nyaro さんの感想・評価
3.6
物語 : 3.0
作画 : 5.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
原作者のドロドロした性癖に「可愛い」のガワをかぶせた何か。
4話までページが分割していますが、ここにまとめます。
「メイドインアビス」という作品の本質は何かと問われれば実存主義的な「選択」の物語です。どんなに辛い環境でも生を求めて進み続けなければならなず、人生のアナロジーです。それはカフカ的でもあり丸尾末広氏の「少女椿」的でもあります。だから不条理で残酷な描写が必要になります。
(なお、団鬼六氏の「花と蛇」をレビューしていて本作を思い出しました。)
一方で、深淵=アビスとはまさに本来人には見せられない人間の本質=性癖や欲望であり、原始的な暴力性です。奥に入るほどドロドロになってゆく。ここにSFのガワをかぶせたのが、本作の本編ということになるでしょう。
吐しゃ物、血液、排泄、腐敗、毒、人体欠損とスカトロジー、リョナのオンパレードです。そして、痛みがあります。人体改造や変身もありました。それを中性的な少年少女にやらせます。救いのない絶望のような残酷性すら描いています。原作者の「スターストリングス」を見れば、その一見思想性にも見える徹底した残虐性が読み取れると思います。
強いサディズムを感じるとともに、原作者の内面に含むマゾヒズムすら感じさせます。というのは、性的倒錯、ロリ・ショタあるいはペドを含んだ、可愛いものに同一化したいという原作者の性癖は濃厚に感じられます。その上でひどい目にあいたいというドロドロした原作者の内面が非常に端的に表れていますし、それを原作者は隠していません。
これがナナチとミーティをはじめとした素晴らしい物語を生み出したのが不思議と言えば不思議ですが、一方で欲望を隠していないからこそ本質に迫れたともとれます。
そこが結果論なのか作者の意図なのかわかりません。単にリコとレグその他のキャラを徹底的に痛めつける話が書きたかっただけとも取れます。この傾向は1期よりは映画、そして2期とどんどん強化されてゆきます。1期ではかろうじて保っていたバランスが、映画以降どんどん残酷描写に傾いてゆきます。
これ以上進むと、リコ、レグ、ナナチのだれかを破壊せざるを得ないと思います。残酷描写のバリエーションが尽きたとき、どうなるでしょうか?そこが本作のモチベーションだとすると私はメイドインアビスは完結できるのか疑問に思っています。
それを端的に抽出したのが、本作と言えるでしょう。マルルクというボクっ娘とも男の娘とも取れる中性的なショタとロリータの混合物が性的な辱めを受ける話です。そして、最終話でオーゼンとの出会いの描写がありますが、つまり、それは原作者の外部の視点=サディズムの方ですね。
1話目が縄、2話目が性的倒錯、3話目が汚物による精神攻撃、4話が絶望的な状況でした。本作は「SF」というより「かわいい」のガワをかぶっていますが、そういう話でした。
評価はキャラありきなのでキャラを4、作画が素晴らしいので5にしますが、それ以外は3にしておきます。