蒼い✨️ さんの感想・評価
3.5
物語 : 2.5
作画 : 4.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
風と光の映像美。
【概要】
アニメーション制作:京都アニメーション
2022年8月19日に公開された102分間の劇場版アニメ。
原作は、KAエスマ文庫から刊行されている綾野ことこによる小説。
監督は、山村卓也。
【あらすじ】
高校生の鳴宮湊は、幼い頃に母のアルバムから興味を持った弓道の道に進み、
母の交通事故死などいろいろあっと後に、中学最後の弓道大会の試合中に、
早気(はやけ)にかかったことで、矢を的に当てることができなくなり、
足を引っ張って部の敗北を招き、弓道をやめてしまっていたが、
風舞高校に進学して、神職でもある射手の滝川雅貴との出会いがあり、
幼馴染で同じ弓道部出身の親友・竹早静弥らと男子5人女子3人で、
休眠状態だった高校の弓道部を森岡顧問のもとで再開させる。
早気(はやけ)を克服するために励む湊、
湊に強い感情を持つ静弥、
弓道の大先生だった亡き祖父に複雑な感情を持つ、コーチとなった雅貴など、
それぞれの思いが弓道を通じてドラマを作ってゆくのだった。
【感想】
導入部分となる幼少期の湊が実際に弓道を観て目を輝かせる過去のシーンが、
後にコーチになるマサさん(雅貴)との本当の出会い(港が覚えてない?)でもあったり、
会場に連れて行ってくれた生前の母の姿があったりと劇場用に増量してのリメイク。
序盤の入部などの数話が数分間程度でサクサク片付けてられてゆき、
後半の重要エピソードをじっくり見せる方向での再編集。
名場面を並べたダイジェスト集ではなくて、
つながりのある一本のストーリー映画として成立したのは好印象。
武道でありながら誰かと組み合うわけでなく的に当てる競技は自分との戦い。
毎日練習を繰り返して頭を使うまでもなく身体に染み付いた、
姿勢や射形や弓を引き絞る動作のひとつひとつが美しく、
黙々とした競技弓道を、迷いは射に現れるなど心理描写をしっかり描きながら、
動きと音と演出で魅せるアニメーションは匠の技と呼ぶに相応しく、
また、透明のはずの空気に薄く着色したり木の葉のイメージで風を表現したり、
被写界深度や手ブレや玉ボケや光の濃淡などを駆使した映像づくりは臨場感たっぷりで、
純粋なアニメーションで勝負して魅せるからこそ緊迫感が伝わってきます。
なろうファンタジーアニメが多い今の御時世では弓を使うアニメが数多くありますが、
京都アニメーションのスタッフが描く弓道の動きはまさに別格。
弓道の試合を映像で楽しむ分には素晴らしい作品であるとは思いました。
1期のストーリーが苦手で
TV版のレビューで否定的に書いた、静弥の親友の湊への執着も、
湊と母親が横断歩道を渡るときに静弥が声をかけて、
振り向いて相手してたタイミングで交通事故が起こって、
湊は大怪我をして母親が亡くなる。自責の念で数年間悩まされていて、
それは、感情がグチャグチャに病みますわな…。
過去は変えられないけど、静弥が湊とともに克服する心の傷を物語である!
みたく京アニ作品を観るには、特にユーフォがその代表例なのですが、
きちんと登場人物の思考と感情への国語力と共感力が要りますわな…と。
それを理解したうえで1期では、
腐女子向けにしては華のない弓道男子キャラへの入れ込めなさと、
キャラの秘めた感情の重たさでとにかく話が暗い。更には特に清涼剤となる部分もなくて、
作画など映像を構成している技術力に比例すること無く、
内容があまり面白くはないアニメとのイメージだったのですが、
劇場版で改めて観てみても、その認識が改まることはありませんでした。
好みの問題なのでしょうけどね。
ドロドロギスギスと言われているユーフォが京アニの代表作の一角になっていて、
度々、大きな反響を得ているのに対してツルネがそうでないのを見るに、
こちらは「青春の価値」を想起させるにはユーフォほどのキャラと物語に惹きつける力がなく、
かといってFree!の七瀬遙みたいなイケメンキャラのスター性もなく、
やはり京アニ作品である性質上、キャラに強い興味が持てないと、
いつものように作劇してるようで心に留めること無く流されてしまう。
せっかくの映像の技術力がもったいないと思いましたね。
それが、エンドロール後の2期のショート予告映像になると興味惹かれてしまうのは、
2期が1期と違って楽しめたのは風舞の問題がある程度解決して迷いが払拭されて、
競い合うライバルとのスポーツドラマが重視になったからかな?
主人公たちの代わりに新たなライバル校が鬱屈してましたけどね。
ウェット過ぎるキャラの内面に終止したのが1期ですが、それが2期では、
女子部員の魅せ回があったりして、群像劇の部活モノとして楽しめましたし。
そこは地味な青春ものから若干エンタメ寄りに脚色を変えてきたのかな?と思いました。
これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。