蒼い✨️ さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
時行が逃げ上手でもこれが武士の世界。
【概要】
アニメーション制作:CloverWorks
2024年7月6日 - 9月28日に放映された全12話のTVアニメ。
原作は、『週刊少年ジャンプ』で連載中の漫画作品。
著者は、松井優征。
監督は、山﨑雄太。
【あらすじ】
1333年、鎌倉幕府の第14代執権の北条高時の後継者である北条時行は、
幕臣の足利高氏の反乱によって故郷と家族を滅ぼされてしまい、
信濃国の諏訪大社の大祝である諏訪頼重の手引で落ち延びて再起します。
諏訪の地で、打倒足利のために信頼できる仲間を集めて、
鎌倉奪還のために力を蓄える時期。
非力な軟弱な子供と思われていた時行は、天才的な回避能力を持っていて、
勇ましく死を恐れない戦いが美徳とされている武士としては常識外れな、
戦い方と考え方をしているのですが、時行もまた戦を童の遊戯のように楽しむ、
異端の怪物であったりします。
歴史上の勝利者である足利尊氏に何度も立ち向かいながらも、
最後は捕らえられて処刑されたとされる時行は、
一応は生存説もあったりします。これは、逃げ続けることで英雄となった時行の生涯を、
描いた講談的な物語です。
【感想】
1336年に室町幕府を開いた英傑として知られている、初代征夷大将軍の足利尊氏。
尊氏をモチーフにした作品では真田広之が主演の大河ドラマの「太平記」が有名ですが、
打倒足利に二十数年の短い生涯を費やし鎌倉を三度奪還しながらも、
当時のNHKからスルーされた?男が、鎌倉幕府最後の執権の北条高時の遺児である時行。
時行が諏訪頼重と挙兵した中先代の乱の結果が、尊氏が後醍醐天皇から離反しての、
南北朝時代の始まりであり、日本史に影響を与えた人物として日の目を見ることになったのが、
週刊少年ジャンプでアニメ化経験豊富な、松井優征先生の話題作の少年漫画なのですね。
ショタコンの人に向けて全力で造形されたような美少年の時行が少年少女等の仲間を増やして、
圧倒的強者で英雄でもあるラスボス・尊氏に立ち向かうストーリーは、
史実を参考にしながらも考証的におかしな部分も結構あるのですが、
松井優征先生の作風がクセが強くてエキセントリックなことから、
史実考証に厳密に照合する必要はないかも知れません。
歴史を舞台にしたものでは、三國志の時代に現代人がタイムスリップするものもあれば、
史実では男性が作中では美女となってるものがあったり、信長が悪魔と契約してるのもあったりで、
エンタメとしての割り切って楽しむことが肝心ですね。
ていうか14世紀にアイスホッケーや桃鉄で遊んでる少年漫画に史実警察は要らないですよね。
かなり攻めてる変な作品ではあるのですが、個人的に良いと思ったのが、
①生命より名誉を重視する武士の価値観を現代人の価値観でマウントを取って妙に否定しない。
②敵味方問わずに武士を自らを鍛え抜いた強者として扱っていてナヨナヨしていない。
「鎌倉殿の13人」でもそうだったのですが、当時の武士はヤクザより酷い(笑)連中。
「堯・舜(古代中国の聖君子)の再生」として評価されている三代目執権の北条泰時が定めた、
最初の武家の法典・御成敗式目(貞永式目)なんか、
強盗殺人禁止・放火殺人禁止・女の人を浚うの禁止と、治安とか風紀とかがメチャクチャで、
世紀末の荒野的なヒャッハーな武士団に人としての最低限の良識を植え付けようと、
苦慮されていたのが見えるのですが、現代人から見たら頭おかしい武士でもドン引きするのが、
甥の七光りで出世しながらも作中で私利私欲のために土壇場で甥を裏切って売り渡して、
死に追い詰めた五大院宗繁。
18世紀のヨーロッパで生まれた人権という思想がない14世紀の中世の日本。
面子・体面を恐ろしく気にする時代で恥をさらすなら潔く腹を切って死ぬのが当たり前の世界。
五大院宗繁のこの作品での描写もかなり悪辣ですが、土壇場になっての忘恩の返り忠は、
当時の価値観に照らし合わせても最低最悪の恥知らずとして史書でも散々な言われようでして、
誇張だらけのこの作品でもそれに倣っただけですね。
「脳噛ネウロ」で玩具会社の創業者役の宮崎駿が孫娘の美少女を偏愛するロリコン爺で、
実子の宮崎吾朗に私利私欲で殺害されるなんてイカれた漫画を描く作者の作品ですから、
やはりこの作品にマトモを求めるのが最初から無理。その点ではこのアニメスタッフは、
現代人の価値観では頭おかしい人たちに見える武士の理解しにくい部分から逃げること無く、
原作の意図を忠実に汲み取り忠実にアニメ化していることから、
高度な映像技術もありますが、有能な人材揃いであるとは思いました。
最終回の合戦なんかも見応えたっぷりでありましたし、制作発表された2期も楽しみですね。
これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。