ヘンゼル さんの感想・評価
2.7
物語 : 1.5
作画 : 4.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 2.0
状態:観終わった
積み重ねのないドラマと、設定の描写不足が酷い作品
YouTubeのショートに流れてきて初めて知りました。
作画も綺麗でかなり期待して見ていたんですが、見事に裏切られましたね。
シナリオの酷さ、設定の投げやり感など色々と問題点があります。
原作の方も一応確認してみたんですけど、多分アニメ会社は悪くないですね。
視聴者を楽しませようとする気概が良く表れていると思います。
特に戦闘シーンは圧巻の一言です。
そのため本作は、原作がつまらない事に足を引っ張られたアニメですね。
では問題点を述べていきましょう。
①設定の投げやり感
不良のヤンキーたちが街を守るというコンセプト自体は良いのですが、それに対する設定が全くと言っていいほど煮詰まっていません。
本作は現代を舞台にしているにも関わらず警察が出てこないんですよ。
私も「どういうこっちゃ?」となりまして、アニメで一切そのことについて触れませんでしたので、ネットで調べてみました。
そしたらなんと原作ではその事について、93話でアンサーしているんですよね。
あまりのも遅すぎませんか?
普通ならば、不良が街の治安維持をしているという異常事態に対して、警察は一体何をしているのかは当然の疑問であり、設定としてアンサーを用意していなければなりませんし、せめて序盤の10話以内にはそれに対して説明するべきでしょう。
アニメでそれに対してのアンサーが無かったのも、作者が「そんなものはどうでもいい」と当初から思っていたのでしょうかね?
また本作は高校を舞台にしているにも関わらず、学校の先生が出てきません。
そしてそれに対してのアンサーもやはりアニメの中ではされませんでした。
いや、しろと。視聴者に疑問符を持たせ続けるなよ、と。
普通の現代社会において先生がいないというのは、どう考えても異常事態ですよね?
そこら辺も考えてないのかな、この作者は。
「設定なんか気にすんな!、勢いで読め!」
でもこの作品はそういう仕掛けになっていないんですよ。
ギャグ作品でもないですし、奇想天外な世界観で描かれるわけでもない。
ある程度、常識的な世界観で成り立っていると大半の人は捉えるでしょう。
ですから、常識の範囲外な設定や状況に対してのアンサーが必要になってくるわけです。
そしてそういう「ズレ」に対して作者なりの解答・考えがあるのが面白いんじゃないですか。
フィクションに現実味を持たせるためには、そういった細かい設定に対しての辻褄合わせが必ず必要になってきます。
本作はそれをないがしろにしているワケですから、現代を舞台にしているのに、虚構・妄想・未熟なアイデアをそのまま出しました感というものをより強めてしまっています。
それが本作の1つ目の問題点です。
②シナリオの酷さ
本作の最大の問題点がコレですね。
私なりにどういった点が問題なのかを下記に述べるとこんな感じです。
・強者に対してのドラマを描けていない
・キャラが記号的に処理されていて中身が空っぽ
・積み重ねを描けていない
・強者に対してのドラマを描けていない
味方の強さもそうですが、敵の強さを描けていないんですよ。
獅子頭連の強さとかまさにそうですね。作中でやってたことと言えば、縄張りに侵入した中学生を追い回すということだけ。
獅子頭連の副頭取である十亀というキャラの過去回想にて、ジンクという不良チームを潰した事が語られていましたが、でもジンクってどの程度強いのかが語られない。
十亀も作中世界でやったことと言えば、気絶している仲間をいたぶるという「強さ」を語るには不十分すぎる行為だけです。
同じくそのチームのトップである兎耳山(とみやま)はもっと酷い。
せっかく「並外れて強い」という個性を描写できていないどころか、見せ場である戦闘シーンも、主人公達が属している「ボウフウリン」の頭取である梅宮が水を差したせいで、全然発揮できていません。
敵側の強さがちゃんと描写できていないから、それらを打ち倒すキャラの強さが分からない。
柊と佐狐の殴り合いもそうですが、「この世界における喧嘩の強さの指標」を出してくれよ、と思います。
フィクション感が強すぎる殴り合いは、どちらが強いのか視覚的に分かりにくいんですよ。
・キャラが記号的に処理されていて中身が空っぽ
この辺は好みかもしれませんが、ボウフウリンが守る街の住人の中身が無さ過ぎて、主人公たちに優しくしてくれるだけの操り人形と化していると感じました。
そもそも本作のコンセプトが、「未成年に大人が守られる」という情けない状況なんですよ。
しかしそれに対して何の葛藤もない、描かない、依存している描写だけを描くのは「街の住人の立場に立って考えたことがありません」と、作者自身が自白しているようなものですよ。
しかし、それに対して13話で出てきた土屋という女の子のキャラはまさに、私が街の住人に望む内面の心情だったんですよね。
この作者は別に描けないわけじゃないんだなと思うんです。
ただ、細部にまで目がいかない。
設定もそうですが、多分大雑把なんだろうなと思います。
というか編集は何をしているんでしょう。こういう所に気づいてあげるのが編集の仕事でしょう。
あとは、十亀の過去回想に違和感しかなかったですね。
なんで元々祭り屋の子が、不良グループの子と意気投合するようになるのでしょうか?
