ひろたん さんの感想・評価
3.8
物語 : 5.0
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
「望郷」と言う皮肉
「火の鳥」・・・。
そう言えば、小学生のころに図書館にあったマンガを少し読んだような・・・。
でも、あんまり記憶がありません。
「エデンの花」は、地球と宇宙の未来を描いた「望郷編」のアニメ化です。
シリーズとしての時間軸では、終盤のエピソードになります。
はたして、それまでのエピソードを知らない私が観て大丈夫なのかどうか・・・。
と、観るまでは心配していたのですが、結果的には、全然、大丈夫でした。
■「火の鳥」ってなに?
{netabare}
この作品を観ていると、「火の鳥」とは、「概念」のようなものだと感じました。
そして、位置づけとしては、人類の進化を見届けている「観測者」のようでした。
はたしてこの考えはあっているのか気になりましたので、原作を読んでみました。
そしたら冒頭からいきなりその答えを「火の鳥」自身が語っていました。
映画館で思ったことは、あながち間違いではなかったと言うことになります。
しかし、映画では、そのシーン自体はあるのですが、セリフはありませんでした。
それは、この映画の演出上、このセリフをなくした方がよかったからです。
それによって、ストーリーを追う面白味がでてくるからです。
それでも、この「火の鳥」の概念を理解できたのは、演出がとてもよいのでしょう。
気になった方は、映画を観た後、原作の冒頭だけでも読んでみてください。
{/netabare}
■「望郷」と言う皮肉
{netabare}
「望郷」とは、故郷を慕い、遠く思いをはせることです。
この物語の主人公にとっては、その故郷が2つあります。
その1つは、生まれ故郷である「地球」です。
もう1つは、地球から離れた先にたどり着いた第二の故郷「エデン」です。
主人公は、生まれ故郷の地球に帰りたいと思っていました。
そして、やっとの思いで念願が叶い地球にたどり着くことができました。
しかし、そこは人間が汚した結果、簡単には住むことはできなかったのです。
主人公は、悲観し、今度は、第二の故郷エデンに帰りたいと思います。
しかし、帰った先のエデンでも人間が原因で住めなくなっていたのです。
人間は、地球を自らの手で汚し住めなくしてしまった結果、脱出しました。
それでも、故郷に帰りたいと思うのは、皮肉そのものです。
この物語では、「地球」と「エデン」の2つの故郷が描かれます。
そして、その故郷に帰りたいと言うとても強い願望を描きます。
しかし、結果的には、そのどちらにおいても、望みは打ち砕かれます。
もちろん、その原因は、自分達人間なので、これは皮肉でしかありません。
この物語が面白いのは、その皮肉を、2つの故郷を使って描いたことです。
単純に皮肉を描きたいだけなら、地球だけでも十分です。
それを、わざわざもう一つの故郷「エデン」も使ったことです。
しかも、「楽園(エデン)」と言う名の理想郷ですら地球と同じだったと。
結局、人間ってそんなもんだと言うことを「往復ビンタ」で印象付けたのです。
さすがとしか言いようがありません。
{/netabare}
■まとめ
まず、驚かされたのは、これが約50年前に描かれた未来の姿かと言うことです。
この作品の原作が描かれたころには、既に有人宇宙飛行は行われていました。
そのため、ロケット自体は珍しい題材ではなかったでしょう。
しかし、この作品の面白いところは、そこではありません。
その宇宙開発の先にある人類の姿を描いてみせたところです。
それは、結果的に「皮肉」でしかなかったところです。
そして、「火の鳥」は、それを良いとも悪いとも言わずただただ見届けるだけでした。
実際にこの作品を観ると分かるのですが、それがとても強烈な印象を残すのです。
手塚治虫は、やはり、すごいんだなととても感心してしまいます。