「先輩はおとこのこ(TVアニメ動画)」

総合得点
64.0
感想・評価
40
棚に入れた
180
ランキング
4002
★★★★☆ 3.2 (40)
物語
3.2
作画
3.4
声優
3.3
音楽
3.1
キャラ
3.2

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ネタバレ

ネムりん さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:今観てる

「僕はただ好きなものを好きなままでいたい」

□第9話

▩作画3.5点→4.0点

父親が気付けなかった膝の傷を見つけて手を差し伸べてくれたまことと竜二の優しさが何よりも心嬉しくて、一人で見たプラネタリウムより3人で見る星空がずっと輝いて見えた(冒頭で触れていたオリオン座の「3つ星」が3人の関係を示している)。

暗闇(星空)の中に「特別」を見つけることができた咲。

コントラストな演出が良すぎて思わず感動してしまった(デフォルメ表現はいらなかった)・・・
同じく「家族」がテーマで約15年前の「CLANNAD AFTER STORY」以来(?)。

3人とも自責思考を持っていて共感が持てるから感情移入できるのでしょうね。面白い。

ちなみに合間に入る「るろうに剣心」のCM演出は同じアニプレックスだし狙ってやってると思う。
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□第4話

咲の祖母のセリフから咲は父親が海外に単身赴任していて、母親が不在のため家庭環境に問題のある子と分かりましたが、今回の内容は心理学用語で「見捨てられ不安」の話をしていました。
小さい時に親の愛情を受けずに育った子供や大人が抱く、愛着不形成から生じる過度な人間関係への執着心のことで、本来特別な存在である両親がいないため自分にとっての特別がない状況で、まこと先輩に向けられた咲の感情が「孤独感からくる共感相手」としての好きなのか、「異性として恋愛対象」から生じる好きなのか気持ちの整理がつかず、葛藤するシーンが描かれていました。

"くじら"、"お母さん"、"あれ?"、"特別"、伏線らしきキーワードが複数出てきましたが、咲の明るい性格が特別を求める空虚感からきていて、まことと竜二のやり取りから無意識に自分の意見を周りに同調させていたことが分かります。
心理学では同調行動(又は同調効果)と呼ばれ、集団にいることで安心を得ようとする心理状態の表れです。
規範または情報に対し効率的な選択ができる一方で、自分の意見や個性を持たないのが問題点です。

これに対し「特別」は何かを考えた時に、他人から与えられるものなのか、それとも自分自身が決めることなのかを選択することが必要です。
まことくんと母親の話に繋がりますが、「一人の人間が何か問題を抱えた時に、どのようにして向き合い解決していくか」を描いている作品なので、咲やまことが発言や行動に主体性を持つことが今後の焦点になります。

それからまことくんがパーティーの件で謝罪していた初めて表情が描かれた羽川さんですが、羽川さん視点から見た相手に対し心を開くシーンの演出でした(パーティーの時点では表面上でしかまことを見ていなかった)。

心を開くこと。
すなわち「ありのままの自分を表現する」ことが主体性を持つことになるので、この点に着目してみると5話以降、作品内容により理解が深まります。


・ワンピースドレスについて(3話補足)

まこと先輩が咲のワンピース(=ドレス、正しくはワンピースドレス)を着用できたのは男女兼用ユニセックスモデルのワンピースドレスだからでしょ。

原宿で買い物していたので、ラフォーレ原宿などユニセックスブランドを取り扱っているアパレルショップが周辺に複数店舗あるけど、近くの表参道や竹下通りでフェミニン男子がワンピースドレス着て普通に道を歩いてるじゃん。
しかも本編で大きめのサイズと説明してくれてるし、レーヨンやポリエステルなどの伸縮性素材でフリーサイズモデルであれば細身の男子高校生が着れないことはないでしょう。
ユニクロもユニセックスデザインを取り入れてる時代にファッションに対する知識が昭和かよw

普段はレビューが間違っていても既読スルーですが、テーマが特殊なのでくだらないレビューを見つけた時はツッコミを入れると警告したはずですが...
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□第3話

序盤のピーク回「王子様とお姫様」のタイトル話で締め、期待通りの展開でした。
EDの入りが良くて音楽の評価を上げました。意外に音楽は良かったりする・・・(音楽+0.5点)。

評価は前半パート80点、後半パート95点。

前半パートの出来が悪いという意味ではなく、30分枠で表現するには前半8割の完成度で問題ないという意味です。
全て表現しようとすると尺の都合上、1話に収まらないので取捨選択する必要があり、脚本としては後半重視の演出で満点に近い評価。
ちなみに後半パート5点減点したのは最後のダンスシーンの止め絵は原作準拠ですが、アニメーションなので少し動きを入れた方がより風情を感じると思ったから。
ほぼイメージ通りの作画で、デフォルメを重要な部分でカットし適切な表現ができていると思います。
1話と3話のジャンプのシーンが昼と夜、制服と正装、告白する側とされる側が対になっていて、始まりと終わりの絵になる演出が素晴らしかった(周りの反応はなぜか皆無ですが・・・)。

