「火垂るの墓(アニメ映画)」

総合得点
80.2
感想・評価
845
棚に入れた
5540
ランキング
468
★★★★☆ 3.8 (845)
物語
4.0
作画
3.8
声優
3.7
音楽
3.6
キャラ
3.7

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nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

清太の自己責任論と考えていましたが、やっぱり違うかも。

24年8月再レビューです。

 1か月ほど前にレビューしたときに結局清太の責任じゃん、というレビューを書きました。しかしながら、8月という戦争を反省する月に入って、また、世界が不穏な方向に行っている現状で、うーんともう1度考えてしまいました。

 本当に自己責任論でいいか、ですよね。きわめてリバタリアニズム的です。我ながら完全に資本主義に毒されているなあ、と思い直しました。

 まず遠い親戚のおばさんの態度が、清太の反抗的な態度からすると仕方がないと捉えましたが、年齢差や助け合わなければならない状況を考えた場合、おばさんと清太を対等にとらえるのが正しいのか?と思ってしまいました。人間としてのあるべき姿という理想・道徳がすっぽり抜けてしまった考えです。

 あるいは社会として清太がなぜそう育ってしまったか、なぜ、彼をそういう状況に追い込んでしまったか、結果として清太が放置されてしまったのか、という視点が抜けている気もします。

 この作品と現代を比較した場合、軍のエライさんの家に育っている清太の内面を考えた場合、ひょっとして今の子供たちと同じなのではないかと。今の中流家庭の子供は全員貴族の家庭に育っているようなものです。そして、大人たちの余裕の無さ、利己主義、他人の子供に無関心な現状を考えると、マインドは今と全く同じなのかもしれません。
 だから、清太の自己責任という短絡的な答えが出てきた気がしますが、それは完全に今のアメリカ中心の金を稼いだ奴が正義という精神と変わらないと思います。

 そういう反省を踏まえると、やっぱり清太はそういう時代・社会の犠牲としてとらえる見方もするべきだと思いました。もちろん清太の自己認識だと自分の責任は痛感していることでしょう。その贖罪は話のメインテーマとして捉えるべきだと思います。

 結果的にやっぱり戦争の話ではないと思いながらも、今の時代に戦争が起きて、あるいは環境異変で食料危機が起きた場合、何百万人の清太が生まれるのではないか、と思ってしまいます。いや、清太というより大人が全員おばさんになるのでは?と思います。コミュニティで子供を守るというマインドの喪失は当時よりも今の方が極端かもしれません。

 そういう視点で見た場合、社会がまともで大人のふるまいが当然で、全部の悲劇の原因は清太の我儘に見える本作ですが、清太を追い込んだ時代・社会を作った、あるいはその中で利己的なふるまいしかできない大人の責任というのも考えるべきだ、と思いました。それが戦争という極限状況なんだと考えれば、反戦…というより戦争が作り出す社会を清太・節子の死という1部を切り取ってリアルに表現しているのかな、と。

 本作は、長らくずっと清太の自己責任だと思っていましたが、一旦レビューしてみると視点が生まれます。早めに言語化しておけばよかったと思います。



以下 24年6月 初回レビュー

反戦や戦争のリアルではなく清太の過ちと贖罪と捉えました。

 この作品の評価の仕方がわからなくて、レビューがかけずにいました。戦争ものとして有名なんですけど、どうしても戦争云々の話に見えません。清太の意地というか子供らしからぬ部分と妹愛が、かえって2人を不幸にしたように見えます。

 そして大人になってみると叔母さんの気持ちもわからなくはないです。食糧難になってイライラしているのに、清太が生意気なのは頭にも来るでしょう。
 それと清太は結局、一人では生きられたけど節子を失った自責の念で餓死を選んだのでしょうか?妹の死で生きる気力を失ったのでしょうか。とすれば彼の死は何のためなのでしょうか?

 それ以上に節子の死はなんだったのでしょう?節子の描写があまりにも幼く、ともすれば死という概念を知らないがゆえに、客観的に言えば可哀そうではありますが、主観的に可哀そうに感じられません。言い方が難しいですね。子供の命を守れないもどかしさとか戦争が作った状況というのもわかるんですけど、結局清太がうまくいかない犠牲になった、意思を持たない「なにか」に見えてしまいます。

 もちろんですが小さな子供が飢えているのです。この悲惨な物語に心はざわめきます。戦争がない現代に生きていれば、ああいう死の上に我々は生きているということは感じます。

 そもそもこの作品は何を描きたかったんでしょう?もちろん、題名にもなった火垂るの光は、魂の事でしょう。2人だけでなく戦争の犠牲になった子供たちが天に上る話だとは思います。

 本当にありのままの感想をレビューすると、悪いのは戦争でも叔母でもなく清太だと。その贖罪のために妹と同じ死に方を選んだという無力な少年の物語ととるなら、そこに文学性はあるかもしれません。ただ、可哀そうというより、清太少年への嫌悪感の方が先立ってしまいます。

 ひょっとしたら私は人の心を失っているのかもしれませんが、そういう感想です。そしてさらに素直に言えば、高畑作品はあまり感動した記憶がありません。相性の問題かもしれません。

 評価は…まあ、作画はさすがですので5。ストーリーも私のとり方で言えば4ですが、本当に反戦だとしたら2ですね。
 キャラは好悪で言えば嫌いなキャラばかりですが、描けているので4とします。
 そうですね。評価は「反戦」ではなく「清太の過ち」というテーマの作品として評価するとオール4で作画が5という感じですね。

投稿 : 2024/08/06
閲覧 : 57
サンキュー:

7

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