「君は放課後インソムニア(TVアニメ動画)」

総合得点
72.1
感想・評価
197
棚に入れた
607
ランキング
1193
★★★★☆ 3.6 (197)
物語
3.6
作画
3.7
声優
3.6
音楽
3.6
キャラ
3.6

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とまと子 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 4.5 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

ステラ・インソムニア・ノスタルジア

 
わたしが育ったところは端っこの外れの方とはいえ東京都内の住宅地だったので、いつも見上げる夜空は「満点の星空」ではありませんでした。
でもそのことを本当に知ったのは中学生の頃で、家族旅行の帰りにどこだったかは覚えていませんが山の中の道を父が運転する車で走っていた時です。
窓の外を見て母が急に騒ぎ出し、父が慌てて車を止め、乗っていた全員で外に出ました。
そこでわたしたちの上にあったのは、本当に空のすべてを埋め尽くすほどの星の光…本物の満天の星空でした。

おかしな言い方になってしまいますが、その時「天の川ってほんとにあるんだ」と思ったのを憶えています。
わたしはその頃はもうその天の川が地球もその中にいる銀河だということも、ひときわ明るく”キラキラ”なんていう表現を通り越してギラギラでピカピカに輝いている星々が地球と同じ太陽系の惑星たちだということも知っていました。

周りは真っ暗で、そこにいるのはわたし達家族3人だけ。
わたしはもちろんその夜空の美しさに大感動して飛び跳ねていたんですけど、でも同時に自分が地球というちっちゃな星の上にいて、そこを一歩でも外に出てこの宇宙の中に飛び出せばたちまち死んでしまう存在であるということを直感的にひしひしと感じていました。
恐ろしくて、怖かったです。
そして同時に、そのまったく逆に「自分が今間違いなく生きているんだ」ということも感じていました。



丸太も伊咲も不眠症に悩まされています。
夜は眠れないけれど日中なら眠れるようなので、不眠症の中でも入眠障害というやつでしょうか。
身体ではなく、心のせいで眠れない。
わたしも一時期ですが寝付きがものすごく悪くなったことがあって、その時わたしは「眠るのが嫌」でした。
「眠るのが怖い」とまでは言いませんが、「眠ってしまって意識を失うと自分が外界から取り残されてしまうような気がして嫌だ…」というような感覚です。

眠るということと、死ぬということと、その違いは本当はわたし自身にはわかりません。
明日朝に確実にまた目覚めるかどうかもわからないし、この身体が目覚めたとしてもそれがまたこのわたしのままの引き続きであるということも実は不思議です。
毎回眠りにダイブしていって、また戻ってこられるという保証はどこにもない。

それでも今はすんなり眠れるようになったのは、どんなきっかけだったか全く憶えていないんですけれど、でももしかしたら自分が今確かに生きているんだという”自信”みたいなものを取り戻せたからかも知れません。
逆に言うと、その頃のわたしにはそれがなかったのかも。

丸太や伊咲もそれと同じなのかどうかはわかりませんが、なにかが”不安定”だから、というのは間違っていないのかなと思います。

伊咲は丸太の心臓の鼓動を聴きながらが一番よく眠れます。
丸太も伊咲と一緒のときなら寝過ごしてしまうほどによく眠れます。

「恋とは生命を求める衝動である」というのは、わたしが昔読んでほんとにそうだなと感心した言葉なのですが、眠るふたりを観ていると「やすらかに眠る」ということと「たしかに生きる」ということが同じ意味であるように感じます。

生きようとするから、眠る。
生きようとするから、一緒にいたい。



このアニメは、OPのaikoさんの歌から始まって全編にわたって「ノスタルジア」が満ちているように感じています。
高校生の生活を描いていますが、それはリアルタイムの生活感というよりは、まるで自分のずっと昔の日々を思い出し懐かしんで描いているようです。

何かを残そうとして写真を撮る丸太
ときどき映る撮られた写真の映像
ポーズをとっておどける伊咲

懐かしいという気持ちには、それがもう二度と取り戻せないという苦い気持ちが少しだけ含まれています。
原作漫画は未読なのでこの先のことはまったく知らないのですが、わたしは今までのふたりの時間だけで充分にその貴重で尊い時間を感じているので、これ以上悲しいことやどうにもならないことは起こってほしくはありません。


この物語は今わたしの中で進行中です。
その中で丸太や伊咲は今生きていて、これからどんな未来でも選び取れる。

何事にもシリアスで太宰治とかが好きそうなw丸太には、生きることはそんなに恐ろしいことではないと伝えたいです。
ただ伊咲と「笑って、生きていて大丈夫なんだよ」と伝えたいです。

そして今生きているわたし自身も、そう思いたいです。

投稿 : 2024/09/09
閲覧 : 21
サンキュー:

4

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