ひろたん さんの感想・評価
3.4
物語 : 4.5
作画 : 1.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
オーケストラもマンガのアニメ化もどちらも再生芸術なのに・・・
原作マンガは一度読み始めるとやめられないぐらい面白いと思います。
その証拠にNHKが7巻分を贅沢にも2クール24話もかけてアニメ化しました。
でも、なんなんでしょう、このもう一歩感は・・・。
物語自体は原作に忠実だし、声優さんの声も演技もキャラにあっていると思います。
ところどころ入るギャクに至っても忠実そのものと言う徹底ぶりです。
でも、なにかが根本的に足りない気がするのです。
原作にあってアニメにないもの・・・。
さて、それはなんだろうと考えてみたのですが・・・。
私の結論は、空気感かなと思います。
原作マンガは、とにかくその時々の空気感を感じることができます。
場の雰囲気だったり、緊張感だったり、緊迫感だったり、心の情景だったり・・・。
つまり、言葉にできない感覚を感じられます。
それが、青春物語を今読んでいるんだなぁと実感させてくれます。
一方、アニメからだとそれをあまり感じることができません。
なんだか表面的なんです。
では、空気感ってどうやったら感じられるんでしょうね。
マンガだと細かい表情、仕草、光の加減、緩急等を作画で表現していました。
アニメだとそこが圧倒的に足りません。
確かにマンガだからできる表現があります。
でも、この作品だとそれはアニメでは難しいからとそのままオミットしている感じです。
それでは、だめだと思います。
そこは、アニメならでは表現で原作者の意図をこちらに伝えてくれないと。
オーケストラは、一種の再生芸術です。
そう言う意味では、マンガのアニメ化も再生芸術のはずです。
オーケストラは、作曲者の意図やイメージくみ取って観客に伝える演奏をすることです。
物語の中でも、その大切さを語るシーンがありました。
それなのに、アニメでは、それができていないと感じられるところが少し残念です。
■作画が・・・。
{netabare}
この作品を観ていて、まっさきに思うのが、作画が微妙なことです。
背景が簡素と言うか緻密さがなく、昔の量産アニメみたいな感じです。
次のシーンになるとそこにあったはずの椅子がなくなるとかおいおいって感じです。
ヒロインの顔のデザインがシーンによってちょくちょく変わるのもいただけません。
止め絵で音だけのシーンも結構気になります。
場面の切り替えの際のアイキャッチ的な感じで使う分にはまだ許せます。
でも、まわりの人が歩くポーズのまま止まっていて、主人公達だけが動いています。
なんだか、時が止まった世界に入り込んでいるみたいで怖い。
主人公のキャラデザも微妙。
確かに髪型的にはもっさい感じのキャラですが、原作では、それなりには男前。
しかし、これを動かすために線と陰影を省いてしまったキャラデザにすると・・・。
ただただ、もっさいだけに感じられてしまい残念です。
う~ん、ここまでくると低予算感がすごいのですが・・・。
でも、これNHKアニメでしょ、なぜ??
物語が進むと、ようやく、その理由がわかるシーンが訪れます・・・。
それは、肝心のオーケストラのシーンです。
{/netabare}
■オーケストラのシーンが・・・。
{netabare}
私は、どんなものを見せてくれるのかとても楽しみにしていたシーンです。
なんと、この演奏シーンは、ソロでも全体でも、3DCGを使っていたんです。
確かに100人もの楽器を持った人たちをアニメで一人一人動かすのって大変です。
それをCGだと一度モデリングしてしまえば後はどうにでも動かせます。
なるほど、ここにお金がかかっているのね!
でも、でも、でも・・・。
実は、これがまた一昔前のゲームのような動きなんです。
なんと言うか、人間味が無いと言うか、とても機械的で少し気持ち悪い感じ・・・。
アニメーターさんが手で描く絵は、多少のゆらぎがあります。
また、絵なので嘘も簡単に盛り込むことができます。
例えば、迫力を出したいシーンでは、強調したい部分をあえて大きく描くとか。
スピード感を出したいシーンは、手を弓なりに描くとか。
これらによって、人間味もでてきますし、躍動感を出すこともできます。
でも、CGだと最初に描いた絵がただ動くだけです。
すると、その動きはとても正確です。
しかし、それが逆に徒となり機械的で味気ない感じがします。
でも、それって、モーションキャプチャで解決できるのではと思うんですが・・・。
この作品では、使っていないのでしょうか・・・。
なんとなく机上論で動きを作っているような感じがしてなりません。
このあたりが、原作マンガを知っていると、一番、がっかりするポイントです。
原作マンガだと、もっと躍動感を感じられたのになぁって思うからです。
{/netabare}
■まとめ
挫折した天才の復活劇、天才に対する憧れや嫉妬。
私たち一視聴者としてはそう言うのを観たいですよね。
天才が挫折しながらも這い上がっていく姿は人を惹きつけますよね。
また、少年漫画らしく、変に暗くもならず、どろどろにもなりません。
常に前へ前へと物語が進もうとするところが良いですね。
ストーリーは、原作に忠実ですし、声もキャラにあっていて良いです。
原作マンガを読んだ後にアニメを観るとおさらいとして楽しめるかと思います。
でも、アニメからこの作品に入った場合、原作の魅力を引き出し切れていないので、
こんなもの?って思われてしまうとちょっと悲しいかなと思えました。
でも、オーケストラと言う人の手で描いたら到底やりきれないような複雑な作画を
3DCGを使って乗り越えるその試みは、なんやかんや言いつつも評価はできます。
今後に期待ですね。
ちなみに、この作品でも後半はだいぶ良くなってきたかなと感じます。
それは、救いでした。
と、言うわけで、ちょっと辛辣な感想になってしまってごめんなさい・・・。