レトスぺマン さんの感想・評価
3.4
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
〇っぱいリロードも良いが…
00年代を中心に放送されたWOWOWアニメは1998~2003、2004~2008年の2期に分けることができ、夕方放送・深夜放送の違いはあれど今のオタク文化を作った立役者といえる番組群であった。
本作「グレネーダー」はそんなWOWOWアニメ2期の第一作という位置づけであり、キャラクター的にも当時隆盛し始めていた萌え系アニメを意識したものであることに間違いはない。
本作は、琉朱菜・弥次郎・みかんの3人が西部劇×戦国時代をベースとした世界を旅し、そこで発生するトラブルを乗り越えていくという、ロードムービーと萌えアニメを掛け合わせたような作品ではある。
しかし視聴してみると確かにおっぱいリロード(笑)といったある種強烈なインパクトを与える銃の撃ち方はあれど、根本の流れとしては人が持つ優しさや性善説といった物事を重視したストーリーとなっている。
これには、本作のシリーズ構成にパーマンやチンプイといった子供向けアニメを担当されてきた桶谷顕氏を迎え入れていることも要因と思えるが、私としてはストーリーから来るキャラクターが持つ安心感に惹かれた部分が多かったのである。
まず、本作の主人公である「琉朱菜」は不殺のガンマンではあるが、同時に「抱きしめる」という行為をもって敵の戦意を喪失させる戦いを得意としているキャラクターである。
初めて見たときは、この行為を萌えキャラ特有のちょっとエロイ行動として受け取ってしまったのだが、よく考えてみれば「母性」と「強さ」がないとこの行動は成り立たないわけだ。
だから、この2つを以っての安心感を表現している様が他の萌え系アニメと本作の違いであり、本作の良い点とはこれこそがキーになるのではないか?
まず、母性についていえばキャラクターが持つ特有の優しさであることは自明の理である。
問題は「強さ」のほうで、これは戦闘力だけで表現するという手もあるがそれだけでは「安心」を得る納得感に乏しい側面がある。
そこでキャラクターの表情や行動に着目してみると、琉朱菜の【喜怒哀楽】表現にものすごく良い意味でのクセがあることがわかった。
それはバトルアニメなのにもかかわらず、喜怒哀楽の「怒」が少なく「哀」が限りなく無いことであり、全編にわたってほぼ「喜」と「楽」だけで乗り切っているということである。
通常、アニメで主人公を張るキャラクターというのは【喜怒哀楽】や表情が豊かであることが多いが、本作はそれを逆手に取る形で、キャラクターの安心感をかなりのインパクトで視聴者に植え付けることに成功しているのである。
そして、この安心感は弥次郎やみかん、藍前鉄破といった琉朱菜を取り囲むキャラクターにいい作用を及ぼしている。
それは琉朱菜以外のキャラクターの大半が【喜怒哀楽】の激しい人物ばかりではあるのだが、【喜怒哀楽】が激しすぎると、どんなキャラクターでも子供っぽい部分が出やすくなってしまう一面がある。
それを「喜」と「楽」だけで進んでいく人物が優しく包み込むことで、周りのキャラクターが成長していく様も描いているわけだ。
これをストーリーの全編に渡り載せていくことで、視聴者の共感ボルテージも上がっていくし、ロードムービーという誰からも愛されやすい物語との掛け合わせもあることから、ただの萌えアニメとして分類されてしまうのは結構惜しいなぁと思えたところでもあった。
ただし、それは敵となる十天閃がすべて出なかったことや、ご都合主義展開がおおいこと。
そして、ストーリーは確かにわかりやすいものの、出てくるキャラクターに魅力を感じるかどうかということについては、視聴者各々によって異なってきてしまうものだ。
だから、上述したキャラクターの安心感や成長といったものが陳腐なものに見えてしまうと、どうしても評価は上がりづらくなってしまうため、すべての人に気軽に進められるかといえばそういうわけではない作品ではある。
ちなみに、原作版の琉朱菜はアニメ版よりもガサツな面が強調されているようで、こちらも機会があれば読んでみたい次第だ。