蒼い✨️ さんの感想・評価
4.8
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
青春のフレージング。
【概要】
アニメーション制作:京都アニメーション
2016年10月6日 - 12月29日に放映された、全13話のTVアニメ。
原作は、宝島社文庫から刊行されている武田綾乃による小説。
監督は、石原立也。
【あらすじ】
京都府大会では銅賞止まりの弱小校に零落していた北宇治高校吹奏楽部は、
今年度から赴任した音楽教師・滝昇を新顧問に迎えて、
全国大会出場を目標とした徹底した基礎練習とスパルタ指導で、
最初は反発していた部員たちも、やる気と実力が身についていき、
吹奏楽コンクールの府大会で金賞を獲得して、関西大会進出校のひとつに選ばれた。
有名な強豪校がひしめき合う関西大会を突破しての全国大会出場は容易ではなくて、
夏休みの間は部外の臨時講師に指導をしてもらうなど、さらに練習に熱が入る。
主人公・黄前久美子は教室外で昨年に退部した2年生・傘木希美に声をかけられる。
希美が部員たちの前に姿をあらわすとは先輩たちの反応で訳ありの様子。
副部長の田中あすかに吹部復帰の許可を願い出る希美ではあったが、
あすかの態度はつれないものであった。
【感想】
上手くなりたい吹奏楽部の再建記が1期でありましたが、
2期では深堀りされた様々な登場人物の感情が交差するドラマ色が濃い目。
それぞれに抱えているものがあり、心に蓋をして状況に流されるか精一杯抗うか、
その解決のプロセスにいたるトリガーは、理詰めの説得によるものではなくて、
人の心を動かすものは、偽りのない正直な本音の気持ちをぶつけ合うことで、
あとは当事者である自分で考えて最善と思う道を自分の意志と責任で選べ!
みたいな青春の物語。特に十代後半で悔しい思いをした人間には刺さる内容かも。
ここまで感情一色の話になってしまったのは、人の心は夢を語るだけでも理屈だけでも動かない。
現実での話し合いも正論で相手をやり込めたら納得や翻意で心から従って終わりでなく、
人によっては間違っていたり取るに足りないと思うことでもあっても、
その人が経験・環境から得る喜びも悔しさも葛藤も、その人だけのものであるから、
大人目線で頭ごなしの否定による説得に応じてしまうのは、
妥協を受け入れて自分の心を折ってしまうことでもあります。
悩み反目するキャラクターの姿が大人げないと思う人がいても、
彼女たちの多くは大人になる前の高校生、例外も青春の後悔を挽回したい人に過ぎないことを、
忘れてはいけないです。これは基本的には未成年の青さの物語なのですから。
久美子が後々言われる、『窓を開けるのが上手い』も、麗奈に言われている“性格の悪さ”で、
思ったことがすぐ口に出る“失言癖”で、嘘をつくのがあまり上手くない。
感情が顔に現れる、未熟ながらも正直な気質が結果的には好意的に受け取られているストーリー。
“失言癖”はともかくとしても、吉川優子が鎧塚みぞれの、黄前久美子が田中あすかの心の扉を、
心に響かない建前や小理屈ではなくて、真っ直ぐな体当たりでこじ開けたのは、
小笠原晴香の後の二代の部長である彼女たちのリーダーの資質と言うべきでしょうか?
なるべくしてなった根拠につながる話になっていますね。
アニメみたいにドラマティックじゃなくても、青春時代のジレンマは人によっては実在していて、
それをテーマに原作を書き上げた作者・武田綾乃さん恐るべしと言うべきでしょうか。
それを湿度たっぷりの京アニのアニメーションと声優の熱演で仕上げてくるのだから、
インパクトがある作品になりますね。
まあ、序盤の傘木希美と鎧塚みぞれの話はちょっと無理があったのは認めざるを得ないです。
登校拒否になってなければ、同じ学校にいる退部後の希美がみぞれと全く接触しないのはありえない。
仮にみぞれが避けていたとしても、仮に希美がみぞれに会う気が皆無であろうとも、
偶然でも廊下などで顔を合わせてしまうのが学校生活なのですから。
ていうか希美の性格とこの話に従うならば、久美子たちが入学する前のもっと早い時期に、
無自覚なままに希美がみぞれに話しかけて、二人の関係性の問題点が表面化したりしませんか?
第4話の「めざめるオーボエ」が名エピソードだとしても、そのへんが気になりますので、
総集編で、傘木希美と鎧塚みぞれの話をばっさりカットしたのは個人的には英断だと思いました。
北宇治高校吹奏楽部の昨年の一年生大量退部騒動の後始末の話としては重要ですけどね。
演奏シーンが多めの2期ですが、それがクオリティの高いアニメと音楽であっても、
ヒューマンドラマが主食のシーズンであったと言わずにはいられないですね。
これにて感想を終わります。読んで下さいまして、ありがとうございました。