後半パートに出てきた咲の"先輩の「特別」"のセリフは、本作品にとって1話冒頭の告白シーンに繋がる重要なキーワードになり、物語を展開させる3話で強調表現されていました。
テーマに連続性があり構成がしっかりしているので4話以降も期待ができそうです。

原作16話で3話分使っているので残り9話で原作100話全てを描くのはほぼ無理なので、間違いなく原作カットが入ると思います。
3話まで見た限りだと脚本が優秀で、残りのピーク回(おそらく3回)を中心に的確な映像表現をしてくれると思います。

「好きなものを好きなままでいたい」気持ちを音声と映像を使って能動的に自己表現できるかです。

それから蒼井咲ちゃんが予想以上にスパイスになっていて求心力があります。
シリアスとコミカルの使い分けができていて、好感が持てるキャラクター。
この娘の存在は大きい・・・(キャラ+0.5点)
声優さんの好演に感謝です。


そして、
次回「後輩はおんなのこ」に続く。
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点数はアニメ初見と原作評価によるもの。

取り扱っているテーマが特殊で、私が書いておいた方が良さそうなのでレビューします。
LINEマンガに掲載されてる既刊8巻、全100話で構成される主人公の"男の娘"・花岡まことを中心に男女3人の人間模様と繊細な心理描写が描かれる「先輩はおとこのこ」、通称「ぱいのこ」。

閲覧数1億9400万Views(他比較だと2023年最も売れた漫画「ブルーロック」が1700万Views、最近アニメ化された「怪獣8号」が150万Viewsなので、10倍、100倍の世界です)、「第5回アニメ化してほしいマンガランキング」1位、「次にくるマンガ大賞2021」Webマンガ部門の3位で、私を含む読者からはかなり注目されている作品です。
「LINEマンガ 2021年間ランキング(女性編)」では3位になり、数字が示すように作品の作りが丁寧で女子受けしやすい内容。
今期「のこ」がつく作品が多数あるなかではダークホース的位置付け。

生物学的性と性自認の不一致に対し、強い違和感や嫌悪感を持つ「性同一性障害」ではなく、身体的性と性の認識は一致しないが心と身体の性別の一致を望まない「トランスジェンダー」が題材。
したがって、男女の性差をなくす考えの「ジェンダーレス」が作品内容の中心で、広義の意味で捉えれば社会的性差をなくす考えの「ジェンダーフリー」の概念も含まれます。
つまり"ネガティブな感情を持つ"のではなく、"ポジティブな考えに変えていく"お話です。

ジャンルは「男だけど可愛いものが大好き」な"男の娘"・花岡まことくん("まことちゃん"・楳図かずおではないです)とまことに恋をする後輩女子の咲ちゃん、まことに対し複雑な感情を抱いてしまう幼馴染の竜二の3人による涙あり、笑いあり、感動ありの青春ラブコメ。

設定は母親が望まない形で育ってしまったまことが、家庭では心配をかけないため男の子の姿で生活しますが、高校では理解のある父親の手引きで、女の子の姿で学生生活を送ります。

一見設定がおかしく見えますが、トランスジェンダーの学生を受け入れている学校が実際にあって、トランスジェンダー向けのジェンダーレス制服を採用するケースが増えてるそうです。
女子がスカートではなくスラックスを選択して、男子がスカートを選択することが可能で、女子がスラックスを着用するのは他アニメで見られるように前例がありますが、男子がスカートを着用するのはほとんど実例がないのが現状です。
そのため社会的認知度が低く、世間の風当たりは当然に強くなります。
まことくんも当初は周囲から冷淡な目で見られますが、咲と竜二に支えられてクラスメイトや部活動の部員から次第に理解されるようになります。
いわば男女の区別をなくすユニセックスデザインを広く認知させるための先駆的モデルとなるのが本作品の主人公です。
サステナブル(持続可能)な取り組みですが、周囲の心理的なハードルを下げ「偏見をなくす」ことが格差社会において重要な考え方になるので、私は原作を(高く)評価しています。

似ている作品として他人の心が読める超能力少女が周囲から虐げられ、同級生や研究会のメンバーの出会いを通じて徐々に感情を取り戻す話の「琴浦さん」がありますが、序盤だけ見ると優れている作品内容ですが、後半日常パート過多で個人的評価を落としました。
「ぱいのこ」も日常パートが多い作品で、不要なものを削除し本質部分を外さずに中身を描けるかで評価が変わってくると思います。
高い評価ができる素材は持っている作品なので、制作会社と脚本家の腕次第です。

性的マイノリティであるLGBTがグローバルスタンダードになりつつある昨今、至って真面目な内容になるので、見た目が気持ち悪いとか設定がキツイとかこれに類する小学生以下レベルのくだらないレビューを見つけた時は容赦なくツッコミを入れます。
もちろんレビュー更新や新規投稿してくれると思うので、どんなコメントが来るか楽しみですね。

投稿 : 2024/09/10
閲覧 : 289
サンキュー:

3

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