青龍 さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
ファンタジー要素を含みながら、きちんとした本格ミステリーもの
『体育館の殺人』で第22回鮎川哲也賞を受賞した青崎有吾による原作小説は、『講談社タイガ』(講談社)にて刊行中(既刊4巻、原作未読)。
アニメは、全13話(2023年)。監督は畠山守。製作は、『エンドライド』、『小市民シリーズ』などのラパントラック。
(2024.8.31投稿)
鳥籠に入った生首を持った男とメイドのビジュアルから、ファンタジー色がもっと強い作品なのかなと思っていたのですが、意外とちゃんとミステリーしてました。あとは、癖強な人物たちの会話や一風変わった戦闘シーンを楽しめる良作だと思います!
【ファンタジー要素を含みながら、きちんとした本格ミステリーもの】
原作者は、大学在学中にラノベの賞に応募してみたところ、選評で「君、ミステリー書いた方がいいよ」と書かれ、試しにミステリーを書いてみたら賞を取っちゃったという人(参考:Wikipedia)。
というわけで、本作は、不死者や吸血鬼といったファンタジー(伝奇)要素を含みながら、その要素を生かしつつも、「きちんとしたロジック」に基づいた推理で事件を解決する本格ミステリーもの。
伝奇ミステリー作品の場合、犯罪のトリック自体がファンタジー要素(魔物の特性、オカルトなど)に依拠していて、その謎解きもファンタジー要素(魔法、マジックアイテムなど)に頼ることが多い印象。
なので、本作では、ファンタジー設定は考慮されてますが、あくまで合理的なロジックだけで推理を進めていくというところが大きな特徴。しかも、探偵がおかしなところを複数挙げるなど、そのロジックがとても緻密です。
なお、探偵が名推理を開陳した後には、定番である事件の動機となるような裏事情なんかもしっかりと描かれています。
【あらすじ】
明治30年、雇われて怪物殺しの見世物をさせられていた半人半鬼の青年・真打津軽(しんうちつがる:CV.八代拓)は、鳥籠に入った生首の輪堂鴉夜(りんどうあや:CV.黒沢ともよ)と、その従者である馳井静句(はせいしずく:CV.小市眞琴)と出会う。どうも不死者の鴉夜の首から下を奪った犯人(※不死者なので頭だけでも生きている)と、津軽を半人半鬼にした犯人は、同一の外国人らしいということが判明。
そこで、3人は、ヨーロッパに渡り、怪物を専門とする探偵「鳥籠使い」として吸血鬼、人狼など怪物がらみの事件を解決しながら、鴉夜の体を奪った犯人を探すのだった…
【鴉夜と津軽と静句の関係性が面白い!】
本作で推理を担う鴉夜は、見た目は14歳の美少女だが、1000年近く生きているという「アンデッドガール」で、生首。生首なので自力で動くことができず、普段は鳥籠の中に安置されて運ばれている(→「鳥籠使い」)。
ただ、極めて論理的な思考の持ち主で、長く生きてきたため、かなりの博識。なお、皮肉好き(例えば、馬車に揺られて酔っても、(首から下がないので)私には吐く物がない…)。
鴉夜の助手である津軽は、手術によって与えられた鬼の力で半人半鬼となり、不死者をも殺すことができるほどの圧倒的な戦闘力を有しています。もっとも、普段は、お調子者で、「真打」とまではいかない噺や、鴉夜の生首にまつわるブラックジョークを披露しては、鴉夜にたしなめられています。
鴉夜のメイドである静句は、長い銃剣がついたスペンサー騎兵銃を得物とするクールビューティーで、人としては、かなりの実力者。ただ、鴉夜を溺愛しており、鴉夜と仲良くする津軽を敵対視。ことあるごとに津軽に辛らつな言葉を投げつけ、冷たい態度を取り続けます。
静句は基本的にあまりしゃべらないのですが、この3人の掛け合いがとにかく面白い。
本作では、名探偵シャーロック・ホームズ(CV.三木眞一郎)、そのライバルであるモリアーティ教授(CV.横島亘)、怪盗ルパン(CV.宮野真守)、オペラ座の怪人(CV.下野紘)など、ミステリー界隈の(著作権切れの(笑))超有名人たちが総出演してくるものの、そこに負けないだけの個性をその3人が発揮しています。
あと、声優の配役や耽美的なキャラクターデザインから、一見、女性向けとも思えますが、本格ミステリーものなので、ファンタジーものと謎解きが好きなら性別問わず楽しめる作品だと思います。
【三つ巴の異能バトル】
物語は、ある地をめぐって途中から、モリアーティ教授率いる「夜宴(バンケット)」と、ロンドンにある世界的な保険市場である「ロイズ」から派遣されたエージェントたちと、津軽たちとの三つ巴の戦闘が始まります。
本作は、まだ2期が決まってはいませんが、話自体は13話の先も続くので、各勢力の顔見せの意味合いが強いのか登場する人物が多いです。
ただ、一部埋もれちゃってる人もいますが(アニメだと尺が足りないかも…)、主要と思われるキャラのキャラ立ちには成功していると思うので、個人的には今後の展開に期待しています。
ロイズのエージェントたちは、人間なのですが、人外に対して異常なまでの敵愾心を燃やしており、ある意味、人でありながらその精神性が人外といえるかも(笑)
また、バンケットの一員であるカーミラは吸血鬼の妖艶な美女なのですが、その役を近藤玲奈さんが演じていて、その艶やかな演技にイメージがなかったこともありエンディングで名前を確認するまで誰かわかりませんでした。
あと、おまけみたいに書いて申し訳ないのですが(笑)、杉田智和さん演じる魔術師・アレイスター・クロウリーもいい味出してます。