YOU0824 さんの感想・評価
4.8
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
宇部の駅のプラットフォーム
公開前にすべてのエヴァは観ていたが
シアターで観る程ではないかなと
DVDになるのを待った。
2年経ってもDVD化されず根気勝負の様相に
なっていたら、アマゾンプライムで以前から
観れたことを知った。(DVDは23年3月発売決定)
OP前、「それまでのエヴァ」が流れる。
「残酷な天使のテーゼ」で目を瞠(みは)った
フラッシュカット手法。いろんなものがこみ上げてくる。
またエヴァに会える、想定外だった胸の高まり。
劇場で涙した人は、この郷愁も理由の一つだったろう。
「二人のために世界はあるの」…昭和歌謡を口ずさむマリ。
パリの空で躍動する8号機β、
ゴジラの東京タワーのように倒壊するエッフェル塔、
居並ぶ44Bは『進撃』で地ならす巨人のように見える。
過剰すぎるくらい緻密なメカニカル描写。
シアターで観る価値あったな、そう思う。
懐かしい昭和的風景、綾波はドテラを着てる。
制服姿のレイを見れるとは思わなかった。
「昭和的」と言えば、ニャロメにメンゴ、作中随一の
愛すべき「抜け感」キャラ・マリはキーパーソンだ。
人間味が最もある。
いろんな意味で庵野の妻・安野モヨコ
を彷彿させる。あっ「オチビサン」!
作中、懐かしい田園風景の中、バラック屋根に太陽光が並ぶ。
懐かしさの中にも新しさは同居していた。
「馬鹿らしい、ただのエゴじゃん」
これはミドリのゲンドウ評。
父子の話(カラマーゾフか!)でもあり、
少年の成長物語でもあり、庵野の個人的な問題でもある。
ただ、そんな個人的内面的なことを作品に昇華して
くれたことが嬉しかったのだ。文学と言ってもいい。
救われた人も多くいたと思う。
かつて『ゼロ年代の想像力』で(これまでの)『エヴァ』を
ラディカルに評した宇野常寛は、
近著『水曜日は働かない』でこう書く
「僕は思う。あの宇部の駅のプラットフォームを降りて、
ずっとずっと遠くまで走ったその先に、本当に描かれる
べきものは、虚構が戦うべき現実は存在しているのだ」
駅の階段を駆け上がる二人は文句なしのカタルシスだった。
こんな清冽な気持ちってない。
その先は各自に託された。
そんなこんなを描ききり、作品は見事に完結した。
制作者に敬意を表さずにはいられない。