とまと子 さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
風吹く丘 すみれの花
ヴァイオレットにはふたつの物語があります
ひとつは陰惨な戦争のさなか 戦場でのこと
もうひとつは平和が訪れた日常でのことです
彼女のこころは戦争の中にかたち作られ
つぼみも付けないうちに すみれの名を与えられました
でもそれは戦場の風に吹かれるにはあまりに小さくて
あまりに可憐な花の名前です
名付けた人の願いはあまりに美しく
彼女は傷つき こころを失くします
そして彼女は自分にはない こころ を届ける仕事を得
ひとの気持ちを書物のように 知識のように知っていきます
気持ち、心、想い、 ”愛してる”
彼女はそれらを言葉にして 誰かに伝えることができるようになります
彼女は感謝され 讃えられ 認められますが
それを彼女は自分のものではない と言います
それらは自分にはない「聞いて知ったこと」だと
そしてそれらの意味を知りたいのだと 言います
でも彼女が本当に知らないのは
その言葉の意味するものは 彼女の中にある
誰かを求めてやまない 強い強い衝動のことだ ということです
彼女はそのひとに会いたい
会って抱きしめてもらいたい
でも彼女自身のその「幸せになりたい」という願いを
許すことができず 言葉にすることができず
だからその衝動を名付けることができないのです
その想いこそが ”愛してる” だと
彼女は花として 手紙という種を蒔き続けます
やがてそれらは芽吹き 花開き 繋がり 広がっていきます
どの種も最初は土に落ち 雨に打たれ 泥に塗れ
土のなかを闇雲に根を伸ばし その間は空を知りません
彼女自身の 花は咲いているでしょうか
紫色のすみれの花 永遠の花園で