101匹足利尊氏 さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
がんばろう流川市 River/魚心を、君に
ひょんなことから地元・流川(ながれかわ)市の魅力をPRするご当地アイドルとなった主人公の女子校生が、
先輩の縁(ゆかり)らと共に奮闘する同名四コマ漫画(未読)の連続アニメ化作品(全12話+未放送エピソード1話)
【物語 4.0点】
表層はユル~いローカルアイドルアニメ。
アイドル物と言うと、夢を追うギラギラした女子同士がぶつかり合う、
ギスギスした展開になりがち。
ですが本作は、主人公にまず野心がなく、
自己実現よりまず地元の役に立ちたいという利他の精神が先に来るため、
エゴから来るストレスはほぼ皆無。
中盤には、ゆるキャラの魚心(うおごころ)君も登場し空気はユ~ルユルに。
そして、その弛緩度は、第6話の「全国版!ゆるキャラだらけの大運動会」で極致に達する。
が、本作をユル~いだけじゃない価値ある作品にしているのは、
後輩・奈々子に対する先輩・縁の想い。
完璧美人に見えた縁先輩のズレた部分、奈々子への尋常じゃない愛情とこだわり。
その片鱗が垣間見える2話で、これは面白くなるとの手応えを掴んだという評も多い本作ですが、私も同意。
序盤で、深層に流れる微百合の波動を感知した視聴者にとっては、
9話で明かされる{netabare} 縁先輩は以前から奈々子のことを知っており、
その頃から自分を顧みない奈々子に惹かれていた{/netabare} という真相はご褒美となる。
そして、この割と重ための女子同士の関係性を、抽出して1クールアニメとしてシリーズ構成したのが、綾奈 ゆにこ氏。
昨年『バンドリMyGO』にて、一生と誓ったガールズバンドが一瞬で大破するなど、重量級の女子友情パンチで私をノックアウトしたお方。
外面が爽やかなロコドルの裏側で大人しくしていても、その切れ味は当時から不変です。
【作画 3.5点】
アニメーション制作・feel.
シリーズ展開中、キャストによるリアルイベント等こそあったものの、
特に2.5次元アイドルコンテンツとして売り出さねばという切迫感はあまり無い印象。
メディアミックスの一端として萌えでファンを獲得しようとの野心もあまり感じない、
素朴なキャラクターデザイン。
作中には、{netabare} 突如JKロコドルが脱いで水着姿でライブパフォーマンスする。{/netabare}
{netabare} 魚心くんの着ぐるみの中から汗だくのJKが出てくる。{/netabare}
といった中々のフェチズム全開な、際どいシチュエーションも結構あったりしますが。
いかがわしさや、あざとさよりも、健全な清々しさが先に来るのも、
この素朴なロコドルJKの造形ゆえなのではないでしょうか。
一応、“流川ガールズ”にもアイドル衣装はありますが、
私が印象に残っているのは、むしろ地元特産品等の名前を記したシャツ姿。
自分がキラキラ輝くよりもまず街を輝かせる。
こうした面からもロコドルの地元愛が伝わって来ます。
本作のアイコンとなっているのが、ゆるキャラ・魚心くん。
絶妙に丸みを帯びた水色を基調としたデザインが秀逸。
で、実は{netabare} 本体は背負っている淡水魚オイカワの方で、水色の部分は依り代。{/netabare}
などと言う謎に深い設定があったりするのも、ゆるキャラマニアの心をくすぐりますw
(因みに放送年の2014年には、リアルのゆるキャラグランプリにも参戦。
1000体超がごった返す激戦の中、82位と健闘。)
【キャラ 4.0点】
主人公ロコドルJK・宇佐美奈々子。
アイドルを演じることに関しては経験不足で不得手。
イベント進行でも噛みまくるため、本名よりも“なにゃこ”が定着する体たらくw
ですが、この奈々子の飾れない素直さこそが町おこしには有用。
その特性が発揮されるのが、率直に美味しい!と言える食レポ。
こうした奈々子の天真爛漫さに、縁先輩もゾッコンなのでしょう。
終盤には、アニオリの人気ロコドルとしてAWA2GiRLS(アワアワガールズ)も登場。町おこしイベントも営業として卒なくこなす同グループ。
ですが{netabare} 流川ガールズたちは無欲な奈々子を中心に、人気はこれからなものの、
地元特産品の売り込みではアワアワをも上回る成果を出す。{/netabare}
アワアワもまた、アイドルとして輝くよりも町おこしというロコドルの在り方を多角的に捉える好素材として機能。
奈々子をロコドルの世界に強引に?誘い込んだ、
ふるさと振興課係長・太田貢。
流川ガールズにかける“市民の血税”というプレッシャーもロコドルならでは?ですw
太田の部下・西深井沙織。
流川ガールズのマネージャー役として営業を回す有能な公務員。
が、裏では{netabare} 私用カメラによるストーカー、盗撮スレスレのショットで“非公式”ファンサイトを運営する{/netabare} など、
ちょっと危ない一面もw
【声優 4.0点】
主人公・宇佐美奈々子役の伊藤 美来さんの初々しいロコドルぶりに、
先輩・小日向縁役の三澤 紗千香さんのしっかり者ですがたまにポンコツなボイスが絡んでいく掛け合いが美味な本作。
途中から{netabare} 魚心くんの中の人{/netabare} として流川ガールズと共に街を盛り上げる
三ケ月(みこぜ)ゆい役の吉岡 麻耶さんの元気ボイス。
そして、名都借(なづかり)みらい役の水瀬 いのりさんの引っ込み思案なシャイボイスと粒ぞろい。
その水瀬さん。シリーズ展開中、吉岡さんと共に「魚心くんソング」踊ってみた動画もアップしており、
当時まだ売り出し中の10代で、垢抜けない感じのお姿を披露されています。
こんな普通の女子高生だった感じの娘が、後に武道館ライブも成功させる声優アイドルとして光を放ったりする。
声優業界の未来って分からないものです。
【音楽 4.0点】
劇伴担当は長谷川 智樹氏。
ピアノやバイオリンでゆったりと、時にワルツも交えながら、
平和な流川市の町おこしを好演出。
ご当地アイドル・流川ガールズ。
OP主題歌の「ミライファンファーレ」はアップテンポでキラキラな王道アイドルソング。
ゆい、みらいとも歌うことになるED主題歌の「未来少女たち」は“スゝメ!恋スル乙女!”とのサビのフレーズが牽引する王道青春ソング。
ロコドルとして、より個性を発揮するのが、ゆるキャラソングの「魚心ソング」。
サビで“うおうお”“ WowWow”といっそう緩めていく構成が病み付きにw
町の歌として地元民なら誰もが知っている「あぁ流川」に至っては、
アイドルソングというよりもはや校歌風の変化球。
そしてクライマックスでは「流川ガールズソング」で魅せてくれる。
流川ガールズ。多彩で上々のアイドルぶりです。