タック二階堂 さんの感想・評価
3.8
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
多様性の時代。
詳細は公式サイトでも。
LINEマンガにて連載されていた、ぽむさん原作コミックのアニメ化作品です。制作は、去年クール3本も請け負って、ひどい有り様になってしまったProject No.9です。
作画崩壊、万策尽きで、ガッタガタになったNo.9。評価は地に落ちたわけですが、本作が立て直しの試金石になるかどうかという印象です。ただ、今回はフジテレビ「ノイタミナ」枠。適当な仕事はできないので、期待していいかなってところです。まあ、動画工房も「おさまけ」でどん底まで落ちたけど、立て直しに成功しましたしね。
もともと女の子を可愛く描くことには定評があったNo.9なわけで、本作も初回は可愛いキャラデザで好印象でした。特によかったのは後輩の咲。こういう役どころは小原好美さんの独壇場かなって思っていましたが、関根明良さんもいいですね(「プリプリ」のプリンセス役)。いい感じでワチャワチャした元気な女の子って感じで。
話としては、まあ学園ラブコメなら、こんなもんでいいんじゃない?
ちょーっち気になったのは、デフォルメ表現が多くて、しつこくて長いとこ。これが作画の省力化じゃなければいいけれども…
まあ、気楽に観られそうな作品なので、追っかけてもいいかなって感じですね。
=====第2話視聴後、追記です。
{netabare}
ほほう、これは…
や、予想外に2話で面白くなりましたね。主要キャラの配置がバランスいいですね。性同一性障害(なのか判断保留)の主人公と、バイのヒロイン、そしてストレートだけど主人公にときめく親友キャラという。この微妙な三角関係でありつつ、3人で仲良くなるという図式が面白いです。
そして、やっぱり譲れないのはヒロインである咲の存在。
この子がいることによって、物語が大きく動くのは間違いないですね。まあ、女子のほうがLGBTQに対する寛容さが男子よりあると思っているので(マツコのファンは女子率高いという風潮)、主人公に対する接し方も不思議ではないのですが…。なんていうか、対応力の高さというか、そういうものを感じられるんですよね。
そして、主人公の家庭環境。これが、ややもすると「そこまで母親が不寛容なことある?」と思いがちなんですが、当事者にしてみればそういった心境になるのも無理はないのが現代社会。ただね、実は母親もそのへんに理解があるって話になる気はしているんですけどね。
作画も頑張っているんじゃないでしょうか。まだ2話ですが。ただ、原作準拠なのかもしれないけど、やっぱデフォルメカットが多すぎ問題。それ、別にデフォルメする必要ないでしょってシーンも散見されました。
うん。ちょっと今後も期待していいかなという2話でしたね。
{/netabare}
=====第3話視聴後、追記です。
{netabare}
毒親の母に、可愛いものが好きということがバレて激昂され、女装を辞めるって話です。
やー、なるほど。いいじゃないですか。面白かったですよ。
再三書きますが、やっぱりヒロインの咲がいいですねぇ。No.9の汚名返上って感じで可愛らしいキャラデザで、声も関根明良さんがピッタリ合ってます。
ラストのシーンもよかったです。だいぶデフォルメも減ってきたし、見やすくなったと思いますね。ちょっと評価を見直しました。
{/netabare}
=====第4話視聴後、追記です。
{netabare}
こういった学生の日常モノというと、やっぱり世界が狭いために一通りのエピソードを消化してしまうと、特にやることもなくなるというウィークポイントがあるわけですが…
本作に関しては、登場キャラの心の内を描いていく作風なので、飽きずに観られていますね。今回は、師匠のジレンマをじっくりと描いていました。
幼馴染で親友。でも、女装をしているまことに対して、友情以上の感情に芽生えることを自覚します。でも、相手は男。でも女装していて、身のこなしも可愛らしい女の子。これ、実際にそのシチュエーションになったら、こう悩むだろうなって思います。
本人の性的指向は、もちろん女性。でも、どんな女性よりも魅力的な女装男子。これははたしてホモセクシャルなのだろうか…
そういった葛藤を実に見事に描いていました。特に高校生ぐらいの時期って、ややもすると友情以上の何かに振れそうな感情ってのもあるもので。
