タイラーオースティン さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
トイストーリーの後継作
正当な『トイ・ストーリー』の後継作品だと思いました。物語の大きな核は二つあります。つまり"どうやって親として子に接するか"という子育ての話と、"職場の仲間とどうやって仕事をしていくか"という話です。『トイ・ストーリー』もウッディがアンディの保護者として見守っていくという話と、バズという自分より性能の高いおもちゃに嫉妬しながらも職場仲間として理解し合っていくという話でした。
本作もそれと非常に構成が良く似ている。カナシミは職場で要らんことばかりするちょっと扱いづらい同僚。それをヨロコビは最初非難する。カナシミには彼女なりの仕事があるのだということが分からずに、ライリーが喜びを沢山感じるのが何よりも良いことなんだとカナシミに押し付ける。「とりあえずマニュアルでも読んでてよ」という適当な指示方法は駄目な管理職の典型的な姿でしょう。但し、カナシミと旅を続けていく中でカナシミにも彼女なりの重要な仕事があることに気づいていく。それは共感したりとか、つらいときにつらいと正直に言う大切な感情です。そしてそれは自分のヨロコビと表裏一体("Inside Out")なんだと気付かせてくれるラストシーンの素晴らしさ。楽しい思い出は悲しい思い出と本質は同じなのですね。美しいメインテーマも相まって思わずホロリと来てしまいました。
ヨロコビは仕事仲間としてキチンとカナシミの存在意義を見出して、職場の一員として互いに認め合う。ライリーが生まれた時からライリーの保護者として彼女を守り続けていた感情たちは、何も喜びの感情だけを子どもに与えておけば子どもが幸せではないことを知る。全ての感情が子を豊かに成長させるのですから。こうやって感想を書くと、やっぱり非常に大人向けな作風であったと言えますね。
それから、心の中という極めて抽象的な舞台の構築、途中で3Dアニメからキュビスムになったり二次元までキャラクターが分解されてしまったりの画的な面白さ、ライリーの両親の感情たちの様子など、冒険心を忘れないピクサーだからこそ作り得た作品だったと思います。個人的にはピクサーの全作品の中でもトップクラスに面白い作品でした。