とまと子 さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
私の心の王子サマ
山田はモデルもやってる超美少女の陽キャ女子。
市川は休み時間にもひとりで本を読んでる陰キャ男子。
こういうふたりのラブコメって設定だけなら割とある感じなので、きっとお話し全体は男子視点で、ギャップ萌えしたりツンデレったり、でもちょっと変わってるのは男の子の方が”殺人妄想をもてあますヤバいやつ”っていう設定だから、その辺ちょっと新しい感じなのかな…
…くらいに思って見始めました。
でも観始めればすぐに感じたのは、高木さんを作ったシンエイ動画らしい柔らかくて明るい感じ。
あー っていうことはこれはお互いの勘違いギャグみたいなのを手を変え品を変え…みたいに繰り返す感じなのかな…
…とも思ったのですが、
でもこれ、それとも全然違いました。
これ、実はものっすごくピュアな「THE 少女漫画」なんですね!
原作漫画は、絵柄は少年漫画っぽい勢いある感じで、下ネタも容赦なく露骨すぎるくらいなんですが、物語の方は実はすごく繊細につづらていて、軽く読み飛ばしてしまうと見落としてしまうような細かいニュアンスや伏線があちこちに隠されていています。
そして何よりこれが少女漫画だな…って感じるのは(そのあたりはずっとぼんやりと曖昧なままお話は進んでいきますが)これが「市川が山田を見つけた物語」というよりも「山田が市川を見つけた物語」なのかも…?という描写があちこちにあるところです。
市川は”山田に近づこう”とか、”山田を守ってあげよう”とかしているわけではなくて、ただひたすらに”山田のことを知ろう”としています。
市川にとって”山田のことを知る”というのはどういうことか?というと(ここが市川がめちゃめちゃイケメンであるところなんですが)”山田自身がどうしたいと思っているかを知る”ということです。
市川は勝手に”山田にこうあって欲しい”と押し付けてしまえるほど自己中ではないし、”山田はこうあるべきだ”と決めつけられるほど愚かでもありません。
ただ山田が望むことを実現させたいと思っている。
山田のほんとうの想いに寄り添って、応援したいと思っている。
{netabare} 市川が恋を自覚した保健室のシーンで市川が流した涙は、山田を可哀想に思った同情の涙ではなくて、山田の願いや望みを自分のこととして感じて一緒に悔しがる涙です。{/netabare}
そんな人は滅多にいるものではありません。
そして、そんな市川が山田にとってただのモブであり続けるわけがありません…。
もしもそんな人がいてくれたとしたら、それは表面的に優しかったり笑わせてくれたりするような人よりも、黙って見てくれているような人の中にいるのかも…って思ったりもします。
ほんとうの”わたしの王子様”って、そういう人なのかもなぁ って、思ったりもします。