鬼戦車 t89 さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
青春の素晴らしさと、部活は人材育成の面ではクソだと言うことを上手く表現した傑作!
最終話(13話)まで観ました。2024.07.07
1から観ていて早十年あまり…。作中登場人物達が過去を回想しますが、そんなこともあったなぁ…と懐かしく思いました。
ラストは原作から改変されており、賛否ある様ですが、私はこれで良かったと思います。ギスギスや思い通りにいかないにことも含めて頑張って完全燃焼するのが青春です。最後は感慨深くて泣きそうになりました。
この作品がさらに優れているのは、日本の部活が抱える闇をエンターテイメントを通して告発している点にあります。
主人公の久美子達は、高校生活をやりきって、青春を謳歌してモラトリアム期を卒業していきますが、裏を返せば燃え尽きています。
ここが文系、体育会系を問わず部活というシステムの問題点で、大会やコンクール優勝などの短期てき目標達成を前面に出し過ぎて、本当に能力のある人間を継続して育てられません。
本作品では才能のある先輩や麗奈はさらなる高みを目指して音大等に進学、留学しますが、部活は基本的に才能潰しの方に作用します。
滝先生も3年で人が入れ替わる部活を指導するのは難しい都言っていますが、まさにその通りで、学校間の競争が激化する中、部を軍隊化、部員を兵隊化しなければ大会やコンクールで勝てません。
個人の才能を伸ばすより、チームの勝利が優先され、監督、顧問が絶対的な力を持つ構造になるので、パワハラやセクハラ、体罰、私的制裁が横行しやすい体質になります。
また、監督は絶対的な権力を持つ割に部員のケアをせずに、部員の内部統制を内務班的な先輩後輩関係にぶん投げてしまいがちです。
作中でも、3年生が幹部会なる偉そうな会を作っていましたが、所詮は古参兵の集まりに過ぎず、意思決定権はありません。顧問の下請けです。兵隊は所詮兵隊で将校ではないのです。
北宇治吹奏楽部はたまたま実力主義を掲げて上手く行っていましたが、部長の久美子達の努力とキャラクター性のおかげに過ぎませんでした。
悪い方向へ行っていれば、容易に部が崩壊する危機は作中でも何回かあり、麗奈も悪くすれば先輩に潰されていました。
短期的な目標を追うために人間を兵隊化して鍛え上げるけど、実際は擬似軍隊組織なので統制のための法源や根拠はないため、内部統制を内務班にやらせる…。
熱心にやればやるほどブラック化し、長期的な育成方針も無いため、部で活躍、出世しても進学等でまたリセットされる…。やりがい詐取と燃え尽きさせるために部活動があるのか?と思わせる程のクソぶりです。
長時間練習の負担で教員が疲弊したり、部員がイジメやプレッシャーで追い詰められて自殺したりと、現実の吹奏楽部は本作品の何倍も地獄だそうです。
音楽は、個人でレッスンをしてコンクールに出場して実績を積んでいくという、部活以外の道があるので、才能のある人間には葛藤が多そうですね。
ラストの久美子の姿は感動的でしたが、この地獄の再生産なのか、希望なのか?視聴者によって解釈が異なりそうです。