ムッツリーニ さんの感想・評価
4.4
物語 : 3.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
表現者の本分とは
室町時代に実在したと言われる能楽師、犬王(後の道阿弥)の半生とともに描かれるスーパーロックフェスティバル。
平家の呪いを受けて異形の姿で生まれた少年「犬王」と、平家の呪いを受けて盲目になった琵琶法師の少年「友魚」。京の都で出会った二人は意気投合し、己らに纏わりつく平家の怨霊たちの「声」を人々に届けるため、奇想天外な舞台の幕を上げるのであった。
この映画はかなり人を選ぶと思います。
主人公二人は不細工だし、舞台は源平合戦後の室町とかいうどマイナーな時代だし、前提としてある程度の平家物語の知識が求められるし、基本的に登場人物の紹介のような物もないので誰が何者なのかは絵や所作で判断するしかない。歌ってる曲だってほとんど何を言ってるのか解りません。理解してしまえば物語も至極単純。あとグロい。
だがこの魂を揺さぶるような楽曲演出の数々はどうだろう。時に禍々しく、時に雄大で、時に幻想的なこれらの舞台を指してこの映画はこれが全てだと言い切っても、まぁ過言ではないように思いますし、それが物語を置き去りにしているとの批判も外れてはいないでしょう。
この映画が何を描いているのか、それはもちろん「表現者の狂気」です。
表現者の本分とは何か。
人を楽しませること? 物語を伝えること? 美しい物を描くこと? 否。
表現者の本分とは何か。
それは人を狂わせること。
人を狂わせ己を狂わせ、親も妻も子も時間も場所も意識も狂わせ、やがて全てを置き去りにしたその果てには一体何があったのか。その答えを魂で感じてほしいそんな作品。
ただ一つ最後に言わせて欲しい。
この映画を見る時は部屋を暗くして画面に近づき音量を最大にして見るべし。