替。

ヒロイン・グリム役の武藤 志織さん。
モデルでも通用するルックスを誇り、
出てきそうで出てこない女性声優のまま最近見かけなくなった?
と気になってSNSで近況を探ってみた所、
現在は舞台脚本家・女優として劇団グループの主催もされているとのことで。
グリムのキャラクター以上に好奇心の赴くまま、
自由にマルチな才能を使っているなと羨ましく思います。

最近の武藤さんのSNS投稿「脳みそが5つ欲しいです」
入手のあかつきには、私にも1つくらい分けて下さいw


【音楽 4.5点】
劇伴担当はブリュノ・クレ氏。
『ウルフウォーカー』では繊細な民族音楽による世界観演出が目立っていましたが、
本作では壮大なオーケストラで、文字通り月と太陽を振り回すスケール感を下支え。

日本語吹替版の主題歌には中国のシンガーソングライターJulieに
「Resucue me 」を日本語歌唱させるインターナショナルな起用。

2015年の東京アニメアワードフェスティバル・長編アニメーション優秀賞受賞から、
日本劇場公開まで7年を費やしている本企画。
良作であっても、海洋を超えるプロジェクトはひと筋縄ではいかない。
主題歌アーティスト選定にも色々と苦労もあったのだろうかと穿ってみたり。

投稿 : 2024/09/18
閲覧 : 28
サンキュー:

7

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