四ツ谷ミツル さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
プリティを捨てた爆熱ウマ娘
率直に言う。これは評価が分かれる作品だ。面白いのは間違い無いが人を選ぶ。
良い所と個人的な嘆きをネタバレ込みでありのまま綴るのでその辺ご了承願いたい。
まず良かった所から語る。
本作、めっちゃくちゃ色彩が美しい。
タキオンとポッケの不穏なシーンの危険や不安感を煽る赤、タキオンとカフェの夜の会話シーンの時に部屋全体が深い青に染まる感じ。
レース場を俯瞰で見た時の緑のコントラストなど、とにかく色彩豊かで見ていて楽しい。
カメラワークも秀逸で、ウマ娘の主観がスクリーンに映し出される様は圧巻だ。ウマ娘がどれだけの速度で走っているかが疑似体験出来る。
これを半分人の身体でやるのは確かに危険だ。故障も頷ける。
レースシーンは非常に素晴らしい。制作陣の気合と魂を感じた。
タキオンが走った時の光の方程式(?)や機械的なノイズ音は劇場音響ならではの表現だ。
流れ落ちる汗すら美しい。
カフェのおともだちなんかも良い感じに不気味だったし、雨の中先頭で走るカフェのシーンは短いながらも迫力あって良かった。
本作、絵で魅せるという事においては本当に素晴らしい。
また、セリフは無しor一言ではあるがかなり沢山のウマ娘が登場している。一期アニメ主人公のスペスズコンビもそうだし、ライスちゃんやキングヘイロー、オグリキャップなども出ている。
初映画と言うこともあって出来うる限り多くのキャラを出してあげたいという製作陣のサービス精神は見事である。
完全初見はやや厳しいが、ウマ娘を多少でも齧った事があれば豪華で疾走感のある本作は劇場で見る価値ありだ。
そしてフジキセキファンは見て損は無い。というか是非見て欲しい。あの勝負服も非常にエモい感じで拝めるので強くオススメする。
さて、こんだけ良い所があるのに何が評価が分かれるのかについてだが。
それはプリティを削ぎ落としたキャラデザ、アニメタッチだと思う。
というのも、本作は作画がかなり尖っている。従来のアニメウマ娘は可愛い系の作画だったが、本作はそこを削いで熱さとダイナミックさに振り切っている。
申し訳ないが個人的にはもっと可愛い作画で見たかった。アプリ版のキャラデザが秀逸なんだからあんな感じにはならんかったのだろうか。
可愛いウマ娘が熱く爆走するのが良いんであって、その可愛さを削がれるは個人的に…ちょっと違った。
主人公ポッケのキャラも中性的な熱血漢だし、声優さんの演技もちょっと惜しい。
感極まった叫び声が聴きたいのに、全部低音で地鳴りのような「うおおおお!」だと…うん、やはり多少の可愛げは欲しい。
やはりアニメ未登場のポッケだとちょっとヒキが足りない。
アプリウマ娘の仕様上見た目で気になっても大概の子が確率3%のガチャを引いてお出迎えしないとどんな娘かよく分からない。
スペスズコンビなど、広く知られているキャラが話に絡んでくるならともかく、知られる機会が少ないポッケでは既存ファンにもスルーされかねない。言っちゃあなんだか作品そこそこ好きでも"推し"が居なければ見ない層は、世知辛いがかなり増えている。
中盤でわざわざ海と水着のシーンを挟むならもっとサービスカットが欲しかった。タキオンとかせっかくアプリで水着が実装されているんだから見せてくれても良いだろうに。
女性向けとかを意識するにしても、健康的な感じの水着でキャッキャウフフしてる分には文句は出ないんじゃなかろうか。
また、レースシーンは全て圧巻の出来だが、結構回数が多い。削れと言うのは酷かも知れないが、もっと各キャラの掘り下げが欲しかった。
せっかくみんな女学生の設定なのだからオペラオーと廊下で相対して宣戦布告される場面とか見たかったな。
最後は登場キャラみんなで歌ううまぴょい伝説と共にエンドロールを迎えたが、うまぴょい伝説聴いた瞬間なんか悲しさ込み上げて泣きそうになった。
そうなんだよ俺がウマ娘に求めてるのは萌えなんだよ。燃えじゃねえんだ。
うまぴょい伝説流すくらいだったらキャラデザもっと可愛くしてくれよ。このキャラデザ飲み込めねぇよ俺。
こんな言うと可愛さ求めんなうるせえと言われそうだが、求めて何が悪いねん。この作品、ウマ娘"プリティ"ダービーやぞ。
とまあ長々と良い所と嘆きを綴ってしまったが、この作品がエンタメ作品として秀逸なのは間違いない。
シナリオは抜群に上手いし、アニメーション技術や音のこだわりも劇場で見る価値が大いにある。声優陣の演技も良い。
キャラデザが好みだったり、予告で気になったキャラがいれば充分楽しめるだろう。