とまと子 さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
イザベラ
その娘の名はイザベラ・ヨーク
誇り高き名門ヨーク家の娘
全寮制女子校に閉じ込められた”深窓の令嬢”
そのドールの名はヴァイオレット・エヴァーガーデン
訓練を重ねた自動手記人形
通常では請け負わない”上流社会への教育係”
ふたりの少女はそれぞれの「契約」に従い
社交界デビューの準備を始めます
彼女たちははそれぞれに 何もない場所で育ち
拠り所のない 知らない世界に投げ込まれたまま
胸に空白を抱えて 生きていこうとしています
時間的には、本編TVシリーズのあと
劇場版に至る前の日々でのお話しです
この時にはヴァイオレットはもう立派に有能な職業婦人
他人の気持ちもかなり推し量れるようになり
ただ自分の心を語る言葉だけは 未だにほとんど持っていません
{netabare} ヴァイオレットは嘘を言いません
”嘘の意味”すら 理解していません
そのことは、”嘘を嘘として語る”ことを求められ
”ありのままの姿”は隠されるべきとされる世界にあって
固く閉ざされていたイザベラの心を開かせるには充分だったと思います
イザベラはヴァイオレットに”近さ”を見出し
そして同時に”憧れ”も感じたのではないでしょうか
ヴァイオレットのあまりの美しさには
わたしもドキドキしてしまいました…♡ {/netabare}
このエピソードでは
ヴァイオレットは お話の中盤ころになって
やっと本来の手紙代筆の仕事をします
そしてその手紙が繋ぐように 後半の新しい物語が語られていきます
その人とのことを思い出すだけで
元気になれたり 希望がよみがえったり
心細さが消えてしまうような
この映画は、そういう人への想いの
…”誰かにとっての そういう人になりたい”という想いの…
物語へと広がっていきます
この映画の主人公は ヴァイオレットではありません
ヴァイオレットと彼女の手紙が繋ぐ 様々なひとびとの想いが交差する物語です
「絵の演技」がどの一コマを切り取っても素晴らしいこのシリーズですが
中でも今回の主役のひとり イザベラについては ”ひとの演技を超えている”とすらいえると思います
表情の繊細な陰影、動きや佇まいが、彼女の 愛情や怒り、諦めや夢 のすべてを語り
「女優の品格」を感じさせるほどです
画面いっぱいに描かれた世界は信じられないほど美しく
優しく温かくて 何度でも観るに値する映画だと思います