薄雪草 さんの感想・評価
4.1
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
キャラの印象が・・。
・・・薄い・・・?
鑑賞直後に、作品から感じとったイメージです。
でも、それこそが、本作に強みを与えている "一番の理由" と読み取っています。
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きみの色。
表向きは、作中のキャラを語るだろうテーマですが、裏返せば、作品を鑑賞する人にむけて射影されていると感じました。
山田監督が描こうとする「きみ」は、鑑賞する「わたし」の想い、「あなた」の気持ちに、なにかのハレーションを起こすような気がします。
そう思うと、キャラが薄いのにも納得できます。
「あなた」自身を、3人の主人公に投影し、そのポジションに立つためのシナリオなのですから。
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観ていて感じたのは、ストレスが全くないということでした。
そのあたりは「登場するキャラに、いい人しかいない。」とも言えるのかもしれませんが、私はそれは大事なことのように思います。
今、私たちの社会は混とんとしていて、学校の集団にせよ、進路に向かうにせよ、自分の身の置き所が、とにかく不安定な世の中です。
そんな時代にあって、本当に大事なことは、自分の土台作りなんじゃないかなって思うのです。
本作では、3人のメンバーが、バンドを組み、演奏をするなかで、自分の存在意義だったり、社会との距離感だったりを、お互いに問いかけ、答えを見つけ出そうとするストーリーになっています。
だから、彼らが見つけた何かを、見つけようとした何かを感じ取ることができるなら、それはテーマに触れたことになるんじゃないかなって思います。
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お話としては、3人の色がそれぞれに提示されます。
最後に束の間、{netabare} 3人目の色が演出されますが、{/netabare} そのとたん、私はみるみる心がぬくもり、胸に沁みこむものがありました。
思いどおりにできなかった過去も、平凡に流されている毎日であっても、自分が自分らしくあっていいと思える感覚は、思いがけなく尊いものだと思います。
本作が問いかけている「きみの色」は、視聴者自身の色、あなたらしい色のこと。
その色は、年齢とか境遇とかには関係なく、今の自分の深いところに問い返すことのできるものなんだろうと思いました。
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小ぶりな作品と言えば、確かにそうなのかもと思います。
でも、私はこうも思います。
山椒は小粒でピリリとからい、と。
真っ白なパレットとキャンバスは、自分の手の中にある、と。
たとえ、世間から埋没し、目立たなくいたとしても、自分の可能性だけは誰にはばかることはない、と。
きみの色は・・・、わたしの色は・・・。
あなたの色に、やわらかなエールを送ってくれる、ステキな作品だったと思います。