そして、咲の家庭事情、そして抱える闇についても匂わせてきました。いつも明るく振る舞う咲に、実は重い家庭事情というものがのしかかっているようです。
やー、これはね、面白いですよ。まあ、それを後押ししているのは、No.9の良好なキャラデザによるところが大きい。久々に「マジで可愛いなあ」というキャラが咲。「この美術部には問題がある!」の宇佐美さん以来だなぁ、こういう感情は。似てるっちゃ似てますけどね。あっちの原作・いみぎむるさんは、今期は「マケイン」のキャラ原案という複雑な話ではあるのですが…
{/netabare}
=====第5話視聴後、追記です。
{netabare}
ちょっと予想外にシリアスな方向に進んできたなという印象。や、それならそれでいいんですけどね。
これもう、主人公は咲でいいんじゃないかと。え? もともとそうだよって? それは失礼しましたw
咲のキャラクターが作られた理由などが掘り下げられましたね。人間関係に波風を立てたくないから、DD(誰でも大好き)でいれば嫌われない。でも、そんな日和見な態度が周囲から孤立する要因になる。現実世界でもよくある話ですよね。
そんな誰でも大好き、でも誰も好きじゃないという性格を変えたくて、私の特別を見つけたい。そんな咲の前に現れたのがまこと。でも、それって本当に好きって感情なの? というジレンマ。
そんな咲の良き理解者なのが師匠。
そして、まことは2人の仲の良さから、付き合っているんじゃないかと邪推するという。
これどうなるの? という複雑さが面白いです。
あ、ひとつ書き忘れていたことがあったので追記します。
学校でのシーン。モブが目鼻のない作画で、最初「いや、手抜きするかね、作画の」という気持ちだったんですが、まことと絡みが出てくるキャラには目鼻がつくんですよね。これ、うまい演出だなって感じました。まことの心情を、キャラ作画で表現しているというね。
{/netabare}
=====第11話視聴後、追記です。
{netabare}
ラノベ作家は、高校生活でなにかイベントを描かないと死んじゃう病なのでしょうか。なんでまた、この終盤に来て修学旅行みたいなイベント回をやるかなぁ…
当たり前ですが、まこと&竜二が修学旅行に行き、1学年下の咲はお留守番。なので、何かしらのキャラを出さないと話が成立しない。んで、この終盤でいきなり「元友人」の早瀬が登場するという展開。何億年前のキャラだよっていう、メガネを外すと超絶美人でしたっていうね。
結局、まことがトラウマ的存在の母親と対峙するというのが大テーマになるわけで、そのためのつなぎという回。しかも、本線にはまったく関係のない早瀬とチャラ男の早乙女のラブストーリーを見せられるという…
そして、この回はまーたデフォルメ描写の嵐。むしろ普通の作画より、デフォルメ作画のほうが多かったんじゃねえかって感じ。いやこれがまた、見にくいのなんの。
しばらく、いい感じで話が進んで面白かったのに、ここにきて、こんなガッカリするような回を持ってくるから突き抜けられないのかなあと思います。
{/netabare}
=====最終話視聴後、感想です。
{netabare}
なるほど、まことの母親が毒親になったのには、自身の父親に対するトラウマがあったからですね。
こういう物語の背景をきちんと作り込んであるのは、非常に好印象です。そして、その母親とまことが完全には関係が氷解したわけではないものの、お互いに一歩ずつ歩み寄ったという締め方は、非常に納得感のあるものでした。
さらに咲の家庭事情にも、一定の解決を見たので、そこも満足でした。
全編を通じて、非常によく練られたストーリーだったと思います。そして、作画も終始安定していて、キャラデザも好ましいものでした。
ただ一点。
やはり最後まで慣れなかったのは、極端なデフォルメ表現の多用。
ある程度のデフォルメは、作品にアクセントを加える意味で歓迎なのですが、本作に関しては「これ、デフォルメにする必要ある?」というシーンがちょくちょくありました。
個人的には、やっぱり咲のキャラが好きでしたね。
天真爛漫なイメージですが、その裏には人に嫌われないように振る舞っているという闇もあったり、母親に対する感情なども綿密に描かれていたと思います。
このところ、ロクな仕事をしなかったProject No.9でしたが、久々に良作を送り出してきたと思います。これはダークホースでした。
{/netabare}