しんちゃん さんの感想・評価
3.3
物語 : 2.0
作画 : 3.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
「アニメ化」とは何か、考えさせられる
1期・映画のレビューを以前に書かせていただいたファンですが、3期は皆さんが書いてるように「がっかり」でした。
何でかというと、一言で言って「主役が変わった」からです。
キャラデザが変わったのは確かに最初はちょっと違和感ありましたが、見ているうちに慣れました。あfろ先生の原作画に近づけたデザインなので、しょうがないよな…と思いつつ、どちらが良かったかと言われたら、やっぱり前作のほうが良かったのかも。でも、低評価の理由はそこじゃないです。
私思うに、1期から映画までは、主役は「景色」だったんですよ。富士山のある景色、諏訪湖のある景色、伊豆や磐田といった海のある景色。その美しい日本の自然の景色の中で、5人のJKが思い思いのキャンプをし、その景色とシンクロした心情と、自然を通じて生まれたそれぞれ人間関係や成長が描かれる。それが「ゆるキャン△」のテーマだったのです。
でも、3期で制作陣が入れ替わり、そのコンセプトが失われてしまった。「原作漫画の魅力を丁寧に描く」という言い訳?で、ストーリーのテンポは野クルの4人とりん、あやのの6人のJKの旅が中心となり、日本の自然へのリスペクトとそれとの交流という要素が失われてしまった。
もちろん、表面的には背景美術は(写真をトレースしたんじゃないかと思うぐらい)きれいでしたよ。でも、大事なのはそこじゃなかったのです。この物語の主人公は6人のJKではなく「自然そのもの」だったのに、それを感じさせる演出がどこにもなかった。どこにでもある、ただの「6人のJKのキャンプ」アニメになってしまった。それが「がっかり」の理由でした。
アニメではありませんが、日テレのくだんの事案をきっかけに、最近「原作を勝手に改変するとはけしからん」的な風潮が強まっているように思います。しかし、モノクロの静止画で語る原作漫画と、フルカラーの映像に動きや音が加わるアニメやドラマというのは、根本的に異なる作品だろうと思うのです。
1期~映画の「ゆるキャン△」は、京極監督をはじめとする制作陣がある意味あfろ先生の原作を踏み越えて「景色」を真ん中にして見せる演出に挑戦したからこそ、あれだけのムーブメントが生まれました。それは明らかに「原作改変」であり、でもそれが原作にない魅力を備えたアニメの生まれたきっかけでもあったのです。
3期の登坂監督は、初監督で(しかもくだんのような事件があった直後で、原作改変への批判が高まっている最中に)これだけのヒットの続編を任されるという重圧があったことは想像に難くないのですが、アニメの「ゆるキャン△」が原作漫画同様、旅とキャンプの物語であると解釈してしまった時点で、残念ながら3期が凡作に成り下がることは決まってしまっていたのかなと思いました。
前作までの顔ぶれをそのまま引き継いだ音回り(劇伴、声優陣、OP/ED)は、そんな「解釈違い」の状況の中、よく頑張っていたと思います。少なくともOP/EDは今季のアニメでベスト3に入るクオリティだったと思いますし。ただ、作品の解釈や演出が変わってしまった以上、音回りだけでのリカバリーはさすがにできない。そのため、映像を消して音声だけ聴いても、前作までとはっきり異なる(率直に言って、聴くに堪えない)出来になってしまったのは、本当に残念だと思いました。