そもそもどうして喧嘩が強かったのでしょうか?
そういう肝心な所を描写していませんでしたので、十亀の作中世界以前の存在が「無い」ような印象を受けてしまいました。
・積み重ねが描けていない
この点は「強者に対してのドラマを描けていない」にも共通する事なんですが、本作は描写不足により、本来なら感動する場面を描けていない。
それが問題なんですよね。
ボウフウリンの四天王の一人である柊は特に顕著で、本作で倒した敵は第1話の明らかにやられ役の不良グループと、急に出てきた幼馴染だけです。
前者はしょうがないですが、急に出てきた幼馴染に関してはもう少し圧倒してほしかった。
仮にも四天王なのにも関わらずまあまあな手傷を負うのは、「大したことないじゃん」と思われても仕方がないなと思います。
同様に梅宮に関しても柊と同様で、結局は少ない戦闘で強さを判断するしかなくなっているんですよね。
柊さんは幼馴染に苦戦するならその一戦の前に、やられ役ではない「ある程度強さが保証されている敵」をねじ伏せるシーンが欲しかった。
梅宮に関しては雑魚でもいいので、圧倒的な力で敵を倒すシーンが欲しかった。
強者というものを描くための戦闘が本作には全然足りておらず、柊・梅宮という立場が上のキャラの強さの描き方も中途半端な出来になってしまっているな、と感じました。
悪い言い方をするなら、本作の強者たちはどいつもこいつも「腑抜け」ですね。
ただでさえ、暴力という「悪」を「正義」として描いているのも、暴力を肯定してもらおうという甘さが透けて見えるんですから。
どんな理由があろうと、暴力という悪に頼りきってしまうのは幼稚なんですよ。
蘇芳ってキャラは、そこら辺を考えるとチグハグなキャラ付けですね。
話を戻しますが、敵である獅子頭連のキャラたちの強さも描写不足だったのと、ある程度ヘイトを獅子頭連に抱かせる話数が足りていないようにも感じました。
いわゆる抑圧と解放ですね。
エピソードを重ねる事で、敵に打ち勝った時の喜びというものも大きくなるのですが、獅子頭連では先ほども述べた通り、中学生を追い回すのと、仲間内でのいたぶりだけでしたので、もう少しボウフウリンに危害を加えるシーンが、タイマン勝負の前に欲しかったかなと思います。
また13話の安西くんというキャラに対しても、好感度の積み重ねが圧倒的に足りていないので、正直他人事のような感覚です。
長々と本作を観て思った悪い部分を述べましたが、実際ビジュアル系アニメとしては悪くなかったかなと思います。
ですが主人公のキャラ付けとしての照れ癖は、漫画にすると流し読みできましたがアニメにすると冗長になるどころか一周回ってウザいですね。
シナリオが良ければ多少の設定のガバは見逃してもよかったのですがね。
獅子頭連の話が能力紹介止まりの話であったとなると、まるでセンスを感じなかったし、むしろ下手くそだなと思いました。
そのくせ過去回想で取ってつけたようなドラマ性を出そうとするもんだから、不愉快で仕方ない。
「取ってつけた」
そう思われる作品で良作だと思った作品は無いですね。
いずれにしても、作画が綺麗止まりの本作の2期はもう見ないですかね。
本当に、シナリオが良ければ絶対チェックしてました・・・。
残念です。
以上です。