「Canvas2 虹色のスケッチ-キャンバスツー(TVアニメ動画)」

総合得点
60.3
感想・評価
128
棚に入れた
855
ランキング
5915
★★★★☆ 3.4 (128)
物語
3.3
作画
3.3
声優
3.4
音楽
3.3
キャラ
3.5

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ネタバレ

レトスぺマン さんの感想・評価

★★★★☆ 3.2
物語 : 2.5 作画 : 3.5 声優 : 4.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

最終回の直前までは本当に良かったのだが…

2005年といえばまだまだ「18禁ゲー原作アニメ」が多かった時代ではあるが、幅広い視聴者の範囲にまで有名となったもの、人知れず忘れさられた作品となってしまったものの二極化が激しい印象である。
その二極化の要因として、18禁ゲーを一般層にも受け入れられやすくするためのアレンジが上手いか下手かといった部分にありそうだが、
それだけで判断されてしまうのは違うとも思える。
つまり、評価の低い作品の中にある本来の良い部分を視聴者が見過ごしていることで、作品自体をすべてダメととらえてしまうのは早合点ではないかという話である。

さて、本作「canvas2~虹色のスケッチ~」は上記でいうところの「評価が低く人知れず忘れさられた作品」に属する認識を持つ人は多いかもしれない。
しかし、久々に視聴をするとかなり丁寧に作られている物語ではないかと個人的には感じた次第だ。
まず、本作は美術教師を目指している主人公浩樹とその従妹であるエリスとの恋愛模様がメインだが、それに加えて浩樹の幼馴染である霧との三角的関係といった、一筋縄ではいかない形の恋愛物語も展開される。
それに合わせてストーリーにはエリスの「赤い絵の具を使えない」トラウマを克服する流れがあり、物語の入り口をみるだけでも大きなドラマが展開される話になりそうなことがわかる。

これだけの要素を同時に展開するとなれば各物語へのバランスが中途半端になってしまう懸念もあるわけだ。
しかし、本作の良いところはこういった混乱を招かなかったことであり、物語の初期段階でも見て取れた。
それは2話~5話で各サブキャラクターが主役となる1話完結話のことであり、この4話はサブキャラクターが持つ悩みや小さなトラウマを解決していく話になっている。

つまり、この4話で今後どういう物語がベースとなって展開されていくかがわかり、エリスが持つトラウマが各サブキャラクターと比較してどれだけ大きいものなのかを印象付けることができるわけだ。
各サブキャラクターが持つ性格の良さはそのままエリスをサポートする形となって進み、登場人物への感情移入がしやすくなる良さもある。

そして、登場人物へ感情移入しながら見るストーリーとして思い浮かぶのは所謂「少女漫画」的なものであるが、本作に関してもそういったものを題材にしているのではないかと感じる節があった。
それは上述の通り恋愛や三角的関係で進んでいく物語に加えて、女性キャラクターが持つ「女性的な本質」がどれだけ現れているかというところなのだと思う。
一言に「女性的な本質」といっても様々ではあるが、大きく分けるのであれば2つあると思われる。
まず一つ目に女性が持つ母性からくる「圧倒的な優しさを持つ人物」であり、これは男性であれば誰もがイメージする女性に対しての理想像に近い。
もう一つは「自分勝手でわがままな性格を持つ人物」のことであり、「自分が一番でありたい」、あるいは「自分がお姫様でありたい」ことを強調する女性特有のめんどくさくネガティブな部分を示している。

波乱なストーリーが展開される少女漫画の面白いところとは、後者の要素が強くでたときに人間関係がギクシャクし、それによって男性が翻弄されるといったハラハラドキドキの展開である。
その後、男性がどのような選択肢を取っていくのかが見どころでもあるが、本作もそれに倣った物語が展開されていた。

また、浩樹の画家としてのライバルとなる柳に登場により浩樹を取りまく過去の因縁が判明し、なぜ浩樹が絵を描かなくなってしまったのかが示されるわけだが、この辺りの波乱が波乱を呼ぶ展開はまさに少女漫画的といった感じで物語にいい意味でのアクセントを加えていた。

しかし、ここで本作が救いだったのは三角的関係にしても過去の因縁にしても行き過ぎた波乱にはならなかったことではないだろうか?
女性キャラクターに関していえば、正反対の性格である霧とエリスでうまくバランスをとっていたようにも感じる。
それが特に現れたのは物語中盤となる運動会でのエピソードであり、この回を境にエリスも精神的に成長した印象だ。
また、柳に関しても彼のやったことはあまり許されることではないが最終的にはお互い和解し、浩樹が絵を描く目的を再度見い出すという後味の良いエピソードになっている。
メインストーリーの1つとして「エリスが自分のトラウマを克服する話」ではあるのだが、同時に「浩樹も自分のトラウマを克服する」形となり、両者に共通点を持たせていることも評価したいポイントだ。

さて、ここまで本作の良い部分を語ってみたが、本作は最後の最後で本当に残念な展開を迎えてしまうことになる。
それは、浩樹と霧との関係がエリスと比較して進んでいたのにも関わらず最終的にはエリスと結ばれる結果になったことである。
このような終幕になってしまった要因として、先述の「トラウマを克服したという共通点があるからこそ結ばれた」とも言い換えられそうだが、
それにしても最後の最後で悪い意味でのどんでん返しとなり、失望した視聴者多かったのではないかと思う。一言でまとめると実に惜しい作品であった。

投稿 : 2024/09/09
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