ニッキ さんの感想・評価
3.4
物語 : 2.0
作画 : 3.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 3.0
状態:観終わった
やっぱり尺が足りない
以前から原作のファンでアニメ化の知らせがあった時は歓喜しましたが、その後36話で最後までやると発表があり、期待は大きく不安へと変わり、それでも待望のアニメ化だし、見ないわけにもいかないと視聴しました。
そして結果、やはり不安は的中してしまったなと。
とにかくダイジェスト、特に鳴海主役のからくり編は一枚絵を多用し矢継ぎ早に場面が変わっていくので、原作で感動したシーンも感情が追いつかず、えっ、もう終わり?と置いてけぼりをくらって進んでいき、原作読んでる自分ですらこうなら初見の人はどう思って見てるんだろうとか関係ないことを考えながら見てました。からくり編終了の14話を見終わった時は本気で見るのやめようかと思いました。他にも修行編をカットしたことで勝がいきなり滅茶苦茶強くなったり、ビーストをカットしてリーゼのキャラが薄くなったりと随所でカットによる影響がでています。からくりサーカスはメインサブ問わず登場人物の過去を掘り下げ、その人物が抱える障害やトラウマを乗り越えさせることで生まれるドラマやカタルシスが魅力の作品なので、それが伝わらなくなっていました。
また、OP曲自体はどれもいい曲なのですが、映像が本編を継接ぎしたmadのようで目新しさがなく、その点からも制作状況の苦しさが見えてしまいます。
ここまで悪い点ばかり挙げてきましたが、アニメ化して良かった点もあったと考えています。まず音楽、林ゆうき氏が手掛ける音楽は作品の世界観に合っていて非常に良かったと思います。また、第一オープニングと最終エンディングの月虹は今作を象徴するに相応しい名曲だと思います。次に声優陣、全体的に演技レベルが非常に高く、締めるところをきっちり締めてくれたので最後まで見ることができました。特に勝役の植田千尋氏が素晴らしい。終盤は勝本人をダウンロードしたんじゃないかというくらいのハマりっぷりでした。また、先程酷評した脚本ですが、最古の四人(いや三人か)を始め、しっかり原作の見せ場や生き様が再現されているところもあり、音楽や声優さんの力もありアニメでも感動できました。最終章は概ね原作と変わらないので普通に楽しめました。
このように振り返るとやはり尺さえあれば…と思います。制作陣も苦しい状況のなか何とかしようと努力してるのは伝わりましたし、そもそも原作が完結から10年以上経っていることを考えるとこれ以上の条件でやるのは厳しいとも思います。アニメの話数が漫画の巻数より少ない状況で、大きな破綻なく一つの作品として成立させたのはむしろ賞賛に値するかもしれません。それでも充分な条件をとって、成立させるのではなくよりよくする方向に努力を向けたアニメからくりサーカスが見たかったと思います。