四ツ谷ミツル さんの感想・評価

4.8
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態：観終わった

百花繚乱・唐傘絵巻

実は去年から気になっていたので滑り込みで映画館に行かせて頂いた。
いやあ…非常に良かった。これは映画館で観る価値大いにありだ。

原作なんも知らない状態で見たが特に引っ掛かりもなかったので大奥の知識がふわっとでもあって、かつ細かいことを気にしなければ完全初見でも楽しめる。

さて作画についてだが、これもうマジで素晴らしかった。
浮世絵がアニメーションになった様な不思議な調和と質感だ。なんと言っても背景作画が素晴らしい。色鮮やかな動物や小物があしらわれた屏風や壁かと思いきや記された動物の目がギョロリと動いてこちらを見てくる。それを物ともしない登場人物達が世界の独自性に拍車をかけている。
良い香りは花が舞い、よく無い香りは花が萎れる。香りという4DXにでもしないと伝わらないのを視覚的に表現するのはアニメーションとして美しい。

凄く和を感じるアニメタッチだがセルルック調のCG達が上手いこと溶け込んでいて画面上では常に何かしらが動いていてマジで目が足りない。
唐傘と対峙するシーンはアニメーションの限界に挑んでいるのではないかってくらい全方位動くので製作陣の魂を感じた。
劇場の大画面で観る価値大いにありの豪華絢爛さだ。マジ映画館行って良かった。
また、怪異を扱ってはいるがびっくり描写はほとんど無い。ホラー要素で躊躇する必要は無いだろう。

声優陣も大変良くて、最初はこの和風タッチにアニメ声は浮いてるかもしれんと思ったが聴くごとにどんどん馴染んできた。何より叫びの演技が素晴らしい。
悠木碧さんの悲鳴はホントピカイチだし、アサが気迫を込めて声を張るシーンは迫力満点だ。
ゆかなさんの小姑っぷりも堂に入っていた。
声優陣も文句無しに素晴らしいと言えるだろう。主題歌も良かった。
…この流れで一つ言っておくとBGMは結構ボリュームのアップダウンが激しい。
上げるとこは結構爆音なので声優さんのセリフをたまに聴き逃した。まあ一個人の所感ではあるが。

ストーリーについてだが、
※ふわっとラストのネタバレあり※
初見からするとそこそこ難解ではあるがついていけないほどでは無い。大奥という特殊な環境で溜まる情念を雨や水で表現するのは鬱くしい。(誤字にあらず)
御水の正体が分かった時は鳥肌が立ったし、雨粒の独特な表現は最高である。
物語の本質としては、煩わしいと思っても友を無くすと心が渇く、乾けば唐傘に支配されると言うことだと解釈した。
真に大切な物は手離してはいけない。手離せば自身も気付かぬうちに心が乾いて疲弊する、とは中々深いことをおっしゃる。
その上でラストの離れ離れになる二人は最初アレ？と思ったがカメが手離した大切な簪とアサの簪の両方を持って大奥から出る事は"離れていても繋がっている"と言うことか。まあカメに大奥勤めは厳しいだろうから良かったのではなかろうか。良いラストだった。

以上だ。
結論を述べると映画館で観る価値大いにありの神作だ。もう一回映画館で見たくなったのは久しぶりだ。
エンドロールでクラファンの支援者御礼クレジットを見た時にこの作品は本当に多くのファンに支えられ、製作陣が熱意を持って応えた素晴らしい作品だと改めて思った。
(ちなみに鑑賞後気になってTV版モノノ怪をチラ見したのだが、アニメだけ知ってる方は是非とも映画を観ることをおすすめする。飛ぶぞ、豪華絢爛さに)