Witch さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
「15歳~悲運の少女の物語~」・・・美しいが、設定等が少しごちゃついている印象
【レビューNo.140】(初回登録:2024/9/1)
ラノベ原作で2017年作品。全12話。
いつかちゃんと観ようと気にかけてた作品だったのですが、ずっと後回しにし
てたんですよね。
ABEMAで一気見配信やってたので、この機会にようやく重い腰を上げたという
感じですね。
(ストーリー)
人間族が滅んでから約500年。地上は「獣たち」に蹂躙され、生き残った様々
な種族は上空に浮かんだ陸地、浮遊大陸群(レグル・エレ)で暮らしていた。
人間族唯一の生き残りであるヴィレムは、友人の勧めで護翼軍の兵器管理の仕
事をはじめることになり、68番浮遊島にある軍の施設「妖精倉庫」にてクトリ
たちと出会う。(クトリについては正確には再会)
一見ただの子供たちにしか見えない少女たちだが、彼女らは妖精兵(レプラカ
ーン)と呼ばれ、遺跡兵装(ダグ・ウエポン)と呼ばれるようになっていた人
間族の遺産・聖剣を使いこなすための「使い捨ての兵器」として、浮遊島を襲
ってくる獣たちと死闘を繰り広げていたのだった。
(評 価)
・「15歳~悲運の少女の物語~」はよくできている
・この作品の格子は割と単純です。
「15歳の少女クトリの物語」
~以下重要ネタバレ~
{netabare}・それまでは「使い捨ての兵器」として、死んでいくだけの運命だった。
・ヴィレムと出会い「初恋」を知り、それからいろいろな「初めて」を体
験し、「私は世界一幸せな女の子だ!」と生きた証を見い出し、
・最後は愛する者を守るために散っていく。
という「美しくも悲しげなダークファンタジー」として描かれています。
・演出も目を見張るものがあり
・「終末」という閉塞感漂う世界観を効果的にみせ、「生」を際立たせ、
・クトリの「使い捨ての兵器」という部分を除いては、極めて「普通の真
面目な女の子」という描き方が秀逸で、ここに「初恋」を加えることに
よる効果は絶大。
・ラストの「私は世界一幸せな女の子だ!」からの「Scarborough Fair」
に乗せた「戦いの舞」は美しくも儚げ。{/netabare}
この辺りは非常によくできている作品だと思います。
クトリ、ヴィレム以外のキャラもしっかり描けていたのも好印象ですね。
・設定等が少しごちゃついている印象
ただ作品全体としては情報量が多く、設定等が少しごちゃついている印象
を受けました。
(上述”ストーリー”中で独自の用語が散見される時点で察し・・・
って感じですがw)
・例えばヴィレムについてですが、
{netabare}・この世界の成り立ちに触れているのだが、地上の支配者として君臨して
いた人間族に創造主である星神が宣戦布告。そして準勇者だったヴィレ
ムは戦いに勝利するも呪いにより石化され――その間に地上は突然現れ
た獣たちにより蹂躙され、大賢者たちが、浮遊大陸群へ残った種族を逃
がし凌いでるみたいな。
・ここに星神の名がエルクだの、イーボンキャンドルだの、正勇者の名が
リーファだのこいつらがその場限りなら問題ないのだが、後からいろい
ろ絡んでくるから始末が悪い。これだけでもうお腹一杯って感じなんだ
よなあ。
(他にも意味深っぽい設定が放り込まれるが、結局中途半端で終わった
りみたいな){/netabare}
・原作はかなり設定が練られていると思われ、ラノベで読み進めるには物語
に厚みが出て面白みがあるかもしれませんが、
・アニメではカットできるものはしたいが、微妙に本筋に絡んでくるので
カットするわけにもいかず、
・さりとて1クールの尺だといろいろと厳しい
って感じで、少しもてあましているのかなあっていう印象ですね。
とはいえ、制作陣のできるだけ話を分かりやすくしようという努力は感じ
られましたし、全体的な世界観は魅力的に描かれていたと思います。
・作画は悪くないが・・・タイトルで損している部分も
・作画は決して悪くないです。でもストーリーの出来のよさを考えると潤沢
な予算で創られていたらどうなっていたか・・・
かなりビジュアル映えする作品だと感じたので、この作品を活かしきる神
作画で描かれていればと少し惜しい気がしますね。
・そしてタイトルも作品を誤誘導しているようで勿体ないなと。
・原題は「箱庭世界の天使と悪魔」だった
・それでは他作品に埋もれてしまうということで、当時蔓延していたLINE
アカウント乗っ取り詐欺で犯行グループが多用した定型文
「何してますか? 忙しいですか? 手伝ってもらっていいですか?」
から引用
という経緯らしいのですが、この作品の持つ
「美しくも悲しげなダークファンタジー感」
が微塵もないタイトルになってしまったなあっとw
「タイトルがやたら長いラノベ原作作品にはうんざり!」
と、見限った層もそこそこいそうな感じがしますね。
なので個人的な評価としては
「ポテンシャルは高いが、あと一歩のところで惜しい作品」
という感じになるでしょうか。
しかし世界観は総じて魅力的で、純粋に「15歳~悲運の少女の物語~」とし
ては感動要素が強く、泣ける人には泣ける作品になっていると思います。
OP「DEAREST DROP/田所あずさ」
・Q-MHzが手掛けたアニソン感高めの切なく儚い曲調がなかなかに良き。
あと前述した「Scarborough Fair」をはじめ、他の挿入歌も効果的に使われ
ていた印象ですね。
他の方のレビューによると、「Scarborough Fair」には深い意味があり本作
との関わりも強いようなので、その辺を事前に拝読しておくと、より作品の
理解度が深まると思います。