とまと子 さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
生きなさい、って言ってくれる
最初は「色」に惹かれて見はじめました。
虹のように、柔らかくて、輝いてて
シャボン玉の中から世界を見ているような鮮やかな色。
わたしの中学生時代なんて全然こんなのじゃなかったし、だからお話しのリアリティなんてどうでもよくて、夢の世界に遊ぶみたいに、寝転んで漫画を読むみたいに、見てました。
でも、公生がかをりにステージに引っぱり上げられて演奏を重ねた時・・・そして演奏者同士だけが共有できる世界にふたりだけで入り込んで・・・
― ふたりそれぞれの、ふたりだけが気づくような一瞬だけの微笑み
― そして遠くから見ているだけでそれに気づいた 椿の表情の変化・・・
そのほんの数秒の画面だけで、寝転んでなんて見ていられなくなりました。
虹色の世界の向こう側からグイって手を伸ばされて、わたしがこのアニメに掴まえられた瞬間でした。
この「四月は君の嘘」という物語は、キラキラした青春や、可哀想なヒロインを描いた物語ではありません。
少なくともわたしにとっては、あの瞬間からまったく違う意味を持つ、忘れられない物語になりました。
わたしの世界は虹色なんてしていません。
きらきら光りをふりまきながら天真爛漫に遊んだりできないし、自由に振るまっているだけで誰かから見初められたりしません。
だから、かをりに惹かれていく公生くんの気持ちがとてもよくわかります。
だってあんなに輝いて走っているんだもの。
そしてそれを見てどうしようもなくなってしまう椿の気持ちも、本当によくわかります。
わたしにはなんにもないんだもの。
かをりはどうして輝いているんだろう?
天才だから?美少女だから?
きっと違います。
いつも精一杯だから。
怖がらないから。
この世界のどの一瞬も逃さないで生きているから。
それはかをりが自分の時間があとわずかしかないと知ったからです。
今が、特別な、特別な瞬間だということを知ったからです。
でも、そんなのわたしだって同じです
わたしが生きているリアルの今この瞬間だって、もう二度と手に入らない特別な瞬間なのは変わりはないです。
わたしの世界が虹色をしていないのは
きらきら輝いていないのは
その特別さも、大切さも、わたしが忘れて暮らしているからです。
公生が、かをり自身が、
自分自身の心に、自分自身の生命に
「今を生きなさい」
と言われ続け、追いかけられ
みっともなくあがいて、あがいて、生きている姿が描かれています。
「生きていていいんだよ」って言ってくれる優しい物語はたくさんあります。
そういう物語も、わたしにとってはとても大切な物語です。
でも、「生きなさい」って言ってくれる物語は、わたしにとってはこのアニメが初めてでした。
「君は残酷だね」 かをりが公生に言います。
この物語は残酷です。
今この瞬間を命がけて生きなさい、と言ってきます。
「ありがとう」 公生がかをりに言います。
この物語はとても優しい。
みっともなくてもいいから生きなさいと言ってくれます。
わたしは椿みたいにあきらめられないで生きています。
かをりのように生きることに憧れ続けながら生きています。
大切なことを忘れてるなって思ったらその時は
わたしはこの「四月は君の嘘」を見ようと思います。
きっと公生がかをりを思い出す時みたいに。