蒼い✨️ さんの感想・評価
4.7
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
最終楽章に向けての序曲。
【概要】
アニメーション制作:京都アニメーション
2023年8月4日に公開された57分間の劇場版アニメ。
原作は、宝島社文庫から刊行されている武田綾乃による小説。
監督は、石原立也。副監督は、小川太一。
【あらすじ】
北宇治高校吹奏楽部は、8月の吹奏楽コンクール関西大会で金賞を獲得したが、
全国大会出場の代表枠3校に選ばれずに、最後の大会を終えた3年生は引退。
2年生の黄前久美子が新部長となり、ドラムメジャーの高坂麗奈に、
副部長の塚本秀一とで、三人による合議体制になった。
文化祭で「オーメンズ・オブ・ラブ」を演奏し終えた吹奏楽部の次の目標は、
12月に行われる3人以上8人以下の少人数編成のアンサンブルコンテスト。
校内の代表チームを決めるべく部員65名全員参加でそれぞれがチームを作り、
公開オーディションを開いて部員全員の多数決で代表を決めることに。
一般投票もあるが結果が異なる場合は部内投票に従うと決定。
すぐにチームを作った者、あぶれた者と人それぞれなのであるが、
次々とチームの申請書が届けられる中、
久美子は部長としてあぶれた部員のサポートをしなくてはならない。
麗奈に誘って欲しいのだが一向に誘われない久美子としても、
不安な感情を抱えたりしているのだった。
【感想】
4年ぶりのユーフォの新作は、今までとは敢えて視点を変えていますね。
吹奏楽部の話だからと必ずしも演奏が中心というわけでもなくて、
久美子新部長のもとでの北宇治高校吹奏楽部を改めて自己紹介。
OGとなった安定のなかよし川のコメディシーンもありますが、
アンコン編では久美子たちが組んだチーム高坂の8名のメンバーであり、
これまでには吹奏楽美員としてしかクレジットされなかった、
釜屋つばめ、小日向夢、森本美千代、井上順菜が作中で名前とともに紹介され、
台詞とともに内面からにじみ出る表情や仕草などの作画芝居で個人差をつけていることで、
彼女たちにも人格と個性がある描写を通して、
これまでのシリーズでアニメで描かれてきたユーフォとは、
吹奏楽部の一部のメインキャストの視点で切り取られたドラマに過ぎず、
本当は2~3学級に相当する膨大な人数の部員による、
うまくなりたい努力や悲喜こもごもの感情がジェンガのように積み重なっていて、
これが今の北宇治の姿であるというのが見て取れます。
誰ともチームを組めずに久美子に相談した細野暖奈にせよ、
今回特にクローズアップされた釜屋つばめの感情の変化もそうでありますし、
群像劇で今まで敢えて語られてなかった側面を部分的にでも見せていることで、
吹奏楽部の日常の部分に対しての視聴者の想像力がかき立てられる。
人が集まってこその部活動であり、そこに話が生まれるのです。
終盤に部員全員を紹介するシーンがありますが、
結局のところは今回のアニメでやりたかったことは、3期を控えての、
視聴者に北宇治高校吹奏楽部全体を意識してもらうためのプロモーションでしょうか。
一緒に働く人々や物の集まり、特に音楽や演劇の分野でのグループを意味する、
アンサンブルの言葉の意味を表現する作品であったと思います。
感情を揺さぶられるドラマチックな展開や最高の演奏シーンを期待した人には、
物足りなさがあったかも知れませんが、久石奏と中川夏紀の関係性の変化があったり、
リズと青い鳥のその後が黄前久美子と鎧塚みぞれの会話で示唆されているなど、
誓いのフィナーレと3期のつなぎとして意図して作られていて、地続きである、
シリーズ全体を構成する要素のひとつとして計算されているアニメだとは思いました。
余談:ユーフォファンとはしては少ないですが2023年8月に3度劇場に観に行って、
ユーフォのクリアファイル付きポップコーンが販売されていて、2度の視聴では、
ポップコーンの購入者による上映中の咀嚼音が長々と続くのが結構気になりました。
家庭での上映環境では味わえない画面サイズと音響は素晴らしいものですが、
しみじみと作品を味わうのには劇場はあまり向いてないのかも知れませんね。
これにて感想を終わります。読んで下さいまして、ありがとうございました。