ミュラー さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
感動するも恐ろしい作品
わずか58分という短編ながら、完成度という意味では今年一番なのでは。
最近の超絶綺麗な作画に逆行するかのように、
粗削りな作画のアニメーション。
しかしそこが大変良い。
原作漫画も読んだのだが、原作の雰囲気がそのまま出ている。
さらにアニメの良さを生かし、動きで感情を表す素晴らしさ。
とても分かりやすくなっているし、素直に感動できる良作であった。
決して楽しい物語ではない。
しかし、これでもかと現実を突きつけてくる。
生きることの素晴らしさと辛さを存分に味合わせてくれる作品ではないだろうか。
ちなみに原作は、あのチェーンソーマンを描いている藤本タツキさんである。
{netabare}
この作品について、見た直後の印象と、よく解釈してからの印象がだいぶ変わる。
どちらかというと、恐ろしい作品だ。
ざっと見た感じでは、藤野と京本、二人が心を通わせた感動の物語に見えるが・・。果たして藤野は幸せなのか?
いや、それを視聴者が言うことでないのは分かるのだが。
ここで映画タイトルの「ルックバック」が効いてくるのだ。
この意味は、もちろん作中で京本の描いた四コマ漫画のタイトルであり、京本の事件を聞いて茫然自失となった藤野を救った言葉でもある。
「後ろを振り返って見て」
しかし、藤野の状況はどうだろう?
ずっと一緒に漫画を描くことを夢みていた京本はいないのだ。
映画の最後は、静かに、静かに藤野がペンタブに向かって漫画を描くシーンで終わっている。
孤独なのだ。孤独に戻ってしまったのだ。
こんなにも現実を残酷に描きだしている作品があっただろうか。
{/netabare}
とてもハッピーエンドではないこの作品、私はますます好きになった。